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そして、決戦の日はやってきた。
賢悟の指定通りに、尋史たちあやとり同好会御一行は賢悟の自宅前へとやってきた。
『岩槻』と書かれた大理石製の表札が掲げられた大きな門構えの前で、尋史だけがあ然としていた。
二階建の白亜の洋館。庭にはお約束のようなバラが咲き乱れ、中央にはヴィーナスの彫刻が飾れらた噴水があった。まさに白馬の乗った王子さまがぽっくぽっくと走っていても不思議ではない光景だった。
金持ちだとは知っていたが、尋史の想像をはるかに越える金持ちぶりだった。
「いいのか、タカ?」
「あぁ。もう何とも思っちゃいねぇよ。それよりお前の方こそ」
「わかってる。ちゃんとセーブするさ」
あっけに取られる尋史の隣で、洋輔と貴久は深刻そうな顔をしていた。
呼び鈴を鳴らすと、
「ようこそ。お待ちしていました」
白いシルクのブラウスを着込んだ賢悟が出迎えにやってきた。なかなかのおぼっちゃまぶりな格好だった。麻美の付き添いを断って正解だったと思う尋史だった。
尋史たちは賢悟に促されて屋敷の中に入った。吹き抜けの天井には天使たちの画が描かれていた。まるで客人たちを歓迎してくれているように見えた。
「数年ぶりの我が家に帰ってきたお気持ちはどうですか?」
早速、賢悟が挑発的な言葉を発してきた。
ここが勇海センパイの家?
尋史は先日洋輔から聞いた話を思い出した。貴久は賢悟の父親によって家を追い出されたのだと。まさかその家に賢悟が暮らしていたとは思いもしなかった。
「父に感謝していただきたいものですね。父がこの家を買い取ってくれたおかげで他の人に買われずにすんでいるのですから。今この家には僕と数人の使用人が暮らしているだけですから、懐かしい思い出に浸ってくれてもかまいませんよ」
くくっと嘲笑する賢悟。
「俺は思い出に浸るために来たんじゃねぇんだ。お前とさっさと勝負がしてぇんだよ」
「おやおや、相変わらず気の短い人ですね。わかりました、どうぞこちらへ」
賢悟は二階へ上がっていく。
ふかふかの絨毯は凡人の尋史には歩きにくくてしょうがなかった。貴久たちより少し遅れて二階に辿り着く。三人はすでに奥の部屋へと向かっていた。
皆、足が早いです。
尋史は慌てて追いつこうと走った。
その時。
別の部屋の扉が開いた。気になった尋史はその扉を閉めようと手を延ばした瞬間。
背後から背中を押されて部屋の中に入ってしまう。と、同時に誰かに口を塞がれた。
「うっ」
助けを呼ぶこともできず、尋史は激しい睡魔に襲われてそのまま倒れこんだ。




