14 エルのお手伝い計画
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
「せっかくの自由時間なのに、ここに来て良かったのかい?」
僕がウリケルさんに色々と教えて貰っていた秘密の場所に来ると、ウリケルさんは心配そうに僕に聞いて来た。
「はい、師匠。外出禁止なのでどうせ時間を持て余すのなら、好きな事をしようかと思いまして」
そうなんだよね。外出禁止だから、館の外には出られない。でもここは、外なのに外では無い場所。そして、僕とウリケルさんにしか来られない秘密の場所。何か人に邪魔されたく無い時とかには、うってつけの場所なんだよね。
「エルが良いのならそれで良いけど…昼食の時間までは好きに過ごしなさい」
ウリケルさんも現実での僕以外には見る事が出来ない透き通ったウリケルさんと、情報を共有しているみたいなので今僕の置かれている状況を知っている。そして、僕にしか見る事の出来ないウリケルさんは、現実の僕の近くに居るみたい。何か不思議だよね。
「ありがとうございます師匠、だったら先ずはお風呂に入りたいです」
「お風呂?エルはもう知ってると思うけど、ここは現実では無いからどれだけ身体が汚れてしまっても何も問題は無いよ」
「はい、それは解っているのですけど一度お風呂を知ってしまうと…現実での身体を濡らした手拭いで拭くだけとか、師匠に教えて貰ったクリーンの魔法で身体の汚れを取るだけでは物足りなくて…」
そう、お風呂に入りたかったんだよね。僕が住んでいるヴァルロッティー村だけじゃ無く、僕の住んでいる世界の殆どの人達は濡らした手拭いで身体を拭くだけで、お風呂に入る習慣は無いんだ。
僕の住んでいる世界では水がとても貴重で、雨水に頼るしかないから雨が降らないと人の飲み水も無くなるし、畑の農作物にも水を撒けなくなってしまう。
だからお風呂に入る事が出来る人達は水が沢山有る所に住んでいる裕福な人達に限られているみたい。僕もここに来るまでは、お風呂の存在や名前も知らなかったからね。
「ああ、そう言う事か。私もこの世界に来た時には同じ事で悩んだのだった。満足の行くお風呂を作るまでに何年掛かった事か…」
「師匠も僕と同じ事で悩んだのですか?」
「…ゴホン、それは良いからお風呂に入って来なさい」
「はい、解りました」
僕はウリケルさんの家に向かった。約四十日間過ごした家だから勝手知ったる何とやらって感じなので、お風呂の場所や僕の着替えの場所は知っている。
「このボタンって言うので良かったよね!」
ウリケルさんの家のお風呂は操作盤のボタンって言うのを押すと、お風呂に丁度良い温度のお湯が浴槽の八分目くらいまで勝手に出てくる不思議なお風呂だった。その間に着替えやタオル(ふかふかの手拭い?)を準備する。どこに着替えやタオルが置いてあるかも、解っているから大丈夫。
「着替えはここで、タオルはここ!」
僕がお風呂の準備を終えた頃に不思議な音楽が聞こえて来たので、お風呂にお湯が溜まった事が解った。僕は服を脱いでから洗濯機って言う洗濯をしてくれる不思議な箱に、脱いだ服と下着を入れた。
熱過ぎずそして温る過ぎす僕の体温より少し熱めのお湯に肩まで浸かると、何だかとっても落ち着いて身体の力が抜けてしまう…。寝てしまうと溺れるよね?
「ハー、落ち着くー」
疲れもどこかに行ってしまいそうで、とても落ち着く。そして念願だった久しぶりのお風呂を堪能しました。
お風呂から上がると僕は身体をタオルで拭いて、僕の身体を拭き終わったタオルを洗濯機に入れた。そしてここでも洗濯機のボタンを押した。「ウィーン」とか何か不思議な音がした後に「ジヤーー」って音がし出して洗濯機が動き出した。
「これも異世界の技術みたいだけど、異世界って凄い所なんだね!」
洗濯って母様やミケルナさんがしているのを見た事が有るけど、とても大変そうだったのにこの洗濯機が有れば洗濯がとても楽になるよね?
僕は服を着ると台所に向かった。ここには食べ物や飲み物を冷やす事が出来る冷蔵庫って言う箱が有って、お風呂上がりや喉が渇いた時にはこの冷蔵庫の中から飲み物を出して飲んでいる。
「今日はどれにしようかな…これにしよう」
ジュースって言う果物の汁も美味しいけれど、僕は牛乳って言う牛と呼ばれる家畜の乳がお気に入りなんだ。その牛乳も白色と茶色とピンク色とかオレンジ色とか種類が沢山有るけど、今日は白色の牛乳の気分だね。
そう言えば父様と村の大人の人達が話をしていたのを聞いた事が有るけれど、もう少し村が裕福になったら家畜を飼おうって話をしていた覚えが有るけど、その家畜が牛なのかな?それだったら大歓迎なんだけど。だって毎日家でも牛乳が飲める様になるかも知れないからね。
食堂の椅子に座り牛乳をコップに注いで、一口飲む。母様に抱かれている時みたいな甘い香りと、少しトロリとした濃い味わい。そしてテーブルの上に置いて有った、クッキーって言う焼き菓子を一口囓る。
「うーん、幸せ」
そしてまた牛乳を一口飲んで口の中のクッキーを無くしてから、クッキーをもう一口囓る。美味しい過ぎて永遠に繰り返したい、そんな気分になってしまうって凄いよね。僕の家族にも食べさせてあげたい。でも今の僕には、それは無理なんだけどね。
僕は牛乳とクッキーを交互に、コップの牛乳が無くなるまで何度も堪能しました。
「御馳走様でした」
さて今日はお昼までしかここには居られないけれど、何をするかはもう決めていたので早速取り掛かる事にした。
それは魔法を使って父様や母様や村の人達のお手伝いが出来ないかなって思ったからなんだ。確かに突然僕みたいな子供が父様の開墾のお手伝いや、母様の畑仕事のお手伝いをしますって言っても相手にされないと思うけど、誰の邪魔をしなかったら出来ると思ったんだ。
僕は周りの子達とは少し違った変わった子供なので、お手伝いの時に少しくらいなら一人で別行動をしても怪しまれないだろうし、人に見られたく無いのなら夜に誰にも見付からない様にお手伝いをすれば良いだけの話だよね?
だから開墾作業の役に立ちそうな魔法や、畑仕事の役に立ちそうな魔法を調べるのとその魔法の練習のために今日はここに来たんだ。
「そうと決まれば先ずは、書斎でどんな魔法が有るのか調べないとね」
と言う事なので、ウリケルさん宅の書斎にやって来ました。書斎って言うよりは本が沢山有り過ぎてウリケルさんの知識の中に有る、図書室とか図書館って言った方が近いと思うけど書斎を使うのはウリケルさんと僕しか居ないから、呼び方はどうでも良いのかな?
「開墾と畑仕事に必要な魔法だから…土魔法なのかな?」
魔法関係の棚を見ながら、どんな魔法が必要なのかを頭に思い浮かべてみる。
「それか水魔法とか空気魔法って有ったっけ?」
実際に父様達が開墾作業をしている所を見た事が無いから、どんな魔法が必要になるのかなんて解りっこ無いけど、開墾作業の内容自体は何処でも似たような作業だから必要な魔法は調べられるのかな?
「あっそうか空気を操るから空気魔法じゃ無くて風魔法で良いんだ!」
そんなこんなで開墾作業と畑仕事に必要になるで有ろう魔法をいくつか調べてみた。
僕が調べた開墾作業の手順を思い返してみた。開墾作業は先ず足元の下草や蔓系の植物や背の低い木などを伐採して、地面に積もった腐葉土などを取り除く。それから大きな木を切り倒して行く。木を切り倒した後は切り倒した木を、家を建てたり家具を作ったりする材料として使うから木を乾燥させる必要が有る。
「風魔法で木を早く乾燥させる事も出来るのかな?それとも火魔法?乾燥って水分を無くす事だよね?それなら水魔法?」
木を切り倒した後に残った切り株と根は、根気良く掘り起こすしか無いのだけど…。
「土魔法の土壌操作で土を柔らかくして、木の根を掘り起こし易くしたり大きな岩も動かし易くするか、それとも地中深くに埋めてしまうとか…」
大きな岩も出てくるから土属性の魔法が有ったら、色々とお手伝いが出来るかも知れないよね。
ウリケルさんの≪理の実≫のお陰で知識が増えたり記憶力が良くなった筈なんだけど、集中力はどうなんだろう?五歳児の頭脳と身体だから、余り無理が出来ないのかな?色々調べていたら物凄く…眠く…なっ…て来…た…よ…。
…お休み…な…さ…い…。
続きが気になる方、応援をお願い致します。
評価や感想を、お聞かせ下さいませ。
誤字脱字の報告も合わせてお願い致します。




