スーパーロリペド大戦 ②
「ハハ、踊れ踊れぇっ!」
シグナムは、楽しそうに笑いながら、両腕のマシンガンをぶっ放してくる。
それも、唯のマシンガンじゃない。一発一発に神武の力が宿っているのか、威力が尋常じゃない。鉄製の看板ですら、一発で粉々だ。ハチの巣にされれば、雷桜だってただじゃすまないだろう。
増強された動体視力と身体能力でどうにか躱しているけど、このままではらちがあかない。
だから、一気に突っ込んでぶん殴れたらいいんだけど、やみくもに向かっても、集中砲火されるだけだ。 それじゃあ、たどり着くころには地面にはいつくばっているだろうなぁ。
銃撃から逃れ、ジャンプで基地の屋上に飛び乗る。火力はとんでもないけど、一応唯の人間だ。ここまでくるのに、少しは時間がかかるだろう。それまでに、なにか対策を考えなくちゃならない。
「大体、このマシンガンといい、さっきのナイフやトマホークといい、何処から出したのよ。ゲームじゃあるまいし、魔法の袋でも持ってんのかなぁ」
RPGじゃあ、一見手ぶらに見える主人公たちは、ほぼ無限にアイテムを持てる。どんな武器も、アイテムも出し入れし放題だ。手に入れたアイテムは、しまわれてこつ然と消えちゃうんだよね。
「消えた? そういや、ナースさんが……」
言ってた。シェリーちゃんが、こつ然と姿を消したと。最初に聞いた時は、一体何言ってるのか分からなかった。人が一瞬のうちに消え去るなんて、おかしな話だ。消滅させたり、未来に飛ばしたりなら分かるけど、シェリーちゃんは確かにここにいる。
だから、消したんじゃない。送ったんだ。いや、もしかすると。
「……なるほどね」
なぁんとなく、分かってきた。考えてもみれば、いや、よく見れば分かる事だ。トリックとかでも何でもない。おそらく向こうは、隠すという意識すら持っていないのだろう。
ただ、私が気づかなかっただけなんだ。緊張しきちゃってて、見落としていただけ。
「飛べねぇとでも思ったのかい、怜奈ぁ!」
シグナムが、空飛ぶバイクでやって来た。前にグノーディア将軍が乗っていたのと同じモノだと思うけど、マシンガンやミサイルがあちこちについていて、ボディもやたら刺々しい。
あの火力で狙われたら、ひとたまりも無いだろう。だからといって、今の私に空飛ぶバイクから逃げられる速力があるとも思えない。
だから、盾が必要だ。それも、質量のある大きなモノが。幸い、ココにはちょうどいい大きさの鉄くずがある。
「だらっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
気合を込めて、屋上にある給水タンクをもぎ取った。
「タンク、シュートォォッ‼」
「……バカだな、お前」
巨大なタンクを、シグナムめがけて思いっきり蹴っ飛ばす。これには彼女も面食らったみたいだ。というか、呆れているだけだと思うけど、そんな事はどうでもいい。
バイクに搭載された火器が一斉に火を噴いた。タンクは一瞬で元の姿を失い、バラバラに砕けていく。
「そんな鉄くずで、仕留められるわきゃねーだろっ!」
知ってるよ。でも、それでいい。
肝心なのは足止め。時間を稼ぐ事だ。この圧倒的火力を少しでも防いでくれれば、それでいい。
タンクを蹴りぬいた衝撃を生かして、足を振りぬくと同時に、蹴った右足を軸にして後ろ回し蹴りを繰り出す。
ただ蹴るだけじゃあ空振りだけど、雷桜の場合はそうはならない。シェリーちゃんに貰った説明書には、ちゃんと射撃武装だって載っていた。左足に雷を纏わせて、エネルギーを足全体に集中させる。
「飛雷脚ッ!」
斬撃ならぬ蹴撃を、刃として飛ばした。稲妻を纏ったエネルギー体は、弧を描きながらシグナムに向かって飛んでいく。
狙ったのは、彼女の腰の部分にある、ウエストポーチ。多分だけど、それが彼女の持つ神武だ。
「ちぃぃっ!」
シグナムは、狙いがポーチにあるのを察したのだろう。バイクを乗り捨て、空に飛び出した。
雷の一撃を受けたバイクは、火花を散らして大爆発。そのすぐそばの空中にいるシグナムが、ポーチから何かを取り出す。
取り出したのは、ジェットパックだった。それも、明らかにポーチより大きい。
まさに、超次元ポーチ。だから、武器を出しまくったり、使い捨てるのに一切のためらいが無かったんだね。
おそらく、アレでシェリーちゃんをしまったのだろう。武器を無限に取り出せる。つまり、どんな相手にも最高の相性で戦える。威力は無いけど、とんでもなく恐ろしい神武だよ。
「でも、皆の為に敗けてなんてられないよね……よしっ!」
気合を入れ直し、地面に降りて後を追う。
シグナムは、元いた場所に戻っていた。先ほど乗り物を潰された後だというのに、腕を組んで余裕の表情で、ステージに立っている。
すぐそばには、バリアで捕われているティスちゃんとシェリーちゃん。ま、まさか二人に手を出すつもりなんじゃ⁉
「相手は私だよ! 二人には、手を出さないでくれるかな!」
「心配すんじゃねぇよ。まだ、お楽しみはお預けだ。アタシにだって、優先順位ぐれーは分かるからな」
不敵な笑みを浮かべ、微笑むシグナム。その脳裏には、あられもない二人の姿が浮かんでいる事だろう。
「れ、怜奈っ! 絶対に勝ちなさいよ。敗けたら、化けて出てきてやるからね!」
「よ、よろしくお願いします! ま、敗けないでっ!」
「が、頑張るよ、ははは」
二人は、シグナムの恐怖が染みついちゃってるみたいだ。声を張り上げ、エールを送る。
う~ん。幼女のエールって、嬉しいはずなんだけど、なんか元気が出ないなぁ。多分、私に頑張って欲しいって気持ちより、怖いのを何とかして欲しいって気持ちの方が強いからなんだと思う。
ま、そんだけ怖かったって事なんだろう。いくらいい子でも、いや、子供だからこそ怖いのやだもんね。
「もう頼れるの、アンタだけなんだからね。うう……が、頑張って!」
でも、ティスちゃん悔しそうだ。大切な斬花も取り上げられちゃって、何も出来ずに敗けたのが、悔しくてたまらないんだろう。シェリーちゃんを助けるって、息まいてたもんね。
「子供のおもちゃを勝手に取り上げるのは、大人としてどーかと思うよ。だから、ティスちゃんの神武、返してくれないかな。どうせ、そのポーチに入ってるんでしょ」
「ん……ああ、コイツか。取り押さえる時に危ねぇから没収しといたんだよ。ま、対したモンじゃあ無ぇし、邪魔だから今だけは返してやるか。アールヴ程度じゃあ、バリアは破れねぇだろうしな」
シグナムは、ポーチから斬花を取り出すと、ティスちゃんにめがけて放り込んだ。不思議と斬花はバリアをすり抜けて、ティスちゃんの足元に転がっていく。
「神武は神武でしか壊せない……か。意外だったよ、まさか本当に返してくれるなんてね」
私にとっても、この展開は想定外。いかに、ポーチを取り上げて、斬花を取り返そうか考えていたので、彼女の潔さに、正直言って拍子抜けした。
「別にいいだろ。ただ、ちょっと感傷的になっちまっただけだよ。久しく、強敵と巡り合えなかったから、最後の願いぐらいは、聞いてやろうと思ってな」
その瞬間、彼女の凶悪な表情が、さらに凄みを増した。ポーチから、なにかを取り出す。
「大砲……いや、銃⁉」
出てきたのは、ライフルだった。それも、大きさが尋常じゃない。身の丈を二回りも越す巨大な、超大型ライフルだった。
もちろん、そんなモノ持てるはずも無い。砲塔にはスタンドが付いていて、銃身を支えている。
「対拠点破壊用の、超大型重粒子砲だ。喰らって消炭になりなっ!」
「ははは、もう何でもありだね、こりゃあ」
ライフルから、極太のビームが発射された。紫色の閃光は、まさにアニメとかで見るビームそのものだった。
「ボルッテックシールド!」
トマホークの炎を防いだのと同じ要領で、ビームを防ぐ。右腕に一極集中させたバリアで、どうにかビームを防いでいく。
「だ、ダメだ。威力が、強過ぎる! こ、このままじゃあ……」
押し込まれる。雷桜そのものはビックリした事に無事なんだけど、圧力で私の体がもたない。右腕を、支えきれなくなる。
ん、まてよ。雷桜は無事なのなら、アレでどうにかなるかもしれない。
いや、出来る! どっちみち、このまま消炭になるくらいなら、この賭けは、やってみる価値はあるよ!
「飛雷拳! ぶっとべぇェェェェ!」
左腕をビームに向けて突き出し、腕のブースターで鎧の部分を発射させた。白銀の手甲は、ビームを突っ切っていき、ライフルの銃口に入り込む。
「んなっ⁉ そんなのアリかよ⁉」
ありだよ。L2ちゃんが託した雷桜は、無敵のスーパー神武なんだからさ。
「雷撃ッ!」
内部に入り込んだ雷桜の左腕に、稲妻を纏わせる。内部のエネルギーに耐えられなくなったライフルは、火花を散らして大爆発した。
そして、飛ばした左装甲は……無事だった。ブースターを吹かせて、自動で左腕に収まっていく。
「おいおい。無茶苦茶にも程があんだろ、そりゃ」
爆発から辛くも逃れたシグナムは、雷桜のでたらめぶりに呆れ果てていた。
そうだよね。自分でも、ビームの中を突っ切らせるなんて、賭けだったしさ。ホントに上手くいくなんて思わなかったよ。
「くくっ、ハハハッ! タンクの時といい、トンデモねぇバカだな。大火力相手に正面切るなんて正気の沙汰じゃねぇ。気にいった、気に入ったぜ!」
「……どうも」
シグナムは、急に笑い始めた。どうやら私、彼女に気に入られたみたい。
でも、なんっか腹立つなぁ。気に入ったっても、馬鹿扱いだしさ。私って、そんなに無茶な事してるのかなぁ。
「ったく惜しいよな。後五年早く会えてりゃ、丁度アタシのストライクゾーンど真ん中だったのによぉ。素材はいいんだ。きっと、相当な上玉だったはずだからな」
「貴方だって中々だよ。あ~あ、あと十年早く会えてりゃなぁ」
「言ってくれるじゃあねぇか。まぁいい、モデルさえありゃ、後は想像でどうにでもなるからな。アンタ、最っ高だぜ。次のイメージに、ピッタリだ」
「イメージ?」
な、何の事だかサッパリだけど、悪寒が止まらない。じろじろと、舐め回すように視姦されているのが、ハッキリと感じる。
「ちょ、ちょっとおかしくないかなぁ! 貴方、ロリコンでしょ⁉ 16の女なんて、どう考えても守備範囲外だよ!」
「ん、ああ。済まなかったな。説明が足りなかったみてぇだ」
そう言うや否や、シグナムがポーチから取り出したのは、武器でも乗り物でも無く……。
「ま、漫画?」




