私らロリコン
誘拐犯から指定された場所は、戦争で荒廃し、打ち捨てられた町、サーペンドだった。ティスちゃん曰く、こうした滅びた町は、この時代にいくらでもあるらしい。
「人間の街に、思い入れのある奴なんて誰もいない。だから、復興なんて時間と金の無駄だし、それより自然の回復が大事」
との事だった。このサーペントも、首都から一時間も歩いた距離にあるのに、ビルは傾いたまま。あちこちのガラスも割れたまま。もう何百年も人の手が入ってないのは、明白だった。都市のすぐそばですらこの有様だから、こういった町はきっと世界中にあるんだろうね。
そこの中心には女神の銅像が立っていた。渡された招待状に従って横にどかすと、地下への階段が現れる。
「入口は、多分、コレだよねぇ」
「ええ。午後五時半に、レジスタンス基地跡地で待つ、だってさ。地下への入り口も、この地図通り。神武戦争時代のレジスタンス地下基地があるってパパは言ってたけど、ホントにあるなんて思わなかったわ。アンタに会ってから、びっくりしてバッカよ」
地下への階段を下りながら、犯人からの招待状片手に、ティスちゃんが呟く。
「真っ暗だと思ってたけど、照明までついてるよ。親切だねぇ」
「そうね……随分と、余裕ぶってるじゃない」
今は落ち着いているけど、シェリーちゃんが攫われたって聞いた時には、取り乱して大変だった。
ナースさん曰く、シェリーちゃんは、アンドロイドの女性に吸い込まれたという。どういう事やら、サッパリなのだが、本当にそうとしか言いようが無いらしい。
そのアンドロイドは、時間と場所を記した私宛の手紙を置いて去っていった。誰かに他言すれば、人質がどうなってもいいのかという、警告付きで。
「どう考えても、罠だよねぇ」
「考えなくても、罠に決まってるじゃない」
「だよね。でも、それがどうしたって話だよ」
「当然でしょ! シェリーを攫われて、黙ってなんていられる訳無いじゃない!」
それが私達の結論だった。罠なんて関係ない、正面から打ち砕くのみ。神武は常に身近に持っておいた方が良いみたいなので、最低減のメンテナンス以外は、常に持ち歩いているから、雷桜と斬花もこちらの手にある。だから、戦えないって事は無い。
「お、そろそろ終点みたい。地下基地なんて、ワクワクするねぇ」
「ったく、ピクニックじゃあないのよ。もっと、気を引き締めなさい!」
「ゴメンゴメン。緊張ほぐそうと思ったんだよ」
ティスちゃん。傍目には冷静だけど、動きのあちこちに焦りが見えたから。歩くスピードも、いつもよりちょっとだけ速いし、表情も硬い。さっきから、クスリともしないから、かなり張りつめている。
気を引き締めているのはいい事だと思うけど、悪い方向に転がらなければいいなぁ……。
階段を下り終えて、ドアを開けた先に広がっていたのは、サーペントの街で見たのと、同じような光景だった。違いがあるとすれば、天井が閉じられているのと、さびれているのはビルとかでは無く、基地や宿舎、工場がメインだってことぐらいだ。
「地下都市なんだろうけど……なんも無いね、ココ。拍子抜けしちゃったよ」
「そりゃあ、軍事基地って言っても、何百年もほったらかしだし、さびれて当然よ。そんなとこの照明をわざわざよみがえらせたって事は、ココにいるのは間違いなさそうね」
そう、あちこちに設置された街灯には、しっかりと明かりが灯っている。建物は滅んでいるけど、明かりだけは当時のまま。
なんだか、不思議な感じだなぁ。当時の人が見たら、懐かしくなるのだろうか。よくよく見たら、あちこちに酒場とかあるし、光が灯って、皆集まっていろんな人が笑っていたんだろうねぇ。
「あ、ティスちゃん。あそこ、やたら照明が多いよ」
「ホンットあからさまね。随分とまぁ、舐められたもんよ」
「まぁ、招待状を送ってきた時点で、わざわざ隠れる必要なんて無いもんねぇ」
そんな感傷に浸っていると、さびれた基地街の中で、最も光り輝いている所を見つけた。二人で頷き合い、一気に光の下へ駆け出す。
着いた先は、イベント用ステージの跡地だった。そこだけ、証明とスポットライトが輝いていて、完全に当時のままが再現されている。
ステージの上には……シェリーちゃん⁉シェリーちゃんが、立たされていた。それも……。
「なにその、エロ可愛いスーパーコスチューム⁉」
そう、彼女が着ていたのは、いつもの白衣ではなく、ふりふりの付いた、女の子趣味前回のピンク衣装だった。それに、スカートはミニで、パンツが見えそうで見えない絶妙の長さ。ぼさぼさだった頭も、綺麗に整えられて、ツインテールという王道ロリの髪型に。
まるで、一級品のアイドル衣装。元々の甘ロリ系可愛らしさと合わさって、その破壊力はあまりにも、凶悪だ。
「怜奈さん……レイナざぁぁぁん」
シェリーちゃん、私を見つけた途端に、急に泣き出して抱き付いてきた。
怯えきった顔を見た所、よっぽど怖い目にあったみたい。でも、ただでさえアイドル衣装の破壊力で大ダメージだってのに、泣きついてきちゃうなんて……。
「しぇ、シェリー、ちゃん。よ、よしよしぃぃぃ」
理性が、崩壊しかかってる。今の私に出来るのは、ふるえる腕で、どうにか頭を撫でてやる事ぐらい。頭が真っ白になって、他の言葉が見つからない。
「な、は、離しなさい! い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「テ、ティスちゃん⁉」
彼女の悲鳴が鳴り響いたが、姿はどこにも見当たらない。一瞬のうちに、攫われちゃったみたい。
不覚……。おのれ誘拐犯! こんな可愛いシェリーちゃんで意識を集中させ、その隙にティスちゃんを狙うなんて、なんと卑劣な。許せん! でもありがとう!
「ちょ、ちょっとどこ触って……やぁぁぁ! 舐めないでぇぇぇぇ!」
な、何されてんの⁉ 流石に私も、初対面でペロペロはしないよ⁉
「ふ、服返して! え……コレを着ろと? じょ、冗談じゃないわよ!こんな恥ずかしい……」
あるぇぇぇ⁉ 暗闇の中で、一体どんなアダルティックな光景が繰り広げられてんの⁉ 服を脱がせるなんて、していいのは二次元と妄想の中だけだよ! イエスロリータ、ノータッチ!
「あうっ」
あ、ティスちゃん出てきた。どうやら、無理矢理お着換えさせられたみたい。それも、シェリーちゃんの着ているアイドル衣装とほぼ同じものを。
「しぇ、シェリー……まさかアンタも、アレを感じたの?」
「う、うん……怖かった。まるで、捕食されているみたいで」
二人とも、怯えきっちゃってる。肩を寄せ合い、互いに抱き合っている。
シェリーちゃんだけでなく、勝気でプライドの高いティスちゃんまでこの有様なんだから、よっぽど恐ろしい目にあったんだろうねぇ。
でも、幼女が涙目で抱き合っている光景は、その、中々に絶景だ。ロリコンとして、かなりの高ポイント。悪いけど、かなーり萌えるよ、コレ。
「だろう? そのために、強めに攻めたからな」
「!」
暗闇から出てきたのは、髪の長い銀髪の女性だった。歳は、二十代前半って所だろう。
160cmの私より、頭一つ分背が高い。多分、170は軽く超えているだろう。体には、まるでアスリートの様に、贅肉の一つもない。体を鍛えている者にとっては、理想ともいえる強靭な肉体。故に、女性ながらアーミージャケットが一番似合っている。大人っぽい美貌と合わさって、まさに、女戦士という言葉を具現化したかのよう。
そして、何より……。
「な、なんという破壊力。橙子ちゃんよりも、一回りも二回りも……」
「いいだろ。おっぱいおっきいと、甘えんぼさんが抱き付いてくるからな」
多分Gぐらいはある巨乳は、彼女にとっても自慢だったみたいだ。揺らして、見せつけてくる。
くそう、私だって胸さえあれば、こんな敗北感……。
「アンタが、雷桜の新たな装者ってか。……ふーん。見た所、多少鍛えちゃあいるが、しょせん素人だな。緊張感の欠片もねぇ。ったくグノーディアの奴も落ちぶれたもんだぜ。なんせ、こんなずぶの素人に、後れをとったんだからな」
私の雰囲気を一目見て、銀髪おっぱいは素人だと評価した。
それは、まぁ間違っちゃあいない。ケンカレベルなら何度か経験したけど、実戦レベルでの戦闘経験はグノーディア将軍が初めてだ。
そして、この人は明らかに、歴戦の猛者。ナースさんはアンドロイドとか言ってたけど、ハッキリとした人間特有の威圧感というか、凄みを感じた。腕を組んで不敵に笑ってはいるけど、何処にも隙が無い。突っ込んだら、一瞬で組み伏せられると、直感で分かった。
「貴方、人間だよね」
「どうしてそう言いきれんだよ。人の形をしただけの、機械人形かもしんねーぞ」
笑みと余裕を崩さず、冗談を言ってるけど、私には確信があった。この人が人間だという、確かな証拠が。
「だって、ロリコンじゃない。シェリーちゃんとティスちゃんの、絶妙なアイドル衣装を見れば、分かるよ。貴方が、この萌えを見るために、苦労をいとわず努力したって」
そう、私もヒーロースーツやコスプレ衣装を自作したのだから分かるのだが、今彼女達が着せられているのは自作の衣装だ。それも、私なんかよりずっと完成度の高い、プロが作るのと遜色ない出来。
でも、よく見たら、あちこちに銃やナイフのポップな絵柄が付いている。こんな趣味前回の模様、個人じゃなきゃあり得ない。
「さしずめ、シェリーちゃんは街中を歩いていて、急にスカウトされた新人さん。慣れない事ばっかりで、右往左往しながらも、アイドルとして少しずつ階段を上がっていく、そんな女の子。王道の、アイドル幼女。この妄想だけで、三時間は戦えるよ」
「だったら、プライドのたけぇティスは、そんなアイドル一年生と組むことになるベテランだな。文句を言いながらも、切磋琢磨していき、認め合ってく。いいじゃあねぇか。コイツで、六時間はいけるぜ」
二人して、アイドル幼女を語らい、握手を交わす。見込んだ通り、この人は紛れも無く人間。それも、ハイレベルのロリコンだ。
こんな形でなければ、友として語らえたのかもしれない。
M3君達やグノーディア将軍といい、私の敵ってなんでか、憎めない奴ばっかだなぁ。
「一つ聞きてぇ。アンタ、ロリコンだって事は分かったけどよ、自覚したのはいくつの時だ? まさか、生まれついてのもんじゃねぇだろ?」
真剣な面持ちで、私のロリ遍歴を聞いてくる。なんでそんな事聞くのかサッパリ分かんないんだけど、隠す事でもないし、答えてもいいよね。
「ハッキリ自覚したのは、11か12の頃だったけど、低学年の時にも幼稚園児に興奮したし、多分生まれつきだと思う。私のパパも、18の時に当時12歳のママに出会って、数年後に結ばれたしね。まぁ、血の定めって奴じゃないかな」
12の時に、ママと出会って恋に落ちた、我が父。もちろん親戚の印象は最悪で、写真とか一つ残らず消されたから、顔すら知らない。だから恨みようもないし、今の私は幸せだから、正直言ってどうでもいい存在なんだよね。
「……そうか。よーく見ると、前と結構似てるしな。ビンゴって訳かい」
銀髪の人は、なにか心当たりでもあるのか、私の顔をしげしげと見つめて、一人納得した感じだった。
「前言撤回だ。コイツは、神武戦争以来の……いや、それ以上に楽しめそうだなぁ、怜奈!」
理由は分からないが、私に対する認識を改めたみたいだ。一切の油断も無く、全力で叩き潰しにかかるだろう。
だから、私も手加減なしだ。今出来る全力で迎え撃つ。手加減したら隙になって、一瞬で付け入られて潰されちゃう。理屈じゃあ無く直感で、理解できた。
「雷桜、アクセラレーションッ!」
腕のブレスレットが発光し、光が全身を包んでいく。一瞬のうちに、変身は完了した。
雷桜と一体化したヒーロースーツを身に纏った私は、サンダードラゴン改め……。
「アルティメット・ライトニング。ここに参上!」
さっき、適当に考えたネーミングだけど、悪くない響きだ。アルティメットってのが、いかにも強そうで、パワーアップしました感がある。
「バカッ! よそ見してんじゃないわよ!」
「れ、怜奈さん! 上、上です!」
ティスちゃんとシェリーちゃんは、いつの間に、ドーム状のバリアみたいなもので捕らえられていた。その二人に言われるがまま、見上げる。
空から、なにかがが降ってきた。いや、降って来たというよりも、私めがけて殺到してくる。ソイツは……。
「ミ、ミサイルぅ⁉」
500PV達成しました。これも、見ていただいた皆様のおかげです。誠に、ありがとうございます。
趣味だけの作品ですので、せいぜい50いけばいい方だと思っていた分、本当に嬉しいです。




