スーパーロリペド大戦 ③
そう、シグナムが取り出したのは漫画本だった。それも、魔法少女の服を着た可愛らしい幼女が表紙の、ロリ漫画だ。
「これでも、結構名の通った作家だったんだぜ。ま、読んでみな」
あるぇぇ⁉ シグナムって、漫画家さんなの⁉ 全然見えなかったよ。だって、渡された漫画、すっごくキュートで可愛らしくて、少女漫画みたいなタッチで描かれてるもん⁉
「似合わねーって顔してんな。バレてんぞ、オイ」
「あ、ゴメン」
結構気にしてたのか、拗ねちゃったよ。この人、見かけと言動からは想像つかないけど、繊細というか、乙女な気もしてきた。シェリーちゃん達の衣装や、この漫画も少女趣味全開だしね。
漫画のタイトルは、魔法少女セレナ。平凡な小学五年生のセレナちゃん(ただし、桃色ヘアー)が、ある日突然精霊さんに出会って、悪い悪魔から世界を守って欲しいと依頼される。そして、悪魔に襲われた友達を助けるために、精霊の力を借りて魔法少女に変身!
内容は、王道の魔法少女モノ。小5ロリは悟りだしね! 故に、難しい題材なはずなんだけど、特筆した画力と、個性あふれるキャラクター達によって、飽きの来ない出来になっている。
そう、キャラクターだ。この漫画、キャラが恐ろしい程リアリティがあって生々しい。まるで、本当にこんな人がいるみたいだ。
「ん? この悪魔が持ってるトマホーク。どっかで……」
見た事がある。それも、かなり最近に。漫画では、ミノタウロスの持つ、灼熱の斧って扱いなんだけど、これってまさか。
「気づいたみてぇだな。そうさ、その敵は、アタシが戦場で仕留めた神武使いがモデルになってんだよ。馬鹿みたいにデカい大男だったからな。よーく覚えてんぜ」
「って事は、別の話に出てくる、人に憑りついて凶行を繰り返す悪魔のナイフも⁉」
「ああ、そうだよ。神武を使っての通り魔が持ってた奴だ。帝都を騒がす悪魔なんて呼ばれてたからな。いいネタになったぜ」
シグナムは手柄を誇るように、嬉しそうな顔で語った。
「当時のアタシはよ、なんつーかスランプだったんだ、漫画家としてな。多分、想像力の限界に来てたんだろう。だから、傭兵になったんだよ。戦争でいくらでも募集してたとはいえ、軍人になっちゃあ、規則とか面倒だからな」
な、なんて事だ。この人、漫画のネタの為に戦い続けたってのか。リアリティ欲しさに、神武使いを倒し続けた。傭兵として、幾多の戦場を回ってきた。
「ちょっと待って⁉ このシーン、セレナちゃんが敵に捕まって、エッチな尋問を受けるシーンがあるけど、まさかコレもリアリティじゃあないよね⁉」
私が開いたのは、セレナちゃんが敵幹部の機械将軍(よく見たらグノーディア将軍に似てる。多分モデルにしたんだろう)に捕まって、機械の触手みたいなものを全身に這わせられてるシーン。そりゃあ18禁じゃあないけど、パンツとか見えちゃってるし、少年誌的タイプのエッチなシーンだ。
そしてシグナムは、そのシーンを見るなり、言ってのけた。悪気も無く堂々と。
「神武戦争も、末期はあちこちのゲリラで少女が駆り出されてたからな。捕虜にして、色々楽しませてもらったぜ」
「‼」
な、何てことだ。って事は、もし私が負けたら、捕まってる二人は……。
「「い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
泣き叫んだのは、話を聞いてたティスちゃんとシェリーちゃん。二人して、大粒の涙を流して抱き合っている。
「シェリー、アンタのせいだからねぇ!」
「ティ、ティスちゃん⁉ な、なんでぇぇぇ」
「アンタが貰ってくれないからよぉぉぉ。大好きだって言ってるのに、言ってるのにぃぃぃ」
まずい、ティスちゃんのダメージが深刻だ。このままでは、最悪の形で愛を告げてしまう。
「だ、大丈夫だよ! 私は敗けたりなんかしない。ってか勝ってるし。切り札だって潰したし!」
とりあえず、二人を安心させなければならない。必死に、優位をアピールする。
「んだそりゃ。まるで、もう勝ったみてぇな言い様だな」
「ものは言い様だよ!」
シグナムはご立腹だけど、今はどうでもいい。それより、ティスちゃんを落ち着かせないと。
「ああ、そうかい。分かったよ、だったらな、見せてやるよ」
アレ? なんだろう。嫌な予感がビンビンだ。まるで、まだなにか隠しているみたいに、余裕の笑みを浮かべている。
「切り札ってのは、こういうのを言うんだぜ‼」
言うなりシグナムが取り出したのは、というかポーチから引きずり出されたのは……。
「ロ、ロ、ロロロロロ、ロボットォォォォォ⁉」
そう、それもM3君やグノーディア将軍とは違う、本物の巨大ロボ。
高さは優に十五メートルはあるだろう。右腕にはパイルバンカー。左腕には、先ほどのライフルより巨大なガトリングが付いている。背中には、ジェットスラスターが付いていて、スピードもありそうだ。
まさに、我々がイメージする巨大ロボ。血の色の様な深紅のカラーリングで、見るからにエースっぽい。まるで、アニメの主人公機みたいだ。頭部のモノアイが、グポーンとに光ってる。
「ロボットなんて無粋な呼び方すんじゃねぇ。コイツの名はジークフリードMK-2だ。どうだ、カッコいいだろ」
あ、名前もなんか主人公っぽい。それに、色といい右腕のパイルバンカーといい、趣味全開だなぁ、コレ。ティスちゃん達の衣装もそうだけど、趣味に糸目つけないよね、この人。
「バルカン!」
音声認証なのか、シグナムの声に応じて、こめかみ辺りにあるバルカンが火を噴く。多分、あのロボじゃ牽制用の武装なんだろうけど……。
「一発でも喰らったら、流石にやばいかな、こりゃ」
足のブースターを後ろに噴射して、どうにか避けたとはいえ、一撃でコンクリートに大穴を開ける巨大な鉄球を目の当たりにしたんじゃ、喜んでもいられない。
そりゃそうだ。牽制用なのはあくまで同じ、もしくはそれ以上のサイズの相手と戦う時のみ。いくら雷桜に守られているとは言え、今の私はあくまで人間サイズ。雷桜は無事でも、生身の方が衝撃に耐えられない。
『んじゃ、久々に暴れさせてもらおうかッ! なんせ数百年ぶりだからな、アタシもコイツもうずうずしてんだよ!』
バルカンは足止めだったみたいで、シグナムはいつの間にコックピットに乗り込んでいた。
スピーカーを全開にしているのか、大音量で声が響いてくる。
『挨拶替わりだ、持ってけ馬鹿野郎!』
それも、めっちゃノリノリだ。実に嬉しそうに、左腕のガトリングをぶっ放す。
「ぶ、ブースト全開! わわ、わわわわわ」
両腕、両足についているブーストを駆使して、右に左に上に下にと移動しまくる事で、どうにか当たらずにすんでいるものの、おかげで数百メートルも距離が離れてしまった。
「うわぁ。建物が、あんな簡単に……」
バルカンですら恐怖を覚える威力だったのだが、ガトリングは比じゃない威力だった。斉射した地点にあるあらゆるモノを粉々に砕いていく。高層建築ですら例外でなく、下の階層を砕かれたビルは、上層の重量を支え切れなくなって、崩壊していった。
「こりゃ、どっかに隠れる訳にもいかないよね、ははは」
数十メートルはあるビルを一瞬にしてがれきの山に変えたガトリングに対し、籠城は命取りだ。最悪、何か起こったのかすら分からないまま、一瞬で生き埋めになりかねない。
「だから、ちょっと、いや滅茶苦茶怖いけど、一気に決めるしかない!」
全力で地面を蹴り、一気に前方に向けてジャンプ。飛び道具ではあの化け物を倒せる気がしないし、勝つには距離を詰めるしかない。
それに、幸か不幸か私は人間サイズだ。そりゃ、一発でも当たればおしまいかもだけど、的が小さいから、そう当たる事も無い。
事実、正面突破だけど、斜めジクザグに突っ切る事で、ギリギリで回避する事が出来た。
そりゃ、こーんな小さな的が右、左と動き回ってたら、照準も合わないよね。だから、時たま空高くジャンプしたり、地面を踏み砕いてコンクリの目くらましとかしながら、どうにか照準をずらして距離を詰めていく。
『お前ホンットバカだよな。ガトリング相手に正面突破って、正気の沙汰じゃねぇぞ』
「それがどうした! 正面から堂々と打ち砕く!それが私のポリシーだ!」
残り百メートルくらいのとこで、シグナムの声が鳴り響いた。呆れ果ててるみたいだけど、いいじゃん、別に。私バカだからこそこそ逃げ回るより、全力で突っ走る方が性に合ってんだよ!
『だから気にいってんだよ。いいキャラになるかならな。それによ……』
瞬間、全身に悪寒が駆け巡った。声だけでもシグナムの余裕、笑みから、獰猛な肉食獣の野性を感じる。
『接近戦は、アタシも大好きなんだよッ!』
「! は、早――」
スラスターが火を噴き、敵機が急接近してきたのだ。それも、目にも止まらぬスピードで突っ込んできた。あの巨体からは信じられないスピードだ。多分、雷桜のフルスピードより速いと思う。
『そうら、捕まえたぁ!』
故に、避けられるはずも無かった。真っ直ぐ突っ込んでたのも災いしたんだろう。右腕に掴まれ、地面に叩きつけられる。
『久々に、楽しかったぜ。アンタは、次回作の主役にしてやんよ』
右腕のパイルバンカーから、這いつくばっている私めがけて杭が発射される。あんなものをゼロ距離で喰らえば、確実に私の体はバラバラになるだろう。
とはいえ、叩きつけられた衝撃で、全身ボロボロだ。いくら雷桜でも、衝撃吸収に限度があるのか、体中痛くって、泣き出しそうだよ。
頭も上手く回んない。ああ、パイルバンカーの鉄杭がスローモーションで見えてきた。走馬灯、アドレナリンで思考が加速して、物事がゆっくりに見えるアレって奴かな、ははは。
「うぐっ、寂しいよう、怖いよう。誰か、助けてよう」
消えかけている意識の中で、泣いている金髪幼女が見えた。
金髪で、蒼眼で……ってこれ、私じゃん⁉ どーなってんの⁉




