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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
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39・師匠と弟子と親友

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

 ウリケルさんは家の玄関のドアを出現させると、森の奥を警戒している。


「………(早く入りなさい)」


「でも…」


「(じいさん)」


 何かただ事では無い事が起こっている事は辺りの様子からで感じる事が出来るのだけれど、では一体何が起きているかのかと言われると僕にはわからない。それでも僕にわかるのはここに居てはいけないと言う事だけだった。


「………(二人も知っている通り私は不死身だから大丈夫だよ)」


「…師匠」


「(いや死んで思念体になった奴が不死身な訳無いだろう?)」


 なのだけれど、ルウスは何が起こっているのかがわかっているのか、それともわかっているのに知らないふりをしているのか、それとも本当に知らないのかは僕には全くわからないのだけどウリケルさんの決定には不満みたいなんだ。


「………(いや今はそこに突っ込んでる場合じゃ無いのだけどね)」


「でも、今は不死身なのですよね?」


「(そうか、死んだから不死身なのか!それなら何があっても大丈夫なのか?)」


「………(そこは約束しよう、今の私は正真正銘の不死の存在だからね。何があっても死ぬ事はありえないよ。)」


 そうかそうだよね、いくらウリケルさんが不死身と言ってもそれは肉体を失ってしまったからこそ魂?だけの存在である幽霊?お化け?思念体?になったんだよね。でも、もしも魂の浄化とか消滅とかお祓いみたいなのをされるとどうなのかな?


「わかりました、師匠がそう言われるのでしたら弟子は素直に従います。」


「(おいっ、エルいいのかよ?)」


「………(何が起きているのかはわからないけれど君たちを危険に晒すのはね…師匠としてそして年長者として、それだけは出来ないししたくはないからね)」


 ウリケルさんでも何が起きているのかわかっていないって事なら、僕たちにできる事はウリケルさんの邪魔をしない事だよね。もしも僕たちがいたからって理由で万が一にもウリケルさんに何かあったら、それこそ弟子として不甲斐ないよね。


「…ルウス行こう」


「(エル…わかっよ)」


「………(さあ、早く行きなさい)」


「…師匠お気を付けて…」


「(じいさん…達者でな)」


「………(いつも帰る時間までには晩御飯を作りに帰るから、先にお風呂に入っていなさい)」


 僕たちに気を使ってなのかそれともウリケルさんからしたらそれほど脅威では無いのか僕にはわからないのだけれど、僕たちの目の前に立っているのはいつもの優しい笑顔を浮かべる白く長い髭を蓄えた魔法使いのお爺さんだった。


「ただいま…」


「(…ただいま)」


 僕たちが森からウリケルさんの家に帰ってくると、玄関のドアは外側から閉じられてしまった。それと同時に玄関の鍵も閉められて、ドアチェーンもロックされてしまった。ウリケルさんが帰って来るときにはどうやって玄関を開けるのかな?ってウリケルさんが鍵を掛けたのだから問題は無いのか…。


 いつもなら森から帰ってくると一緒に森から帰って来たはずのウリケルさんが何故か家の中にいて、森から返ってくるといつも返ってくる「お帰りなさい」のウリケルさんの言葉と笑顔が無かった。その代わりにそこにあったのは明かりの点けられていない薄暗い玄関だった。


「師匠…」


「(…エル、じいさんなら多分大丈夫だ。森で何が起こったのかオレにはわからんが、じいさんなら何とかしてのほほんって感じで帰って来ると思うぞ)」


「ウリケルさんのことを知りもしないで、そんな適当なこと言わないでよ!」


 ルウスの言葉が足りないなりにも僕を元気付けようとしてくれているのだけれど、その言葉が足りない所が何だか今の僕にはとてももどかしい。そのもどかしさで、僕の言い方もキツくなってしまう。ルウスに当たってしまうのは間違っているのに…。僕って本当にまだまだ子供なんだね…。


「(…すまん、でも、オレはよく知らないがお前はじいさんの事をよく知ってるのだろ?なら、弟子のお前がじいさんを信じないでどうするんだよ?)」


「…ごめんなさい、ルウス。そうだよね、僕は伝説の賢者ウリケルの弟子なんだ、僕がウリケルさんを信じないってことは弟子失格だよね」


 僕よりもルウスの方がウリケルさんの事を理解しているみたいだよね。僕は賢者ウリケルの弟子なのに、弟子が師匠を信用してないとかってありえないよね。でも、僕がウリケルさんの弟子になったって言ってもまだ2年経つか経たないくらいだし、いくらウリケルさんの知識を受け継いだって言っても、その全てを理解出来ている訳でもないし…。


 そんなルウスは小さな子をあやすように、僕を優しく抱きしめて落ち着かせるように背中をトントンとしてくれる。


「(だからオレたちはじいさんを信じて、風呂にでも入って待っていればいいんだよ)」


「そうだね、いつもみたいにお風呂に入ってご飯が出来るのを待っていればいいんだよね」


「(まあ、のんびり待っていようや)」


 ルウスの優しさに僕もルウスを優しく抱きしめ返した。ルウスは全身に毛が生えているけれど、その毛並みはフワフワでサラサラした手触りで僕たちと出会ってからは短時間でもお風呂に入っているから、石鹸のいい香りと少し汗の匂いがした。


「うん、そうだよねって事で…一緒にお風呂に入ろうね」


「(いや、オレはここでじいさんの帰りを待っているから、お前一人で入って来いよ)」


 ルウスは僕がお風呂に誘うから僕と一緒にお風呂に入るのであって、ルウスが自分から進んでお風呂に入ることはあまりない。例外があるとしたらものすごく汚れた時とか、沢山汗をかいた時とか、あとは自分の毛の手触りが良くなくなった時くらいなのかな?


「でもさっきルウスが俺たちは風呂にでも入って待っていればいいんだよって言っていたよね」


「(それは言葉のあやってやつで、一緒に風呂に入ろうって話じゃないからな)」


 僕にはお風呂に入るように言っていたのに自分は入らないってありえないよね?だから僕はルウスを抱いた手に少しずつ力を込めて、逃げられないようにしたんだ。僕とルウスは真っ正面から抱き合う形になっている。


「…じゃあ、ルウスは僕の事をだましたの?」


「(だますとかって人聞きの悪い、オレはじいさんの要望をエルに伝えただけだ、騙すつもりなんて全然ないからな)」


「ルウスは僕と一緒にお風呂に入ってくれないの…?」


 僕は悲しそうな表情を浮かべつつ、もう少し腕に力を込めた。僕の身体にはルウスの筋肉質で硬いながらもその中にある柔らかさを感じていた。


「(いや、そんな事はないぞ、よし、エル、風呂に入るぞ!)」


「うん、ルウスありがとう」


 僕ってずるいよね。僕の悲しそうな表情を見たらルウスが断れないのを知っているから、断れないようにわざと悲しそうな表情と声色を使っているのだから…。これもウリケルさんから引き継いだ知識の一端だったりして…。


 何だか僕って汚れた汚い大人になっちゃうのかな?自分の事ながら心配になってしまうよね…。

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