メール
サナはふと目が覚めた。夢の中で長いことユキと一緒にいた気がする。
多分に怒られていることがあるが、今日の夢の後半は優しかった。むしろサナが慰めていたようにも感じる。
(ほんと変な夢が続くな…)そんなに嫌な感じはしないのだが、ここまで続くとすこし不気味だ。
ユキはもう死んでいて、実はお化けだったりして…なんてことを考えて、サナは笑ってしまった。
ベッドを出ようと体を起こすと、若干筋肉痛になっていた。ん?と思ったが、そういえばこれは真田のせいだとサナは微笑む。
彼は朝早くここを出て行ったためベッドがとても広く感じた。昨日は、ベッドの領土権の話でののしりあっていたのがすごく楽しかった。
寝室から出て、真田にセレブかよ!と絶賛された広いリビングにいく。いつもの見慣れた部屋だが、今日はなぜか広く感じられる。
サナは(なんでかな…)とつぶやきながら、キッチンに行きミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出すとコップに注ぐ。ふと見るとシンクに、洗い忘れた赤のコーヒーカップが2個並んでいる。
時計を見ると、午後の3時だった。
「今日は行きたくないなぁ…」とサナはつぶやく。いつも特に燃えて店にいくことはないが、特に今日は行きたくない気がする。
そういえば今日は携帯を見ていない。サナはすこし慌てて、リビングの机の上に投げ捨てたように置き去りになったスマホを見た。
お客さんからのLINEとメールが数知れずきている。(そうかぁ…昨日の夜からみてないんだっけ…)サナはそう感じとりあえずLINEを見る。可及的速やかに返事をしないとまずいのから送る。
今日の出勤の確認メール「うん!今日は出てるよ、早く逢いたいよ!マキ待ってるよ」(店のホームページでみろよ!)、
今日の同伴のお誘い「ごめんね…マキちゃん今日寝坊しちゃって…来週いこ」(とりあえず今日は無理だろ!わかってくれ!)、
アフターのお誘い「ごめんね…今日は女の子のお友達と飲む約束があるの。今度絶対いこ」(だからアフター行きたかったら最低8回は指名してくれ!)
LINEは手軽なのでサクサク進む。問題はメールだ。サナはソファに座りなおして気合をいれる。
メールを一つづつ見ていく。相変わらず重いお客さんからのメールはひたすら長い。この手のお客さんは、返事の文章量も同じくらい長くしないと納得しない。やばそうなメールからサクサクかたづけようと、メールを確認をつづけるていると、一つだけ妙に短いメールがあった。
「今日は何時に終わる?早く終わるなら飲みいこうよ」
真田からだった。(短かっ!)とサナは思わず笑ってしまった。すぐに返事をする。
「早く終わらなくても、会いにきて。」
と、送ると真田は暇なのかすぐ返事がくる。
「11時までに終わることを望む!」
「無理だわ!!せめて12時!」
「それで手を打とう!」
昨日というか今朝までここにいた真田がまた会いにくる。(もう、急なんだから…)サナはちょっと微笑みながら、キッチンのコーヒーカップを洗うことにした。
(メールは店に行く電車の中で打つことにしよう)サナはそう心に決めた。




