13・外出禁止
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
今日は父様に外出禁止を言い渡されてしまったのだけど、どうしよう?僕の事を心配をしているからって言うのは、解っているつもりなんだけど…。
そう思ってウリケルさんを見てみたけど…。
「……」
「…そうですか…」
ウリケルさんからは好きにしたら良いと言われた…今日の予定なんて何も考えていなかったのだけど。だって、てっきり何時もみたいに、畑で母様達のお手伝いをするものだとばかり思っていたのだから…。
突然の休み、しかも外出禁止って言われても…うーんどうしようかな?
お昼までは自由時間になる筈だから、午前中は何をしてもお手伝いのミケルナさんの邪魔をしなかったら何をしても大丈夫な筈。お昼には皆が帰ってきてお昼御飯になるから、この時に家に居なかったら絶対に怒られる。
お昼御飯を食べて少し休憩をしてから、僕とリスター兄様とジゼル姉様は勉強の時間になる。この時の先生はお手伝いのミケルナさんが兼ねている。でも、ミケルナさんも午前中は色々と忙しそうだから、僕が居なくなっても解らないと思うのだけどそれって僕の勝手な思い込みなのかな?
そんな訳で僕の部屋で今日の予定を考えて居たのだけど…
「エル坊っちゃん、宜しいですか?」
僕が部屋で考え事をしていると、ミケルナさんに呼ばれた。お年寄りの中でも若い方の若手でまだまだ畑仕事も出来るみたいだけど、僕達兄弟の教育の為に父様にお願いされてヴァルロッティー家でお手伝いさんをしている。背筋がピンと伸びた少しふくよかで、茶色い髪の毛の半分くらいが白くなってきて顔に皺も目立ってきているけどまだまだ物凄く元気なお婆さん。
「はーい!」
「フィスカさんがエル坊っちゃんの診察に見えられました」
ミケルナさんに伴われてフィスカ婆さんがやって来た。
「おはようございます。エル坊っちゃん」
「おはようございます。フィスカさん」
この村のお年寄りの中でも上から数えた方が早い、最高齢者?の中の一人になるフィスカ婆さん。腰は曲がってしまっているけど杖とかは突いて無い。髪の毛は真っ白で眉毛も真っ白。顔は皺に覆われているけど大きな茶色い瞳で、少し尖った鼻。何時も茶色い服を着ているから、物語に出て来る魔女みたい。少し見た目は怖いけど良い人で、町の薬師兼治療師。この村の皆の頼れるお婆ちゃんだ。僕も、それこそ父様も兄様達と姉様も産まれた時からお世話になっているから、頭が上がらないらしい?
「エル坊っちゃんが目覚められたとグラード様からお聞きしましたので、様子見にお伺いしました」
「はい、お願いします」
父様は僕の事をとても心配していたから、フィスカ婆さんに僕の事をお願いしたみたい。それで無くてもフィスカ婆さんは高齢なのに色々と忙しいみたいだけど、大丈夫なのかな?
僕の心配も他所に、色々と調べられた。
その間ミケルナさんが一緒に居てくれたのだけど、一応保護者?と言う事なのかな?確かに僕に何か異常が有るのなら、父様に報告が必要になるよね。
その時に教えて貰ったけどフィスカ婆さんは僕が倒れた日から、毎日僕を診察に来ていたんだって…フィスカ婆さんにもとっても心配を掛けたみたい。
呼吸や体温に始まり、それこそ身体のあっちこっちをね。ウリケルさんの知識とは違う診察方法だったけど、民間療法って呼ばれる物になるのかな?異常は見付からなかったから別に良いんだけど。
その他にも体調とかも聞かれたけれど、特に問題は無いから素直に問題が無いとだけ答えた。本当の事なんて言い様が無いし、言ったら言ったで可笑しな子供って思われるだけだしね。…でもそれは今更なのかな?
「顔色も良いですし、問題は無いみたいですね。兎に角エル坊っちゃんが意識を取り戻して良かったです」
「…心配させてご免なさい」
素直にありがとうございますって良い難い…だからごめんなさいって謝った。でも、何かを聞きたそう?言いたそう?にフィスカ婆さんは僕をじっと見つめていたけれど、ニコって感じに表情を緩めるだけで何も聞かれなかった。何だったのかな?
「もし調子が悪くなったりしたら早めに、呼んで下さいな」
「はい、フィスカさん」
「エル坊っちゃん、では私は失礼しますね」
フィスカ婆さんは僕の診察を終えたので、帰り支度を始めた。
「フィスカさん、ありがとうございました。お茶でもいかがですか?」
帰り支度をしているフィスカ婆さんを、ミケルナさんがお茶に誘った。お茶を飲みながら僕の症状?状態?の確認も必要だろうし、そもそもこの村での古くからの知り合いなので、たまに会った時くらいはゆっくりとお話をする時間も必要だろうね。
「…では頂いて行きましょうかね」
それにこんな田舎では基本的に物々交換なので、診察料も物品で支払うのが普通だしね。でも、フィスカ婆さんの場合は殆ど無料のボランティアなんだけどね。
「エル坊っちゃんも、一緒にお茶になさいますか?」
まさか僕も誘われるとは思っていなかった。
「…僕は朝御飯を食べたばかりなのでお腹一杯だから要りません」
だけど僕は断った。本当にお腹一杯だったから…だつて約40日間も眠っていてご飯を食べていなかったので胃が小さくなったのかな?いつもと同じ御飯の量なのに食べ過ぎたみたいにお腹がパンパンになっていたからね。
フィスカ婆さんとミケルナさんはお茶にするので、僕とリスター兄様の部屋から食堂へと行ってしまった。
「さて、やっと一人になれたけど…そうだ、師匠修行しても良いですか?」
「……」
やっぱりウリケルさんは自分の時間なのだから、好きにしたら良いって感じだね。
「ありがとうございます、では取りあえず集中します」
僕は自分のベッドの上で≪座禅≫を組んだ。座禅って言うのはウリケルさんが前世で暮らしていた異世界で、集中する時や深く物事を考える時とか宗教の偉い人が悟りを開くためにしていた、身体と心落ち着かせ余計な考え事や身体の余分な力を抜きリラックスした状態になる方法の一つで、僕もウリケルさんの真似をしてする様になったんだ。
「……」
集中するために取る方法は様々で、≪座禅≫がたまたま僕には合っていたってだけで、逆立ちしようがケンケンしようがY字バランスしようがそれはその人に合った方法がそれこそ人の数だけ有るみたい。それに座禅をするのに慣れてしまった僕は、今では座禅をしたまま寝る事だって出来るんだよ。ウリケルさんには少し怒られるけどね…。
僕が座禅を組んで意識を集中させて行くと、僕の意識は少しずつ薄れて行き僕の身体は次第に仮死状態へとなって行った。
だけど僕の意識は僕の深層心理?の中に作られた、別の世界へとやって来ていた。ここがウリケルさんが造り出した世界で、僕とウリケルさんが約40日間過ごした場所だった。
見た感じ普通にどこにでも有る様な、長閑な田舎の景色。でもヴァルロッティー村よりは、拓けた場所なのは僕にも理解出来るよ。だって山や森が物凄く遠くに有るし、視界一杯に広がる田園風景に麦畑にその他の野菜畑に地平線。そして小さいけれどここに有る畑全てを賄う事が出来る、水量が豊富な川。それに数軒の建物。それはウリケルさんの家や鍛冶工房や調剤工房や木工工房等々。
現実の世界じゃ無いから村?や畑を囲う野獣や魔獣避けの柵や塀も無い。見渡す限りの田舎の原風景。田舎だけどヴァルロッティー村みたいに回りを完全に危険な森に包囲された孤立した村よりは、遥かに恵まれた環境だよね。
気が付くと僕はそこに立っていた。そして隣には向こう側が透けて見えない、そして少し宙にも浮いていない実物?現実?本物?のウリケルさんが立っていた。
「エル、お帰りなさい」
笑顔で実物のウリケルさんが僕を迎えてくれた。白い髭を長く伸ばして魔法使い然とした長い杖とローブ姿のお爺さんなのに、その話し方や仕草や立ち居振舞いは若者の様でとても高齢者とは思えない。顔には皺が刻まれているけれどもしかしたら髭は付け髭とかで、本当は思ったよりも若いのかな?
「師匠、只今戻りました今日もご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します」
でも僕はウリケルさんに師匠としてそして色々な知識や経験をさせてくれた先達として、尊敬と畏敬とでとても頭が上がらない。
「エル、そんなに畏まってしまったら私も少しやり難いよ」
そして大昔の伝説の偉人なのに話し方や仕草や立ち居振舞いが若者みたいだけじゃ無くて、気さくで偉ぶった所も無いとても穏やかな人だった。
「はい、済みません師匠。でも僕の憧れの人の前なのでどうしても緊張してしまいます」
「それを私の前で言われると、私の方こそ緊張してしまうよ」
「ハハハハハ……」
「アハハハハ……」
何故だかお互いが照れてしまって何となく同時に、照れ隠しをするみたいに笑い出してしまった。
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