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プロローグ 少年は決意する

復帰作となればいいなー。第一話です。本当に最近、まともに書く時間も体力もなくて、息抜きがてらに&感を取り戻すために書いていきます。

プロットもキャラ設定も無い勢いだけの物ですが…。まあ、のんびり頑張ります。

 窓から差し込む西日を浴びながら、窓辺で手のひらサイズの小説を読み込む少年。

ゆったりとソファに預けた体はどこか尊大で偉そうな雰囲気を醸し出している。

一度もハサミを通したことのない黒髪は長く、一本の三つ編みにされて、くるくると首に巻かれている。

着ている服は白いシャツ一枚。

細身ではあるが、引き締まった体は陽の光を嫌い白さを保っている。


「ふむ…、異世界転生か…」


何を考えているのか全くわからない、見るものを引きずり込むような深淵をその瞳は湛え、零れおちた言葉は、聴く者の心に否応がなく染み込むような深いテノール。


その手に握られている一冊の小説は、最近巷で人気となった「異世界に飛ばされた俺は!」と題名が付けられた、異世界転生し力を手に入れ思う存分世界を生きる少年を主人公に据えた物語である。

少年の周りを見れば沢山の小説が散乱している。

しかし、そのどれもが似たりよったりのジャンルばかり。

異世界に召喚された勇者の話。ゲームをしていたらいつの間にか異世界にいた話。貴族の子として生まれ変わり国を作る話。はたまた色物の魔王に転生する話。

数十冊に及ぶ同ジャンルの小説を散乱させ、少年は思案顔にページをめくり続ける。


それが少年が今日一日行っていた。今日の活動であった。


「ふむ…」


すでに何冊目かわからない小説を読み終えたのか、傍らに置き、凝り固まった肩を解すように首をコキコキと鳴らす。


「ただいまー」


丁度、そのタイミングを見計らったように、同じ年頃の少女が玄関を開け彼が巣作り中の居間に侵入してきた。


「お帰り、妹」


「おう兄貴、生きてたか」


入ってきたのは少年と同じ顔の少女だった。

髪は肩ぐらいで切りそろえ、跳ねるような動きから快活そうな性格が伺える。化粧気の無い整った顔を嬉しそうに笑の形に変え、居間通り抜けキッチンに入ると冷蔵庫から牛乳を取り出し、一気飲みする豪快な美少女。

つまり見方を変えれば、ソファに座る少年も髪の長い深窓の美少女に見える。


「おお…、今日は随分と本読んだみたいだなー、すげーな。文字だけだろ?

私には、到底無理だぜ!」


漫画でも寝るしな!

と、嫌味のない笑顔の美少女に、少年は山となった小説を手早く片付け、キッチンに進み出ると、此方は戸棚から取り出したマグカップに、落としておいたコーヒーを注ぐ。


「妹。牛乳頂戴」


「おう」


そして、美少女の飲み残しの牛乳を注ぎ、漸くコーヒーへと口を付ける。

美少女の方はさっさと今へ行くと主のいなくなったソファへと腰を下ろし、テレビのリモコンへと手を伸ばした。


「なあ、妹」


「なんだ?」


テレビから流れる芸人と司会者の喧騒が居間に響く中で、二人の声はやけに響いた。


「俺な…、ようやく気がついたんだ、このままじゃいけないって」


「ああ、そうだな。十五年間引きこもりっぱなしだもんな」


「うん」


美少女の視線はテレビへと固定され、少年へと向くことはない。


「だからな…俺…、俺…」


何かを決意し、しかし、その決意の重さに打ち拉がれ、重圧を必死で押しのけようと力を振り絞る。

テレビに反射した少年の姿は、美少女にはそう映っていたかもしれない。


「大丈夫だよ兄貴…、わかってるから。ゆっくりと……、ゆっくり進んでいこう」


だからそう言ってようやく振り向いた美少女の笑顔は、とても慈愛に満ちたものだった。

少年もそのことを理解したのか、一筋の涙を零しながらため息のように肯定の言葉をこぼす。

そして、美少女の言葉に押されるように少年は決意を述べた。


「うん…、うん…。だからな、俺な!勇者を倒しに行くよ!」


ぴしりと少女の笑顔が固まった音がした。

誤字脱字ツッコミ等ありましたらどうぞ。


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