真田の考え
次の日、真田は品川にいた。ちょうど午後の1時だ。
無論、サナとの待ち合わせだ。高輪口という海の反対側の出口改札で、黒のハーフコートとズボン、それに白いマフラーという出立ちだ。真田はあまり服に色を使うことが好きではなかった。一番合わせやすいというのが理由だが。
昨晩は、偶然見つけた「さなやんの日記」を朝の4時ごろまで読んでいた。真田は、それを何度も読み返し、さなやんという男の思考を自分なりに解釈していた。
彼は、ユキという女の子の嘘に途中で気づいていた。もちろん、TOTOの陰謀については最後まで知らなかったというか、むしろ陰謀については興味がないように思えた。
驚いたのは、彼とユキの行動を、サナが正確になぞっていることだった。
会った日、いった場所、話している内容…ほとんどが似通っていた。
違っていたのは、サナが攫われた日のことだけだった。あれは確かに不測の事態なのでどうしようもないが…
だがそれについて真田は疑問に思っていた。一番驚いたのは、サナと初めてのデートで行った場所。日記を読んでいない真田が、自分で選んだ映画館、喫茶店、レストラン全てが一緒だったことだ。こんなこと普通あるだろうか…
しかも、初めてサナとキスした場所…高田馬場のことなど、時間や途中経過まで全部一緒だった。
確かにキスしてきたのは、日記を読んでるサナの方だ。だがあの泥酔状態で日記のとおりにしようと、むしろできるだろうか…
あとひとつ日記を読んでいて気づいたことだ。
それは、サナと一緒に過ごせる日々が少なくなっていることだ。日記がなぜ3/13で終わっているかは謎だが、もしかしたらそれが、さなやんにとってユキに会えた最後の日かもしれないとも思える。
サナはTOTOと誕生日の後に会う約束をしている。多分、謎の契約とやらをするのだろう。そうなると、もはやサナが求めていた答えはわかることになる。
すると一ヶ月にわたって一緒に行動したきた、サナと真田は会う目的を失う。
つまり、今日がサナと最後に会う機会になるかもしれないと真田は考えていた。
彼は突然やってきたかもしれない最後の日に、サナへの答えを出せなかった。
だがそれは今なら、お互い傷つかずに落ち込むことなく笑顔で普通に道が分かれてしまった友達のように「さよなら」できることを意味している。
いつも一緒にいたような気もするが、ほとんど会ってないようにも思える。
この仄かな気持ちのまま、分かれ道にきてしまったのかもしれない。
「さなやんの日記」によると、彼も何度もユキと会うのをやめようとしている。理由はいろいろ書いてあったが、辛かったの一言につきると真田は感じていた。彼はユキと一緒にいることによって、どんどん恋愛感情は膨らんでいった。だがその想いをユキに伝えようとしたことはなかったようだった。その想いを胸にかくしたまま消えようとしていた。日記には、最後までユキに愛されていると感じたことはなかったようだ。
「今日で、サナと会うのは最後にしよう…」
真田は今日でサナとの短い冒険に終止符を打とう、真田はそう思い立った。遅かえ早かれ、TOTOとの契約がうまくいけば会う事もなくなる。例えそうでなくても彼女はフランスへ旅立つことが決まっている。つまり、近いうちに必ず別れはくるのだ。
それよりも、真田はユキを探そうと思っていた。
時計を渡すという、リカとの約束もあるが何より「さなやんの日記」を読んで、ユキに会ってみたくなったのだ。そして、この日記を見せてあげたい…そう思っていた。




