エピローグ
俺は、なんという大馬鹿野郎だろう。
自分のクラスでいじめが起こっていたことにも気がつけなかった。
野々村が“あんな状態”になるまで追い詰められていたことにも。
岸田家はもともと俺の帰り道の途中にある。シャッターの閉まったガレージの中から女の絶叫が聞こえたのだ。大慌てで鍵を借りてガレージに飛び込んだときには、もう――。
医者によると、野々村は解離性同一障害だそうだ。
一般に多重人格障害として知られるが、彼女の症状は希少なものらしい。
人格交代している間は片方の人格は意識がなくなり、交代している間の記憶もないのが一般的だ。が、どうやら彼女には交代人格と会話をしたり姿が見えたりしていたらしい。症状としてはイマジナリーコンパニオン(想像上の友達)に近いのだとか。
野々村はいじめ自殺のニュースを見て、木下良に対しひどく親近感を持つようになった。そのために野々村の交代人格は彼女にとっての“木下良”になったのだ。
野々村が一日も早く回復することを願う。俺も彼女に謝らなければならないのだから。
最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。
8000字までという制限が思いのほかキツくて最後の方はソードマスターヤマト状態になってしまいましたが……!
解離性同一障害に関しては僕が聞きかじった知識による描写のため実際の病気とは大きく異なると思います。ご了承ください。