サナの逃げ足
「ユキちゃんて、可愛かった?」
サナは、TOTOの話しに割り込むように聞いた。TOTOは、ゆっくりとうなづき
「まぁ贔屓目もあるかもしれがのぉ。全ての女の子の中でも一番可愛かったの。」
「へぇ、似てる有名人とかいる?というか写真ないの?」
サナは遠慮なしに聴き始める。多分TOTOは契約の話をしたいかと思うが自分が知りたいことをまず解決してからだと思っていた。
「ふむ。それがのぉ…年をとったせいか、もう顔を忘れてしまったの…残念だが次々と契約の女の子がくるでの。写真はない。あったら大問題じゃ」
「そんな…」
サナは、それが嘘なのか本当なのか判断がつかなかった。TOTOは、美しいグラスを拭きながら遠くをみている。
サナはいつの間にか緊張がとけていた。普通に考えればかなり普通じゃない状況だが、なぜかわからないがいまは心は落ち着いていた。
「で、彼女はなんで、ほかの契約した女の子と違う結末を迎えたの?」
普通に質問が頭に出てくる。完全に落ち着いた証拠だった。TOTOは、静かに磨いていたグラスを置くと再び話し始める。
「ほほほ、それは、契約のお話をすましてからじゃないとの」
「契約か…ひとつ聞いてもいい?」
サナはいよいよ契約の話を聞く時が迫っているのを感じていた。残念ながら契約の詳しい話は、ユキの日記にも書かれていない。サナは選択に迷っていた。
「その契約内容をきいてから、やっぱり辞めるっていう選択はあるの?」
TOTOはこの質問には驚いている様子だった。「うーん」と唸ったが
「あまりおすすめはしない…とだけ言っておこうかのぉ」
と、目をぎょろりとして答えた。おお、こえーなとサナは思った。これはその選択はないと言っているのと同じだ。
この時にサナの心は決まった。
「まずは、すまんが携帯を出してくれるかの?」
サナは?と思ったが、携帯を見せるくらいどうということはない。とりあえず仕事でつかっているお客さん用の携帯を差し出した。だがTOTOはその携帯には手をつけないで
「サナさんや。すまんが3台とも全部出してくれるかの…」
「!!?」
サナはその言葉に底知れぬ恐怖を感じた。なんで知ってるの…サナはビビりながらも3台全ての携帯を出した。2台のスマホと1台のガラケーを机の上に並べた。
するとTOTOは満足そうに笑みを浮かべながら、1台、1台、携帯を触っている。その光景は若干ホラーだ。しかし、その後はすぐに携帯すべてをサナに返した。
「とりあえず、契約書をもってくるでの」
満足したのかTOTOはそう言い残すと、一度奥に入っていった。が、この時をサナは待っていた。素早く手帳を取り出し、紙を一枚破ってそこに
「誕生日が終わったらまた来ます」
とだけ書き残し、エレベーターへ走り出した。運良くエレベーターは4階に止まっていた。すばやく乗り込むと1Fのボタンを押す。エレベーターのドアが閉まりかけた時、TOTOは戻ってきたが特に何もいわずサナを見送っていた。
なぜ1Fを選んだのかわからなかったが無我夢中だったとしか説明がしようがない。




