マリコの話
「でも、そのユキっていう娘なんだけど、他の人からも聞いたことあるかも」
橘が考え事をしていると、マリコはそう言って話を進める。長い髪をしきりに触りながら
「その人は、ユキって娘は突然いなくなったっていってたなぁ。当時店のナンバー1だったはずだから、おかしいよねって言ってた」
「ナンバー1 ?」
「うん。店の単月売り上げ記録持ってるんだからそれは間違えないでしょ?」
「確かにね…あ、マリコさんは、こういう噂知ってる?」
橘はここからマリコの話を聞いても憶測しかでてこないことを悟り、質問をかえた。そうTOTOの噂だ。
詳しいことはわからないが、TOTOというバーに行き、1ヶ月間言うことを聞くと大金が手に入るというあの噂だ。
マリコはその話をきくと、手をポンっと叩き
「知ってる知ってる!都市伝説的な奴でしょ?1年前くらいに結構この業界じゃ話題になってたから。」
「マリコさんの聞いた話はどんなだったん?」
「えっとねぇ…」
マリコはちょっと小声になる。そういえば、真田はマキやリカもこの話を店でするとき小声になったと言っていた。
どういうことだろう?橘は少し疑問に感じた。
「それこそ、タチバナさんの話と似た様なもんだけどね。ただ、私の友達の友達がね、その話に乗っかっちゃったの」
橘は「え?」と声をあげた。その子はユキなんじゃないかと思ったがマリコは続ける。
「私の友達…景子って言うんだけど、その景子の友達で、ミドリって娘がいたの。ある日ミドリは、急に景子に電話してきて大金が手にはいるかもって…って言ってたんだって。ミドリはガールズバーで働いていたみたいなんだけど頻繁にきてたやさしそうなおじいさんに、飲みに誘われたてついていったら、その噂のバーだったみたい。で、ミドリはなんか契約みたいのをさせられたらしいけど、」
橘は、そのやさしそうなおじいさんというのは、TOTOだと確信した。彼は、お酒を飲むのを忘れて
「それはまたすごいな。リアルやわ。で、そのあとミドリって娘はどうなったん?」と橘は質問した。マリコは少し寂しそうな顔になって
「結局、だからってミドリの生活は変わらなかったみたい。いつもと変わらなかったけど…ある日急にいなくなったらしいの」
やはり、と橘は思った。つまりユキと同じだ。当事者がいなくなるのでこの話は都市伝説的になってしまうのだろう。
「しかもね…しばらくしたら、私の友達…景子も行方不明になっちゃって…」
その話はきいた橘は驚いた。




