戸田さん
船の中は、すべてのフロアが分割したレストランになっていて真田が選んだのはフレンチのレストランだった。船に乗船し、3階へとあがる。内装はまるでお城のようになっていて、当然ながら周りはカップルだらけだった。
サナは初めてだったらしく、見た目にも楽しそうだ。
各々が丸テーブルで、席は当然満席だった。
はじめに簡単なクルーズの説明があり、その後シャンパンが配られた。
サナはシャンパンが好きらしく、美味しい美味しいと何度もつぶやいている。
「そういえば、しんちゃんの元カノの話しききたい。橘さんが話してくれたの」
真田は思わず、シャンパンを吹きそうになる。いつもは口が固いくせに…と若干ムッとしたが、話してしまったのならしょうがない。
「ああ、でも聞きたい?」
「う〜ん、聞きたくないけど聞いてみたい」
サナはまた微妙な言葉で返してきた。真田はちょっと思い返しながらゆっくりと話し出した。
「出会いはさ、また微妙なんだけど、モバゲーって知ってるだろ?あれで知り合ったのさ。」
「おお〜、ありがちね。」
「ははは。最初さ、ほんと生意気っていうか…変なやつでさ。でもメールしてて楽しかったのさ。それでお互い飲みが好きだから、飲みに行くことになったんだよ」
「うんうん、それでそれで?」
サナはなぜかすごく楽しそうだった。やっぱり恋愛話しはみんな女の子はすきなんだろうか?
「東京駅で待ち合わせしたんだけど…その場所にいったらさ、女の子が3人いるわけ。一人は、結構なおばさん、一人はちょっとぽっちゃりした若い女の子、一人は女優さんですか?みたいな人でね。それで、ぽっちゃりの娘かなって思ったのさ」
「ほうほう、なんで?」
「歳は俺よりちょうど12歳下だったからね。しかも、私、可愛くないから写真は送れないのって言ってたから。あ、でもそのぽっちゃりの子も決して可愛くないって感じではなかったけどね」
真田は、とりあえずシャンパンをぐいぐい飲みながら続ける。とても酔ってないと話せない。
「で、電話をかけたの。そしたらさ…意外や意外、その女優さんみたいな女の子が電話をとって、もしもしというわけ。もう帰ろうかと思ったよ!」
「なんで?いいじゃん!大当たり」
「あのな…その時は今より自分に自身がなくてね。でも結局悪いからと思って…」
真田はその時を振り返りながら、淡々と話した。まだ未練があるなどというかっこ悪いことをサナに知られたくなかった。
「その娘って、誰かに似てるの?写真は?」
「戸田恵梨香!の若い頃かな。流星の絆のころの。写真は…ない」
真田はそういって再びシャンパンを飲む。といってもほとんど残ってないが。
「げ、すごい可愛いじゃん。見たかったなぁ…戸田さんかぁ…」
サナはこれ以降、真田の元カノのことを戸田さんと呼ぶことにしたらしかった。
「しんちゃんも、歳下が好きなんだね」
「いや、たまたまだ。でもさっちゃんほど歳下はいないぞ」
「18違うもんね、というか私、しんちゃんが18の時に生まれたのかぁ、うける!」
サナはそう言って笑い出す。確かにこれは…犯罪だと真田も思う。サナは平成生まれだ。それを思うとこんな娘にキスしたなどと誰にも言えないと真田も思わず笑ってしまった。
「でもさぁ、私、しんちゃんに会えてほんとに良かったって思うの。最近ね、ちょっと前向きになれることが多くて、それが嬉しいの。それに…しんちゃんと会っているときは寂しくなくなるからね」
サナはここ最近は、今まで話さなかったお店の子たちとも段々打ち解けてきたという。
だから、ほんとに感謝してる、サナはそう笑顔で微笑んだ。
その時、急に電気が消えて「ハッピーバースディ」の音楽とともに、ろうそくをバチバチさせたケーキが席にやってきた。
真田が仕込んだベタではあるが、サプライズだった。




