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漫画を読み終わり、ふと時計を見る。もう2時だ。俺は軽く伸びをして立ち上がる。持ってきた漫画を何冊か本棚に戻し、続きを自分の部屋?部屋と言っていいのかわからんがとにかくブースに3冊ほど置く。机の上のスマホと煙草とライターを掴み、喫煙所に向かう。
喫煙所には若い女の人がアイコスを吸ってた。とうもろこしみたいな気持ち悪い匂いに顔を顰めそうになる。俺はキャスターホワイトを1本出し、火をつける。
『どこにいるの?』
『逃げるの?』
・・・浮気してる立場でよく言えるよ。俺は苦笑しそうになりながらスマホをしまった。
「お兄さん、ライター貸して」
・・・iQOSなのにか?俺は女の人にライターを渡した。女の人は嬉しそうにiQOSの吸殻を捨て、アメスピに火を付けた。
「あはは、ライター忘れちゃって困ってたんだよね」
ああ、それで車内でも比較的吸いやすいiQOSって訳か。
「お兄さん、名前は?」
「田中だ」
「ふつーの名前だね」
「そういうアンタは?」
「さとーだよ」
「普通だな」
俺は灰を軽く落とす。
「なんでウィンストン?」
「元カノの影響さ。あと、普通に味が好き」
「女々しいねぇ」
「ほっとけ」
俺はめんどくさくなってスマホを出した。通知は増え続けてる。まぁ、鍵俺が持ってるし車も今使ってるからな。またスマホをしまう。
短くなった煙草を捨て、立ち上がろうとした。が、ライターを返して貰ってない。
「ライター返して」
「えぇーアメスピって長いんだよ。会話相手になってよ」
「・・・もう煙草がない」
俺は空箱を握り潰して見せた。
「あ、じゃああげるよ」
「メンソは吸わない」
「じゃ、お金あげるから買ってきなよ。奢ってあげるから会話相手になって」
ひょいと1000円渡された。えぇ。まぁ貰えるなら頂こう。受付で煙草を買おうとしたけど、キャスターホワイト売ってないのか。しょうがないから前吸ってたハイライトを買った。
「お釣りは?」
「いらなーい」
「じゃあ、ライター返して」
ハイライト、味好きだけどボックスがないから変えたんだよな。
「え、ハイライト」
「意外か?」
「そりゃ、あんな軽いの吸ってたらね」
「キャスターを馬鹿にするなよ」
「あはは」
火をつける。ハイライトのなんというか重いのに爽やかみたいな、不思議な味が好きだ。
「こんな夜中になんでこんなところいるの?」
「彼女に浮気されて」
「えぇー、田中君彼女いるの?」
「ああ。高校から付き合ってる」
「なのに浮気されたの?」
「ああ」
「あはは、浮気相手は多分、八代くんかな」
「・・・」
「そうだよね?横山君」
・・・なんで本名を知ってる?たまたまか?
「横山って誰だ?」
「君だよ?シラ切るの?」
「生憎、俺は田中角栄だ」
「もうちょっといい嘘があるでしょり横山希善くん」
・・・フルネームまで知ってるのか。
「てか、ほんとに私のこと気が付かないの?」
立ち上がり、俺のライターとハイライトを奪った。
「私だよ。井伊だよ」
・・・あ、もしかして、
「ゼミ一緒の?井伊琴音さん?」
「せいかーい」
ハイライトの煙を高らかに吹き上げた。
「んで、なんで満喫にいるんだ?ここが家とか言わないだろうな」
「半分正解だよ」
「は?」
「元彼から家追い出されちゃって」
「・・・」
「ここの満喫客が全然こないから寝床にしてるの。荷物は車の中に押し込んで、お風呂は銭湯で済ませてって感じ」
「危なくないのか?」
「逆にさ、満喫にひとりでいる女の子って危なそうじゃない?性病とか持ってそうだったり、地雷っぽかったり」
「確かに」
「まあ、常日頃から護身用に色々持ってはいるけど、寝るのは不安だね」
知らねーよ。俺はライターだけは返して貰い、自分のブースに戻る。




