家に帰ろう
3人は結局、朝の3時まで高田馬場「コットンクラブ」にいた。
サナは飲んでいたが、途中から量をかなりセーブしていたため店を出る頃には少し酔いがさめている。
「じゃ、私はタクシーで帰るから」
小田はそういうと、店の前でタクシーを拾うとさっさと帰ってしまった。
ポツンと真田とサナは店の前に立っている。高田馬場の始発までには、まだ時間が結構あった。
小田がいたので、実は真田はあまりサナと話していない。なんか急に2人きりに戻ると真田はなんか照れくさかった。
サナは、小田が乗って行ったタクシーが遠ざかるのをなんとなく見ていた。
真田はその様子をぼうっと眺めている。
サナは一人の時は、真田の知っているサナに戻っている。
一言も話してこないが、雰囲気でわかる。
「しんちゃん、私たちも帰ろ。私たちの家に。」
サナはふとそう呟いた。真田はつられて「あ、ああ」と返事をした。が、一瞬で「えっ?」と問い返した。
真田は今朝の時点で、サナと逢わないと決めていた。いろいろあってまた会ってしまったが、小田との会話の中でまた距離を感じてしまった。
だが、サナは真田が離れようとするたび、引き戻そうとしてくる。意図してやっているのか天然なのかはわからないが…。それともまた心の中を見透かされてしまったのだろうか…
サナは真田の手をにぎる。腕を組まれることは多くあるが、手をサナの方から繋いでくることは少ない。
サナは手を繋ぐのは苦手と前に言っていたのを思い出す。
「ねぇねぇ、私の家に泊まるの2回目だね」
「あ、そうだね」
サナは、なぜ真田が急に「会うのをやめる」と言ったのか…を聞いてこなかった。それが真田には不思議だったが、サナはそんなことが最初からなかったように、真田に接してくる。この娘はいったい何がしたいんだろと思うことがある。
ちなみに日記の中で「さなやん」は、ユキはただ寂しかったので自分といるのだ、という言葉があった。サナもそうなのだろうか。なぜ、サナが自分と一緒にいたがるのかわからなかった。
「しんちゃん、サナがフランスに行くまで、できるだけ一緒にいようね。」
サナは、家に向かうの途中で真田にそう話しかけた。それは、TOTOの秘密が分かっても終わりではない、ということを意味してるのか…だが素直に真田は嬉しいと思った。
男は幾つになっても女には勝てないんだな…真田はその事実に苦笑した。まさか20近くも年下の女性に手を引かれ、慰められるとは思いもしなかった。サナは時折真田に微笑みを浮かべている。まるで全部真田の気持ちがわかっているように思えた。
真田は子供時に戻ったような感覚だった。
あの頃は、二十歳の女の子はとても大人に見えた。そんな大人の女の子に導かれているような感覚だ。
男はいつまでも子供…
そんな言葉が真田の頭をよぎった…




