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コタツの男


ある夜のこと。


その男は部屋でカップ麺の準備をしていた。日常の肉体労働を終えて部屋についたのが夜の8時、普通にテレビをつけて疲れた体を引きづりながら、やかんに水を入れお湯をわかす。その後、体を震わせながらコタツの電源を入れて潜り込んだ。


お湯が沸き、カップ麺にそそぎ蓋をする。その間にコンビニで買ってきたおにぎりとパンを交互に口に運ぶ。と、メールが鳴った。同僚からだった。


「池袋にいるんだけど、おまえもこないか?」


という誘いだった。その男は鼻を鳴らしせせら笑う。今までずっと倹約してきたのに行くわけないだろう…とその男は呟いた。


男の名前は斉藤といった。


斉藤は今年28になるが、特にこれといった趣味もなく親しい友達もいない。親とも疎遠になりもう何年も会っていなかった。去年までは同僚とつまらない飲み会に行くのだけが唯一の人ととの交流だったが、今年に入りそれも辞めた。


理由は…あった。


彼は今まで彼女が居た試しはないが、ある女性に一目惚れしてしまったのだ。いままでなら、すぐに諦めてしまっていたが今回は違った。ただその女に会うためには金がいる。そのために斉藤は貯金をしているのだ。


斉藤は、カップ麺をすすりながら携帯をみる。キャバクラのSNS情報サイトだ。そこには様々な人々がいろんな書き込みをしている。誹謗中傷も多いが、キャバクラ好きの男達や、妬み満載の女たちからキャバ嬢の写真や近況が載っている。


彼は去年の年末に、会社の社長に連れられてある店に行った。そこで今まで見たことのないような美しい女性に出会った。しかもその女性は、とても斉藤に優しかった。斉藤は結構な巨漢でオシャレも面倒で特に気をつかったことはない。なので女の子からは、優しくされた記憶がほとんどなかった。

もちろんそれだけでは、斉藤も彼女への想いはあっても行動することはない。自分が女にモテるとはつゆほども思っていないし、ましてやキャバ嬢に相手にされるわけがないと思っていた。


だが、ある日一通のメールとともにアドレスが送られてきた。特に怪しいものではなかったので、斉藤は軽くサイトにアクセスするしてみると一目惚れしたキャバ嬢の写真が載ったブログみたいなものに飛んだ。


そこには、そのキャバ嬢の日記のようなものがあり斉藤が店に行った日に、「とても優しいお客様に今日会えました。また来てくれないかな。」という書き込みがあったのだ。斉藤はなぜかそれが自分のことを指しているように感じたのだ。


いろんなことが運命のように感じた。誰がそのメールを送ってきたのかはわからなかったが、今の斎藤にはそのことはどうでも良かった。


目標としていたお金が貯まり、いよいよ明日そのキャバ嬢と会える。


斉藤は自然と表情がほころび、明日に胸を躍らせた。









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