第093話 ぷんぷん
車が進んでいくと、海沿いの道に出る。
「いやー、海ですねー。皆さんが仲間を思いやる心のように広いです」
「急にどうしたのよ」
さすがにアヤカがツッコんだ。
「暇なんで言ってみただけです。下ネタを言ってもアヤカさんって保健体育が赤点なんで反応が悪いんですよね」
「失礼ね……って言うところかしら?」
うーん……そのままでいてくれたらそれで良いよ。
「いや、リンダ姉さんが下ネタを言わなければいいと思うな」
「そんなサキュバスいます? 土の中に入らないモグラじゃないですか」
そんなレベルなの?
「若干、気まずくなる時があるから少しは控えてくれ。それで今日泊まる旅館はここでいいか?」
信号で停まっているのでリンダ姉さんにスマホを見せる。
「良いですよ。15時くらいに着くと連絡してください」
「そんなにかかるのか?」
「このまま主要な道を進むのは危ないので山道で迂回しますので」
なるほど。
「わかった」
頷き、旅館に電話して、予約を取る。
しばらく海岸線を進んでいたが、交差点を曲がると、田園風景に変わり始めた。
そして、次第に山道に変わる。
「日本って自然たっぷりで良いと思うんだけど、どこも同じような感じよね」
「まあ、山や木、川や海が多いからな」
これまでの旅でも平地が本当に少ないって印象だ。
「異世界とは全然、違うわよね」
「俺達、あっちが基準になってしまったんだよな」
「そうよねー。こっちの世界の食べ物や施設なんかに感動しちゃうもん。温泉なんかすごい」
異世界はちょっときついところがあったからな。
旅の途中で寄った農村なんか風呂もないところもあったし、衛生面で耐えられそうにないことも少なからずあった。
「あなた方も苦労してますね。神からジョブとスキルをもらって、異世界ハーレム無双じゃなかったんですか?」
「どんなに強い力をもらってもそれを使う人間がポンコツならポンコツのままって思い知らされたわね」
「無双とは程遠かったな。最初は怖くて逃げてばっかりだったし」
魔法を使っても当たらないし、どうしても魔物と相対すると身がすくむのだ。
そして、慣れた時には油断する。
ケガなんかしょっちゅうだったし、大けがもしたことがある。
しまいには……
「あなた方が大人しい方ですからね……ハーレムは?」
ホント、そういうのが好きだな。
「男4人の旅だ。良い話は皆無」
「なるほど。そっちですか」
どっちだよ。
「リンダさんは? 魔界のことはエルヴィスに聞いたけど、どうしてたの?」
「ほぼ寝てましたね。あ、普通の意味ですよ?」
「他にどんな意味があるのよ」
え?
「そのレベルですか……あのー、アヤカさんって漫画とか読まないんですか?」
「読んでたと思うけど……小学校、中学校とバスケに熱中してたからね。私、背が低いし、上手かったわけじゃないけど」
アヤカは155センチ前後だからな。
「青春だったわけですか。それはそれで貴重ですね」
髪が短かった時代のアヤカだな。
「そういえば、高校はやらなかったのか?」
ちょっと気になる。
「勉強ね。要は成績が悪かったわけ。このままだとちょっとマズいかもって思ったのよ。楽しいキャンパスライフを送りたかったしね。結果、楽しい異世界生活になっちゃったけど」
アヤカはちゃんと考えていたんだな。
俺、何も考えていなかった。
そろそろ考えないとなと思った時に楽しい異世界生活になったのだ。
「当時から真面目なところが出てますね。彼氏とかいなかったんですか?」
リンダ姉さん、良い質問。
「彼氏? いない、いない」
「モテたでしょー」
絶対そう。
「別にそんなことないわよ」
「でも、告白はされたでしょ? 卒業式とかに呼び出されたでしょ?」
「それはまあ……」
むむむ。
あ、でも、断ったか。
「へっへっへ。彼氏とかいらなかったんですか?」
「その時は……いや、私のことは別にいいでしょ。面白くないわよ。ユウ君は?」
「そうですね。ユウさんはどうだったんですか?」
俺かー……
「いや、まったく。特に部活もしてなかったし、面白そうな話題はないぞ」
「ふーん……彼女とかは?」
「全然。男友達と遊んでばっかりだった。それこそリクとかミナトだな」
高校からだけど。
でもまあ、中学も同じようなものだった。
「ユウ君、モテそうなのにねー」
女子のこの言葉は信用してはいけないとネットで見たことがある。
「アヤカさん、のど乾いてません? 飲みます?」
リンダ姉さんが酎ハイを取り出した。
「お酒じゃないの。飲まないわよ」
「そうですか? あなた方……特にアヤカさんは飲んだ方が良いと思いますけどね」
「なんでよ。というか、さすがにお酒はしまって。山道だけど、外から見たら飲酒運転よ」
酎ハイを片手に運転している人間がいたら絶対に警察は止めるな。
「はいはい。ユウさん、そろそろ道案内をお願いします。多分、車で行けると思いますけど、なるべく人が少ないであろう道を選びたいです」
「わかった。リンダ姉さんもその角を隠してくれ」
「触ってみます?」
性感帯だろ。
「そういうのいいから」
「はいはい」
リンダ姉さんが角を消したので地図アプリを開き、案内をする。
山道をひたすら進んでいっているのだが、すれ違う車もなく、自衛隊もいないようだった。
「岡山はすごかったのにね。ここは全然いないわ」
「今思うと、あれって吉井を探してたんじゃないか? あの夜に問題を起こして追われていたんじゃなくて、その前から何か起こしたんじゃないか? だからあれだけの自衛隊が巡回していたんだ」
「あー、それかも。熊本のことを考えると、明らかに多すぎだったもの」
熊本から別府に帰る時の倍以上はいた。
「自衛隊の場合は情報が回ってこないのが難点ですね。ですが、そう思っていいと思います。実に迷惑な男でしたね」
まったくだ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




