スーパーロリペド大戦 ⑤
いつの間にか、シグナムに首根っこが掴まれていた。接近されているのに、全く気が付かなかった。
もう片方の手で肩を抑え込まれ、仰向けのまま地面に押し倒された。乗っかかれ、関節を決められる。
「死体を確認してねぇのに、油断し過ぎだバカ。それに、どうせ生きてたらいいなとか、思ってやがったろ。バカの上に甘ちゃんなんて、一番死にやすいタマじゃあねぇか」
くそう。軽口を叩いてるけど、一向に力を緩めない。それに、関節を完全に決められちゃってるから、こっちも上手く力が出せないよ。
「雷桜、アクセ――」
「させっかよ!」
「オブッ!」
咥えさせられてのは……ギャグボール⁉ よく、SMとかでMが咥えさせられてる、あちこち穴の開いたアレだよね、コレ⁉
「斬花、イグニッション!」
ティスちゃんが、斬花を起動したのが見える。だが、斬りかかろうにも私がシグナムと密着しているせいで、踏み込めないでいた。
「あ、アンタ! 往生際が悪いわよ!」
「ガキにしちゃあ、随分と威勢がいいじゃねぇか。ますます気にいったぜ。三人まとめて、じっくりねっとり可愛がってやるよ」
さ、三人まとめて⁉ あるぇぇ、それって私も含まれてんの⁉
「大ピンチからの一発逆転なんてしやがったからな。そんなヒーローさんには、もっともっと聞きたい事があんだよ。バカで真っ直ぐで、勇者なんて、最っ高のキャラクターだからな。そう放すわきゃねぇだろうが。楽しみだなぁ、怜奈」
な、何てことだ。私、シグナムに気に入られちゃったっぽい。でも、変だ。この人、ロリコンのはず。どうしてそんな、獲物を狙う肉食獣の眼で見てくるのかなぁ⁉
「ああ、言っとくがよ。アタシは幼女が好きなんじゃねぇ、幼女も好きなんだよ。だから、ネタになりそうな奴は、老若男女誰だって大好きだ。それにな……」
それに……それにって何さ!
「実は、アタシはお前みたいな胸の小さい女が大好きだ。ロリ趣味も、ちっぱい好きをこじらせた結果だかんな。だからよ、お前がすんげー美味そうに見えんだよ。よーく見たら、中々ロリ可愛い顔してやがるからな」
恍惚の表情浮かべて、耳元で愛をささやかれる。
え……何がどーなってんの、コレ。まさかまさか、そういう意味でも、気に入られちゃったり⁉
「ベッドの上で楽しもうぜ、怜奈ァ! アールヴのガキどもと違って、R18、大人の快楽をタップリ教え込んでやるぜぇぇぇぇ!」
NOォォォォォォォォォォォォォ! いや、嫌ァァァァァァァァァァ!
「ああ、いいねぇその泣き顔。もっとだ、もっといろんな表情見せてくれ! 何に絶望して、怯え、すくみ、泣き叫ぶのかを知れば、最っ高のキャラクターとストーリーになんだよ!」
うわぁぁぁぁぁぁん! 私の初めて、こんな形で終了ですかぁぁ⁉
「ん? そうか、バージンか、バージンだなお前。そいつはフィクションの基本だ。創作において、非処女の美少女なんて、よっぽど上手くやんねぇと、いいとこないからな」
いや、そんなのどうでもいいよ⁉ アンタの創作論なんて、知ったこっちゃあるかぁ!
「だから、面白そうじゃあ、ねぇか。捕まって、傷モンにされて、それでも戦い続ける女武闘家。いいねぇ、楽しくなってきやがったよ。最っ高のネタもあるしな。地雷要素?それがどうした。面白れぇモン、作ってやろうじゃあねぇか」
その女武闘家って、私だよね、絶対⁉
「大人の快楽。ベッドで楽しむ。うふふふふ。怜奈さん、大人になっちゃうなぁ」
「しぇ、シェリー! 戻ってきて! それ以上、深淵に突っ込まないでぇぇぇ!」
ティスちゃんとシェリーちゃんには、シグナムの18禁トークは過激過ぎたみたいだ。ティスちゃんは顔を真っ赤にして、あたふたしてるし、シェリーちゃんは、容量オーバーで頭がショートしている。
ああ、二人ともゴメンね。私、皆の気持ちを分かってあげられなかったよ。貪るような性欲の視線とともに、圧倒的な暴力で組み伏せられるのって、こんなに怖いモノなんだよね。最後の最後になって、私にも理解できたよ。
だからって、もうどうにもなんないんだけどさ。ああ、もう泣き叫ぶのも嫌になってきたよ。ギャグボールのせいで息が苦しいし、シグナムを喜ばせるだけだしさ。
「んじゃ、とりあえず基地に帰るか。さーて、どうやっていじめようかねぇ。メンタルは相当なモンだろうし、生半可な攻めじゃ効かねぇな。その分、楽しみも増えるって訳だぜ」
ああ、楽しそうだねぇ。私は、地獄の断頭台にいる気分だけどさぁ!
あーあ。もうどうでもよくなってきた。いや、よくはないんだけどさ。
だって、どうしようもないし。雷桜も、いつの間にか没収されちゃってるし。生身じゃ、多分……ってか絶対勝てないし。
それに、どうせ彼氏なんて出来っこなかったし。いや、欲しくは無いんだけどさ。機会は、まず皆無だったって話ですよ、ははは。
さらば、我が半生を共にした処女膜よ。グッバイ、バージン。ようこそ、大人の世界へ。
「私の、怜ちゃんに……。触るなァァァァァァァァッ!」
「誰だテメ――ゴファッ!」
突如として、拘束が解けた。手が空いたのでギャグボールも外させて貰う。
私を抑え込んだシグナムを、誰かが殴り飛ばしたのだ。でも、一体誰が?
ん……怜ちゃん? 私をそう呼ぶのは、大親友一人だけだよ。
彼女は、この時代にいるはず無い。無いんだけど、さぁ。
「怜ちゃん酷い事されてない⁉まだ、綺麗な怜ちゃんだよね⁉」
「あ、うん。ま、まだ、いつもの怜ちゃんだよ。助けてくれてありがとね、橙子ちゃん」
そんなに心配してくれたのか、橙子ちゃんが泣きながら抱き付いてくる。うん、このEサイズのおっぱいの感触。マシュマロみたいな柔らかさ。間違いなく、私の知ってる橙子ちゃんだ。
さっきのティスちゃんとシェリーにも泣きつかれたから、私のブラは涙でもうグシャグシャ。一日に三人に泣きつかれる奴なんて、凄い体験だなぁ、ははは。
「他の女の匂いがする……怜ちゃんは、私だけの怜ちゃんなのに」
アレ? 今、橙子ちゃんからとんでもなく物騒な声が聞こえた気がするぞ。まぁ、気のせいだよね。おとなしくて可愛い橙子ちゃんが、あんなヤンデレじみた声出す訳ないしさ。
「んだテメェ。お前みたいな、胸のデケェ女は、招待した覚えはねぇぞ」
頬に直撃だったけど、橙子ちゃんの力じゃあ気絶するには到らなかったみたいだ。
頬を赤くしたシグナムが、苛立ちながら向かってくる。
「私が連れてきたのだ、メッセンジャーとしてな」
この声、聞き覚えのある。振り返ると、仮面の男、アースが後ろで立っていた。深紅のマントを翻し、こっちを見ている。
「出たな、厨二仮面!」
「……ちゅうに? お前は何を言っているのだ?」
くそっ! コイツ、自分のファッションに一切のためらいが無い! それか、厨二の意味を知らないのか! この仮面マントマンは!
「あまり彼女を傷つけないでもらおうか、シグナム。怜奈は、我が同胞として迎え入れるのだからな。それに、おいたが過ぎると、また凍らされるぞ」
「ほぉう。随分と強気じゃねぇか。以前ならいざ知らず、そんな機械じみた身体で、アタシに勝てると思っていんのかい」
「勝てるさ。お前みたいな性欲の獣に、英雄が敗ける道理が無い」
「言ってくれんじゃねぇか……!」
この物言いがシグナムの逆鱗に触れたみたいで、ポーチから赤い機械じみたグローブを取り出し、右腕にはめた。多分、アレも接近戦用の神武なんだろう。
「……なら、試させてもらおうかぃ!」
シグナムはアースに、神武をはめた右腕で殴りかかった。
「アームドパンチャー、ファイァ!」
右腕のグローブから炎が噴き出す。深紅の炎を纏った拳は、まるで雷桜の雷撃。それの炎バージョンみたいだ。
「消炭に、なりやがれェェェェ!」
灼熱の拳は、アースを粉々には……しなかった。
左腕で、拳を正面から掴んで止めたのだ。それも、炎に焼かれているのに腕は、炎熱する事も無く、傷一つついていない。
「マグマと同じ温度だぞ、コイツ⁉」
「すまんな。私のは、特別製なんだよ」
シグナムが、拳を押し付けてるが、アースは全く動じない。
「……GMライトニング」
抑えた右腕から、シグナムに向かって電流が走る。電流は、全身に駆け巡り、元々ダメージの残ってたシグナムにとどめを刺した。
「クソッ! また、お前ら兄妹に敗けんのかよ……」
「そうだな。アナベルにすら敗けたお前が、私に勝てる道理はない」
電流をまともに浴びたシグナムは、眠るように倒れ伏した。意識も、今にも消えそうだ。
それに、シグナムの口ぶりからして、この仮面の男、アースと面識があるみたいだ。
「怜奈には、二度と近づかないでもらおうか」
「笑えるぜ、お前には似合わねぇよ。おい、怜奈。お前も苦労すんなぁ。同情するぜ、全くよぉ」
最後にそう言い残し、シグナムは気絶した。なんだか、含みのある言い方だなぁ。同情するって、何の事だろう。シグナムは、私の知らない事でも、知っているのかなぁ?
「ああ、そうだろうな。運命とは、皮肉なものだ」
アースが、寂しげに呟いた。運命とか言ってたし、もしかしたら彼も何か知っているのかもしれない。
「怜奈……だったか。いい名だ。いつか、彼女が語ってた通りだな」
「……何を言ってるの、貴方?」
その口ぶりは、まるで私の、いやもっと前を知っているみたいな。
「聞いたよ。愛奈は、もういないんだろう。残念だ。彼女なら、いい母になれただろうに」
ちょ、ちょっと⁉ 止めてよ! 何で、知ってるのよ!
「なんなの、貴方⁉ どうして、母さんの名前が出てくるのよ⁉」
「これが、答えだ」
私の質問に答える代わりに、アースは仮面を脱ぎ捨て、素顔を晒した。
歳は、二十代半ばぐらいだろうか。初めて見る彼の素顔は、美しい金髪に、氷の様な蒼の眼差し。
それは、私と同じ。日本人離れし過ぎて、アイツを思い出すと、親戚中から嫌われた唯一無比の特徴。
「怜奈、私はお前の父だ」
R15の戦犯、いかがだったでしょうか。次からは、赤いロリコン戦です。では、また。




