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プロローグ





「・・・へに集へ給ひ」



一人の男の声が響く。

その場所は『クレアーレ』と言う世界において三つある大陸、五つの列島、七つに分かれた海で構成された地球とは違う星の

一番大きな大陸にある未踏地と呼ばれる場所に建っている大きくも小さくも無い石造りの城壁に囲まれた街の門前。

城壁内部へと続く城門は固く閉ざされており、その城門から数百m前にたった四人の人間が仁王立ちしていた。

その四人の更に前方には五十万を超える程の鎧を纏い、槍や剣、弓や杖を持った所謂軍隊が雄叫びをあげていた。

軍隊とにらみ合いを続けている四人・・・その中から一人の大柄の男がゆっくりと前へと進み、何やらブツブツと呪文を唱える。

そして呪文を唱え終え大きく息を吸い静かに呟いた時、その摩訶不思議な呪文は完成した。



『八百万』



大柄の男がそう言葉を締めくくった瞬間、男の正面に一人の神々しさの中にこの世のものとは思えない程の美しさを携えた女が暖かな光と共に現れた。

その暖かな光が収まってくると同時に大柄な男の右側に冷たくも優しげな光と共に性別に関係なく思わず見惚れてしまいそうな美しい顔をした男が現れる。

同時に大柄な男の左側には思わず跪いてしまいそうな威圧感が空気を歪め、その歪みの中から筋骨隆々の美丈夫が満面の笑みを浮かべていた。

そして、その三名が何もない空間から現れ、その姿を完全にし、数瞬の時をおいて大柄の男の背面や側面、そして頭上に数多の現象と共に数え切れない程の人らしき者や

人の姿をしていない者、そもそも人では無い『何か』が次々とその姿を現していく。

大柄の男と共に城門前に居た三人もその様子に呆気にとられていたが気づいた時には隣に見知らぬ『何か』が居てその『何か』の中に紛れてしまう事になった。

そして幾許かの時が経ち、大柄の男と前面、左右に立つ三人を中心に周囲には数え切れない程の『何か』が大地を・・・そして空を覆い隠していた。


その異様な光景に摩訶不思議な呪文を使った大柄の男は頭を抱え、そして退治していた五十万の軍隊はその『何か』から発せられる言いしえぬ威圧感に動く事すらできなかった。

そんな中、大柄の男の前に何故か胸を張りふんぞり返っていた美しい女の様な『何か』が一歩前へと進み出る。

其れに付き従うかのように大柄の男の左右に居た二人の『何か』も一歩前へと進み出た。



「さて、妾等の可愛い子孫にちょっかいを掛けた大馬鹿者の手先に仕置きするかの~」


「・・・多少は自重してくださいよ?二人とも」


「よっしゃ!久々に暴れるぜぇ!!」



三者三様それぞれ目の前の五十万の軍勢を見ながら言葉を交わす。



「そうじゃそうじゃ。妾ちょっとやってみたい事があったの・・・ちょうどいい機会じゃ」


「・・・・・・まさか、アレをやるのですか?姉上」


「何でもいいからさっさとやろうぜ姉貴」


「・・・ッハ!?っちょっと待・・・」


三者の言葉にやっと現実に戻ってきた大柄の男がやっと言葉を発した瞬間その声を目の前の女の声がさえぎった。



「ヤッチマイナァ!!」


「「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「UUUUUUUUUUUURYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」」」」」」」」」」


「天照様、なんでオーレン石井調なんだよ・・・と言うかその雄叫びはネタか?ネタなのか?」



大柄の男が呟いたその言葉は八百万の神々の無駄に高いテンションの雄叫びにより、誰にも聞こえる事はなかったと言う・・・。











五十万の人間の軍勢を八百万の神々が大人げなく『自重せず』に叩き潰した時から丁度二年後・・・。










「「「「「いらっしゃいませ~」」」」」

「らっしゃっせー!!」


「旦那、とりあえず生1つ」

「あ、こっちにも生4つくれ!」


「あいよ、生1カウンター生4三番テーブルね!」


「ハイハーイ!」

「店長、から揚げ2人前入りました」

「お待たせしましたー、キンメーの煮つけお待たせしました~」

「お会計は6520エンになります」

「今片付けますから少々お待ちください~」



会話から解る通りここはとある居酒屋である。



「ア"ァァ!仕事帰りのビールはやっぱうめぇなぁ!!それに『ミケツカミン♪』の嬢ちゃん達も相変わらず可愛いし」

「だよな!旦那の料理も変わったのが多いがウメぇしな」

「酒はうめぇ、料理もうめぇ、店員はかわえぇし・・・ってあれ?今日はウズメちゃんいないのか?」

「そういや見てねぇな・・・だんなー、今日ウズメちゃんいないのか?」


「ん?あぁ、ウズメは裏で縛って転がしてるぞ」



旦那と呼ばれた大柄の男は当然のように答える。



「「「「なんだってええええええええええええええええええええ!?」」」」


「出て来ても邪魔・・・そしてオッサン等を無駄に興奮させるだけで営業妨害にしかならんからな」


「「「「そんな殺生な・・・・・・」」」」



四番テーブルで飲み食いしていた男達はあからさまな落胆を見せる。

おまけにその話にこっそり耳を傾けていた他の席の男達も明らかに落胆していた。

女性と一部の男達を除き、店内の空気が微妙におかしくなった時に店の奥の扉を大きな音を立てて開き、それが現れた。



「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃ(スパーン!!)ピギャ!?」



突如現れたそれは日本でいう古代の着物の様な服の前を両手ではだけ、豊満な乳房を惜しげも無く披露し・・・そうになっていたが店員二人に見事にお盆でガードされていた。

おまけに出てきた瞬間に衝撃がそれの頭を襲い、否応なしに黒く艶やかで長い髪靡かせている。

そしてそれの横にはいつの間にか純白のハリセンの様な何か(どう見てもハリセンだが)を、それはもう激しく振りぬいた・・・もう一度言うが『振りぬいた』態勢の大柄な男が佇んでいた。



「なにすんのよ!」


「何すんのじゃねぇ!!馬鹿かお前!!」


「なによ~別に何時ものあいさつじゃない」


「黙れ露出狂!!どこに挨拶する時に着物肌蹴て胸を見せる奴がいるんだよ!」


「え?ここに居るじゃない?」


「・・・・・・ダメダコイツ・・・ドウニカシナイト」



大柄の男はそう言って頭を抱え、突如現れたそれは店内の男達の囃子にのせて着物の前を肌蹴ながら踊りだす。

勿論店員二人によりお盆で上手くガードされていたが・・・。

こんなカオスな状況が週に五日夕方五時から深夜零時まで繰り広げられる。


居酒屋の名前は『稲荷』。


クレアーレと言う星のテララ大陸、その北半分を占める未踏地と呼ばれる地域に忽然と姿を現す城壁に囲まれた中規模な街・・・通称『魔王街』。

その魔王街の魔王城と呼ばれる石造りの質素な城の前に通る大通り、魔王城に向かって右手の角地。

そこにこの世界で唯一和風の名前がついた居酒屋『稲荷』が存在しているのである。








「だから・・・・・・チチを隠せえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」








週七日の内、五日はこの雄叫びが周囲に轟くのは言うまでもない・・・・・・。






注意:露出狂はヒロインの一人です。


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