エピローグ
太陽が、心地いい。いつもの、当たり前の光景だけど、さ。二か月ぶりだと、なんか新鮮で、心地いいもんだよ。この公園には、穂村ちゃんとも思い出がいっぱいなんだしさ。
「ようやく、帰って来たんだよねぇ」
「やれやれ、クソ姉のせいで、えらい目にあったわよ。その上、ますますド変態になっちゃうしさぁ」
「その、クソ姉ってのやめてくれないかなぁ。それなら、まだ前の方がマシなんだけど」
「嫌よ。だって、超銀河バカ姉とか、長いし。だから、クソ姉で十分よ」
……酷い。向こうに行ってから妹が、なんか益々冷たくなった気がするよ。
「まぁ、いいじゃないですか。怜ちゃんのおかげで、千年後の地球に行けたんですし、私は楽しかったですよ。一緒に未来旅行も出来ましたし」
おかんむりの穂村ちゃんとは対照的に、橙子ちゃんは怒ってないみたいだし、私に気を使ってか、楽しかったなんて言ってくれる。帰れる保証も無い旅だってのに、そこまで言ってくれるなんて、私はホントいい親友を持ったもんだよ。
「ゴメンね、退院するまで待ってもらってさぁ。おかげで、助かったよ」
橙子ちゃんは、入院中も嫌な顔一つせずお世話してくれた。恥ずかしながら、目が覚めてもしばらく一歩も動けなかったから、着替えすら橙子ちゃんがいなければどうにもなんなかったんだよね。その上、私が退屈しないようにって、四六時中つきっきりでいてくれた。
「いいのよ、気にしなくて。私は、怜ちゃんと一緒だったら、どんな所だって幸せなんだから」
橙子ちゃん……そこまで気を使ってくれるなんて。貴方って人は、ホントにいい親友だよ。
「……クソ姉は、もう少し人の視線を気にした方がいいと思う」
橙子ちゃんと話してたら、穂村ちゃんがポツリとそんな事を呟いた。
まぁ、確かにヒーローやってて、人の視線とかあんま気にしてらん無いけどさ。何でまた、橙子ちゃんとのお話で、その話が出てくるんだろう。
ま、いっか。それよりも、今すぐにやらなきゃいけない事が山積みなんだよね。
「じゃ、学校が終わったらこの写真を、複製したりポスターや抱き枕にしますか。ふへへ、実にいいアングルで、撮ってくれたもんだよぉ」
ポケットから、シグナムに貰ったティスちゃんとシェリーちゃんの、ウルトラスーパーロリコスチュームを取り出す。あの後気絶しちゃったせいで直に見れなかったんだけど、シグナムがしっかりと写真に撮っておいてくれたんだよね。その他にも、彼女のロリコレクションをいくつか貰ったのだ。
その中には、聞いてビックリ仰天のブツもあった。コレ、見た目は金髪幼女の泣き顔で、ナイスな写真なんだけどさぁ……。
「いやぁ、しっかし驚いたねぇ。まさか、グノーディア将軍が元男の娘なんだからさぁ」
「そのせいで、えらい騒ぎになりましたけどね……」
そう、この写真に写る泣き顔幼女? の正体は、グノーディア将軍なのだ。写真を届けに来たシグナム曰く「幼女だと思って襲ったら、ついててビックリした」との事。
その後、二人で今の恰好は似合わないと笑ってたら、M3君達とお見舞いに来たグノーディア将軍と鉢合わせてさぁ大変。病室だってのを忘れてブチ切れたグノーディア将軍とシグナムの剣戟が始まっちゃたんだよ。
そんで、結局ナース幼女に叱られちゃったんだよね。
「考えても見たら、あの人には迷惑かけっぱなしだったなぁ。いやぁ、申し訳ないよ」
「そうだよ。怜ちゃんのお見舞いさん、皆騒いでばかり。いくら怜ちゃんが賑やかなのが好きな性分でも、限度ってのかあると思うな、私」
温厚な橙子ちゃんでも文句を言いたくなる位に、私の入院生活は賑やかなモノだった。
ティスちゃんやシェリーちゃんが来た時も、パパさんのお仕置きが気になってたので聞いてみたら、突然震えだして、抱き合って泣き叫んでしまった。結局、またまたナースさんに怒られちゃったんだよね。
翌日はL2ちゃんとD3ちゃんが来たんだけど、L2ちゃん「坊ちゃんを更生するためとはいえ、迷惑をかけた」そう言って、最初は私を呼んだ事に対する詫びだったんだけど、さ。
パパの話になったとたんL2ちゃんが「貴方が甘やかし過ぎたせいでこうなった」と文句を言って、それに怒ったD3ちゃんが「主人を何百年もほったらかしにしてた貴方に言われたくない。ってか、あんな酷い環境にいる人を甘やかせないなんて、それでもメイドロボか」と反論。どうやら、アレ以降ずっとこんな調子らしい。
その後、教育方針の違いから取っ組み合いの喧嘩に発展して、もう呆れ顔のナースさんに叩きだされた。……ホント、騒がしい入院生活だなぁ、ははは。
「ま、別れ際にキスもしてくれたし、また何かあったら呼んでくれるみたいだしさ。また会おうって約束もしたし、楽しみだなぁ。その為にも、ロリコンとして腕を磨かなくちゃ」
退院後、あんまここに居たら肉体年齢が私達の時代にそぐわなくなるから、すぐに帰る事になったんだけど、別れ際にティスちゃんとシェリーちゃんが再開の約束をしてくれた。
その上、地球を救ってくれたお礼だと言って、ほっぺにダブルキスまでしてくれたんだよね。いやぁ、思い出しただけでニヤニヤしちゃうよ、グヘへへ。
「あああ、クソ姉が変態に……いや、元からだったか」
「怜ちゃん。たとえ何年かかっても、私が貴方を更生してあげるからね」
……なんだか、酷いな二人とも。私は、そんなに変態かね! ちょっと、幼女が好きなだけじゃないか!
「そうそう、アレを処理しとかなきゃね。誰かに見つかったら、大変だしさ」
「……アレ?」
穂村ちゃんが、不思議そうに聞いてくる。ま、そうだよね。二か月もすれば、忘れちゃうか
な。
「言ったでしょ。私には、幼女教のバックアップが付いてるってね」
中部地方のどこか。場所は秘匿され、一般人には決して知られる事の無い、そんな場所。
何故なら、ここは大戦時に本土決戦を想定して、山一つくり抜いて作った仮の大本営。そんなの、国民に教える訳にはいかないよね。結局、思ったより早い終戦でとんでもない無駄遣いになっちゃたんだしさ。
そんな、もう誰も必要としていないし、覚えてすらない日本の秘密基地には、とある教団の本部がある。私、星井怜奈はそこの総大主教として、信徒達を相手に、叫ぶ。
「幼女達は、救われなければならない! サンダードラゴンの名において、彼女達に害する組織の殲滅をここに宣言する! 幼女と共にあれ!」
「「「幼女と共にあれ!」」」
信徒たちの合唱が、コンクリート製の講堂に響き渡る。皆、黒いローブの下に正義の心を宿して、目をギラつかせている。
よし、この士気の高さなら、甘い言葉で幼女を騙して利用する、にっくき違法ビデオ製作所を叩き潰せるだろう。
「サンダー・ドラゴン。敵地には既に工作員を潜りこませております。今夜11時から撮影との事。突入は、少数精鋭で踏み込むのが得策かと」
副主教にして、私と同じく幼女教創設メンバーのブラック・フォックスが、作戦概要の書かれたタブレットを手に、耳元で囁く。もちろん本名では無い。ここのメンバーは、皆コードネームで呼び合う決まりなのだ。だって、ばれたら社会的に大問題になりかねない地位の信者もいっぱいいるし。
「うむ。先陣は私がきろう。四人ほど、武闘派を持ってきてくれ」
「御意。信者の内、自衛隊特殊部隊、SATの者を用意いたします」
「ありがとう。フォックスには、世話になりっぱなしだな。これでは、どちらが主教か分かったもんじゃないな」
「いえいえ。こんなおじさんより、若い貴方が主教の方がよろしいでしょう」
この、色黒で大柄の副主教は、私の副官として幼女教を取り仕切っている。正直言って、どっちがトップか分かんないくらいだ。私は、変態を殴り倒すぐらいしか出来ないけど、彼には社会的地位と、統率力がある。実質、彼の手腕が無ければ、どうにもならない事バッカだよ。
ヒーローやってる内に知り合ったんだけど、何で私が主教なのか聞いてみたら、カリスマ性だとか言われた。私に、そんなモノあるのか分かんないんだけど、まぁいいや。上手く、教団も回ってるんだしさ。
ちなみに噂じゃ、フォックスはどっかの大企業の、それも国一つ動かすレベルの超大物だとか。
ま、それでも聞くのは野暮だ。ここにいるのは、幼女を守りたいという崇高な理念の元集まった、最っ高の馬鹿達だよ。それ以上でも、それ以下でも無い。
「皆、相手はこれまでの変態とはケタが違う。ホンモノの、犯罪者だ。入手した顧客リストの中には、国会議員の名もあったからな。裏組織との繋がりも濃ゆそうだ。……強制はしない。逃げたかったら、今すぐ退会して構わない。逃げるのも、勇気だぞ」
総大主教として、心にもない事(ま、半分は本音だけど)を言う。
「何を馬鹿な事を! 我々は、貴方と幼女に救われた身。私も、くだらぬ商売で腐っていく身でしたが、人生においてなすべき事を教えられました! この身命、幼女に捧げると、誓ったのです!」
「引きこもってた俺に、コネと生きがいをくれたのはアンタだ! おかげで、職にもつけて、母ちゃんとも仲直り出来た! 今更、逃げてられっかよ!」
「……ありがとう。ツイン・ドラグーン。フィルム・スクーパーズ」
頼れる仲間達には、逃げるものなど一人もいない。彼らと共になら、どんな困難だって、巨悪だって立ち向かえるだろう。
「ま、信者の中には警察上層部とか、他の国会議員とかもいるし、いざとなったらどうにでもなるんだけどね……」
「総大主教?」
「ああ、ゴメンゴメン。なんでもないよ」
いかんいかん。うっかり信者のプライベートな事を喋っちゃうとこだった。ここは匿名なのが鉄則。主教として、破る訳にはいかないもんね。
「皆の衆! 我らには、女神がついている。行くぞ、幼女と共にあらんことを!」
「「「幼女と共にあらんことを!」」」
バックには、ウルトラスーパーロリコスチュームを着たティスちゃんとシェリーのポスターが、でかでかと張ってある。この二人の女神たちの威光で、皆の士気も一向に高まった。
「正義のヒーロー、サンダードラゴン! 世の幼女を救うため、いざ出動!」
私は、今日も駆ける。基本一人で、時には仲間と共に、幼女を救うため。
それが、ロリコンとしての、使命だよね。そうでしょ、パパ。
「愛奈、済まない。いや、ホント。申し訳ありません。す、すみませんでしたぁ!」
……なんか、変な幻聴が聞こえたんだけど。
よかったね、パパ! 叱って貰えたんでしょ。羨ましいなぁ、このヤロウ♪
幼女趣味英雄怜奈。これにて完結となります。ご愛読いただき、ありがとうございました。
……また書く機会があるのなら、主人公をもう少しまともにして、ちゃんとした異世界にでも送ってみましょうかねぇ、ははは。




