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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
40/47

40・御飯は皆で食べるとおいしいよね

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

 僕の作戦勝ちかなのかな?はたしてどうなのかはわからないけれど、僕とルウスへ一緒にお風呂に入っていつものごとく僕がルウスの全身を洗ってあげた。だって僕が洗わないと、ルウスは簡単にお湯を浴びるだけだから身体を石鹸で洗ったりはしないからね。それでも今ではずいぶんとマシになった方なんだよ。


 だって出会った頃のルウスは濡れるのを嫌っていたし、砂浴びをするから身体は洗わなくても大丈夫って言っていたんだよ。確かに自然の中で生きているのだからそれが普通なのかも知れないけれど、僕たちと生活するのだから最低限の事は僕たちの基準に合わせてもらうようにするのが僕と生活するための条件の中の1つだった。


「ふうっ、さっぱりしたね」


「(…ああ、そうだな)」


 僕がお風呂場から出ようとすると、全身びしょ濡れのルウスは全身を震わせて毛に付いたお湯を回りに飛ばした。


「わっ…」


「(ふうっ、スッキリしたな)」


 お風呂場から出るからって一応身体に付いた水気をある程度除けたのに…振り出しに戻ってしまった…。別に怒ってはいないけどね…。


「…そうだね…」


「(?エルどうした?)」


「今のはわざとでしょ?」


 だからこの場合は少しくらい言い方がきつくなっても仕方ないよね?本当に怒ってはいないからね、本当に、本当のほんの少しムカってしただけだからね!


「(今の?何がだ?)」


「お湯を飛ばすの」


「(…いや、ついいつもの癖で…)」


「…」


 僕は眉間にシワを寄せて怒ってるんだぞって表情で、ルウスを睨み付けた。


「(…)」


 ルウスも負けじと鋭い目付きで僕を睨み返してくる。


「…ふふふっ」


「(…ぷぷぷっ)」


 僕が先だったのかそれともルウスが先だったのかは覚えていないけれど、どちらとももなく笑い始めていた。


「あはははははっ」


「(わはははははっ)」


「ルウスの目付き怖すぎるよ、そんな目で睨まれたら怖くて震えちゃう!」


「(エルの表情だっておも…怖かったぞ吹き出してしまうくらいに!)」


「…」


 僕は無言でシャワーを手に取るとレバーをひねって、水をルウスに向かって掛けた。


「(冷やっ、いきなり何しやがる!)」


「ごめん、手がすべった」


 もちろん普通手がすべったからって、シャワーから水は出ないよね。だってわざとやっているからね!


「(…)」


 するとルウスは無言で身体を震わせた。そうすると当然ルウスの全身を濡らす水は回りに飛び散って、それは当然僕を濡らすよね。


「冷たいっ」


「(…おお、すまん。わざとじゃないからな!)」


「…そうだね、お互いわざとじゃないもんね!」


「(…そうだな!)」


 そして僕はシャワーの水の勢いを強くするのでした。


「あっごめん」


「(…いいって事よ、誰にでも失敗はあるさ!)」


 そして僕たちの水の掛け合いは、次第に激しさを増していく。ウリケルさんの家もウリケルさんの魔法で強化されているから、僕たちが騒いだ程度では傷が付く事は無いので気にせずに家の中でも騒ぐ事ができるからすごいよね。


 疲れた身体をリフレッシュさせるためにお風呂に入ったはずなのに、さらに疲れてしまったので僕たちは今度こそ本当にお風呂から上がったんだ。


「(ん?…いい匂い?!)」


「ルウスどうしたの?」


 僕たちがお風呂から上がって僕が服を着ていると、ルウスが鼻をヒクヒクさせながら一言呟いた。


「(エル、肉を焼くいい匂いがするぞ!)」


「えっどう言うこと?」


「(オレにはわからんが、じいさんが帰ってきて晩飯の準備をしているとか?)」


 ルウスの嗅覚が間違うとは思えないから、誰かが本当にお肉を焼いているって考えた方が良いよね。ウリケルさんは森の中に出掛けて行ったばかりだから、ウリケルさん以外の人…いや、元人だった存在とかかな?


「さっき別れてからそんなに時間は経っていないよ?」


「(だからオレが知るか。この家で自由に料理ができるのはじいさんくらいだろ?)」


 だけれどやっぱり、ウリケルさんのような気がする。だって売り家の魔法でウリケルさんや僕たち以外は、この家には簡単に出入りできないはずだからね!


「そうだね、僕の知る限りだとウリケルさんしか知らないや」


 僕たちは顔を見合わせた。ウリケルさんなのか、それとも別の人?存在?なのか?僕の知る限りだと今生きている人でこの家に自由に出入りできて、家の物を使うことができるのは僕とルウスの二人だけだ。


 人では無い存在だと、ウリケルさんとその他にも数名いるのかもしれないけどね…。伝説の賢者のお友達とか知り合いとかね…。


 僕が服を着終わると、静かに脱衣所の扉を少しだけ開けて扉の外の様子をうかがってみる。脱衣所の扉を開けたことで肉を焼く音と匂いが、僕にもわかった。


「本当だね、誰かが料理している」


「(だから言っただろ!)」


「ルウスを信用してない訳じゃないよ、僕でもわかるようになったからの確認だよ!」


「(そうか?それならいいけど)」


 僕がルウスを信用してないなんて心外だよね、僕はルウスを一番の友達と思っているし大事な相棒だし、僕と契約してくれている従魔なのにね。


 僕とルウスが小声でそんなやり取りをしていたら、キッチンから声がかけられた。


「………(二人とも御飯が出来るまでもう少しかかるから、食器を出したりお手伝いをお願いするよ)」


 声を聞いた瞬間僕たち二人は顔を見合わせた。


「ウリケルさんだ!」


「(じいさんだ!)」


 だって二人でウリケルさんの事を話していて、その当の本人が予想通りそこにいるんだもん…びっくりするよね!


「師匠おかえりなさい」


「(じいさんケガとかないのか?)」


「………(ああ、ありがとう。怪我もないし特に何も問題はなかったよ)」


 キッチンにはいつものウリケルさんが、料理をしていた。どこから見ても魔法使いの格好のおじいさんが、エプロンをして晩御飯のおかずを作っている。初めて見たときには違和感しかなかったのだけれど、慣れってすごいよね…今ではもう違和感どころかごく当たり前の生活の中の一つになってしまっている。


「とても心配していました。」


「(デンセツノケンジャサマ?がそう簡単にくたばるわけないだろう)」


「………(そうだよエル、ほらこの通り足もちゃんと有るからお化けでは無いよ!)」


 ウリケルさんからそんな言葉が聞けるとは思わなかった。この世界にもお化けはいるけれど、足のないお化けはウリケルさんの前世の世界のお化けだったはずなんだけどね。


「…師匠…寒いです…」


 部屋の中の温度が一気に下がったような、気がしたけれど気のせいだよね?


「(ぷぷっ、じいさんそれは堂々と言うような事なのか?)」


「………(私としては捨て身のギャグのつもりだったのだけどね)」


「…心配して損しました」


 本当に心配していたのに、当のウリケルさんはいつもどおり飄々としているから本当に何もなかったんだろうね?僕にはウリケルさんの心を読むにはまだまだ修行が足りないので、ウリケルさんの言うことを素直に聞いていることしか出来ないんだ…。


「(エル、お前のシショウは空気が読めないみいだぞ!)」


「………(二人とも冗談を真に受けないで、さあ、御飯の準備をお願いするよ)」


「はい…師匠」


「(はいはい、わかったよじいさん)」


 森での異変がどうなったのか知りたかったけれど、ウリケルさんが問題無いって言っているのならそうなんだろうね?もう少し僕が大きくなって、ウリケルさんの弟子だって胸をはって言えるようになった時には、こう言う問題もウリケルさんの隣に立って対応できる弟子になりたいよね。


 この日の晩御飯はいつものように三人で食卓を囲んで、楽しい時間がすごせました。

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