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18 世のため人のため

 ワタルが祖父と再開して4日後、帝国検査院の検査は無事に終了した。ジョージ理事官は、庶務係の会計処理は特段問題なしと報告してくれたのだ。


 そのかわり、ジョージ理事官は、第36区のトップで軍から派遣されている司政官について、公費の私的流用を多数指摘したらしい。

 近々、司政官は更迭されるのではないかとの噂だ。


 ワタルたちはバーコードンの居室で打ち上げをすることにした。



† † †



 3人は、シャンパンのような飲み物で乾杯した。


「それにしても、まさかジョージ理事官がワタルさんのおじいちゃんだなんて、奇跡以外の何ものでもないですよね」


「本当にそうだな。理事官がワタル君を連れてニャムニャム商会へ行くと言ったときは『終わった』と思ったよ。本当に奇跡だ」


 バーコードンとセミロンが笑いながら言った。


「本当に何から何まで奇跡です。この奇跡を糧に、裏金作りやレジスタンスのサポートを頑張りたいと思います」


「そうだな。私たちも微力ながら手伝わせてもらうよ」


「何でも言ってくださいね!」


「ありがとうございます!」


 ワタルは、ニャムニャとも相談の上、熟慮した結果、レジスタンスの話をバーコードンとセミロンに打ち明けていた。


 2人は驚いたが、ワタルがレジスタンスのサポートをすることを快く認めてくれただけでなく、レジスタンスの仕事を手伝ってくれることになったのだ。


 間諜その他の抵抗運動に直に携わることはないが、行政手続の口利きなど、可能な範囲で助けてもらう予定だ。


「まさかニャムニャがこの地域のレジスタンスのリーダーだったとはなあ。見かけによらないものだ」


「あら、私はニャムニャさんは大物だと思ってましたよ。目を見れば分かります」


「後出し感がすごいなあ」


 そう言ってバーコードンは大笑いした後、ワタルに話しかけた。


「ワタル君、秋分のお祝いの連休前後に休暇を取って、ゆっくり理事官に会ってきたらどうだい? その時期、うちの係は落ち着いてるしね」


「ありがとうございます! お言葉に甘えて顔を出して来たいと思います」


 ジョージ理事官の任期は残りわずかだ。ワタルは、時間の許す限り祖父の経験談等を色々と聞いておこうと考えている。


「私も久々に娘夫婦のところに顔を出してみようかな」


「え? バーコードンさんって結婚されてたんですか? てっきり独身かと」


 バーコードンの発言にセミロンが驚いた。バーコードンが笑いながら答える。


「何なら、孫もいるぞ。妻は内務総務官をしていて中央を離れられないから、単身赴任だ」


「え? めちゃめちゃ偉い人じゃないですか」


「同期同士の職場結婚だが、随分と差がついてしまったよ。そういえば、妻情報だと、近々軍務大臣が辞任するらしい。どうも皇帝陛下の不興を買ったらしいぞ。後任を誰にするかで急進派と戦線縮小派が水面下で激しく争ってるらしい」


 帝国中枢でも少しずつ動きがあるようだ。こちらでは詳しいことは分からないが、地方は地方で地道に頑張るしかない。


 ワタルは温めていた案を相談した。


「あの、こちらの世界ですと、金額のみで判断する入札と少額の随意契約の大きく2つの方法に分かれていますが、例えば、金額の他、ミャウ族のためになるような要件を加えて業者を選定するスキームを作るのはどうでしょうか」


「直接その要件を明示すると目をつけられてしまいますが、例えば地産地消の割合とか、慈善活動の有無等を要件にするという手があるのではないかと考えていまして」


 それを聞いたバーコードンが腕組みをしながら応じた。


「なるほど、それは面白いかもしれんな。間接的にミャウ族の援助を促進できるかもしれん。具体的な要件を決めるのは大変かもしれんが、検討の価値がありそうだな」


「ありがとうございます!」


 ワタルの任期はあと半年ほど。どこまで出来るか分からないが、やれるだけのことをやって、後任に託すつもりだ。


「さあ、もう一杯飲むとするか。ほら、ワタル君、乾杯の音頭をよろしく」


 バーコードンのご指名を受けて、ワタルが照れながら音頭を取った。


「それでは皆さん、明日も明後日も世のため人のため頑張りましょう!」


「おお!」


「はーい!」


 3人は、とびっきりの笑顔で乾杯した。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたなら幸甚です。


また自分で面白いと思えた物語ができましたら投稿させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。

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