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5-2


「うぅ……ん」

 尋史は息苦しさを感じて目を覚ました。

「ヒロっ!」

 洋輔の声が聞こえた。声がする方に首を動かしてみる。

「斎木センパイ、どうしたんですか?」

 洋輔は賢悟のとりまきだった並の美少年AとBに逆手をとられて床に押さえつけられていた。そして、自分の両手両足がヒモで縛られて自由がきかないことにも気付く。ここが岩槻邸の一室であることはわかるのだが。

「一体どうなってるんですか?」

「どうもこうもねぇよ。あいつ、お前を人質にして……ぐっ」

 並の美青年AとBが洋輔の腕に力を入れた。洋輔は一瞬苦痛に顔を歪めるが、すぐに気丈な表情を見せる。

「あんまり暴れると腕が折れてしまいますよ。三年前は貴久の騎士気取りでいい気になっていたようですが、僕はもう三年前の僕とは違うんですよ」

 賢悟が洋輔の顔を足蹴にして、嘲笑う。

「くそっ」

「彼らは僕の優秀なボディーガードでしてね、いわばプロです。いくらあなたが強いといってもしょせんはアマチュアレベルなんですよ。何なら試しにあなたの腕を折ってみましょうか?」

「やめろっ!」

 貴久の叫び声がした。

「そいつらには手を出さない約束だろうが」

「勇海センパイ!」

 やはり貴久も並の美青年CとDに逆手を取られて片膝をついていた。

「僕は約束破るのが大好きなんだよ。お父さんといっしょでね」

「やっぱりテメェの父親なのか? あの夜、父さんに急用があると言って呼び出しておいて……」

「僕は知らないよ、そんな大人の醜い争いごとなんか。それよりも、三年も会わないうちにずいぶんとやさしい顔立ちになっちゃったんだね。僕は淋しいよ」

 賢悟はニヤリと口の端を吊り上げたかと思うと、今度は床に倒れている尋史の方へ歩み寄ってきた。

「さ、最初から僕たちを騙すつもりだったんですか?」

「騙される方が悪いんですよ。でも、あなたのようなマヌケがいてくれたおかげで、こうもあっさりと計画がうまくいくとは思いませんでしたよ、片桐尋史くん」

「どうして僕の名前を?」

「あなたのことは調べさせていただきました。あなたのような凡人をなぜ貴久がそばに置いていたのかいささか理解に苦しみますけどね。けど、あなたにも利用価値はある」

 賢悟は尋史の顎を持ち上げると、首筋をまるでネコのようにペロペロと舐め始める。

「−−−っ?」

 何とも言えない感触に嫌悪感が走った。

「や、やだ」

「すぐに気持ち良くなりますよ」

 賢悟は尋史のシャツのボタンを外していく。

「やめろっ! やめろって言ってんだろうがっ!」

「いいですね、その瞳。僕が憎いですか? 殺してやりたいですか?」

 賢悟の舌は首筋から徐々に下へと下りていく。そして、尋史の胸を愛撫し始める。

 まるでミミズが全身を這うような感覚に尋史は耐えられなかった。そして、それを貴久に見られているということが。

「そいつに手を出すな! やるんなら俺にやればいいだろうっ!」

「もっと僕を蔑んだ瞳で見てください。もっと僕をゾグソクさせてくださいよ」

 賢悟の狂喜に満ちた笑い声が響いた。

 尋史は気が変になりそうだった。





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