漫画喫茶
リカと会った日、結局真田のもとに、サナからはメールも電話もこなかった。
普通ならば時間も時間だし、特に不思議なことはないのだがサナがこんなにも連絡を返してこないのは、バレンタイン以降初めてだった。
次の日になってもメールの音は鳴らず、真田は本気でサナになんかあったのかと思ったが、午後になってとぼけたようなメールが来ていた。
「ごめんごめん。昨日はすぐ寝てしまったのー」
真田は思わず「おい!」っと突っ込んだが深く聞くのは止めておいた。帰りの電車なり送りの車の中でも確認できたはずだし、だいたい超夜型のサナが急に寝るなんてありえないと思うが、深く追求するとこっちにとばっちりがきそうなので止めたのだ。
真田は、昨日のリカから聞いた話しを簡潔に分かりやすくまとめてメールしたのだが意外にもサナの反応は薄かった。
(こいつ…もう飽きたのか)とも思ったがそういう訳ではないらしい。
そこの部分をのらりくらりとかわされたが、要は今日の夜に詳しく聞くから店が終わったら今夜も会いにこいということだった。
サナの仕事が終わるのは夜の1時〜2時ぐらいだから、真田は相当待たなくてはならない。文句のひとつも言ってやろうと苦情のメールを送ると
「さなやんは、やってたのにな〜。ユキちゃんはいいなぁ〜」
と、ふざけたメールが帰ってきた。そもそものスタート位置がちがうだろと真田は思ったが、つい先日協力すると言った手前、逃げるわけにもいかない。
「それに、しんちゃんが知りたがっていたこと今日、明かされるかもよ〜」
と、思わせぶりなメールも入ってきていた。サナが知りたがっている謎が、いつの間にか、真田が知りたがっている謎 と置き換わっていると思ったりもしたがこいつの場合しょうがないと諦めた。
5日ほど前、ロマンチックよろしくキスした2人だったが、今となってはそのキラキラした関係は吹き飛び、悪口飛び交う友達とかしていた。真田はそのことに関して残念なようなホッとしたような微妙な感覚だった。
勿論、またチャンスがあればとも思うが当分その願いは遠く遠く儚い夢のごときだ。こういうのは期待すればするほど、遠のいていくことは経験上わかっていたので真田は今日は、友達感覚で出かけることにした。
真田が仕事が終わったのは夜の9時ごろだった。真田にしては早い時間だ。
「これは、また暇だな…。そういえば、さなやんは…漫画喫茶か!」
真田は、リカからもらったメールで思い出した。池袋なら漫画喫茶はくさるほどあるだろうと、特に調べもせず池袋に向かう。
会社最寄りの神田から、山手線に乗って池袋に向かう。ちょうど山手線の対角線上にある池袋は、20分ほどかかる。
銀座、お茶の水管内で仕事をすることが多い真田にとってすこし長く感じられる距離だった。
この時間、神田から品川、渋谷方面は空いているが、逆に池袋方面へ行く電車はかなり混んでいる。上野経由で帰宅するサラリーマンが多いからだ。
真田も混み合った車内で、スマホのニュースを見ながら池袋までの時間を過ごした。
「なんか池袋にいく回数が異様に増えたな…」
池袋につき、改札をでると真田はそう呟いた。たまにきていた頃は、東口はどちらだったか必ず迷っていたが今は改札から出た時点ですぐにわかる。人並みを抜けながらサンシャイン通りの方へ向かう。いつもの地上に出るエスカレーターを上り、サンシャイン通り入り口にある喫煙所でとりあえずタバコを吸った。(待ち合わせ場所はどうしようか…)真田は、HANDSの前はもう嫌だった。そこで思いついたのが、前回偶然サナと会ったマクドナルドにした。あそこなら店から離れているし、サナも場所は分かっている。
となると、その近くの喫茶店にしようと思った。真田は漫画喫茶にあまり行ったことがなく、できれば喫茶店で本でも読んで待ちたいと思っていた。
真田は喫煙所から、信号を渡りマクドナルドとふくろう交番へ向かう。わずか50mほどの距離だ。やはりここへくるとマクドナルドのある建物の4階をみてしまう。しかし、4階部分は電気が消えていて外からはなにもわからなかった。とりあえず真田はここ付近で喫茶店を探した。だがどこも夜の12時付近で閉店というお店ばかりだった。飲み屋もあるがなんとなくここで一人で飲むのは憚かられ、仕方なく真田は漫画喫茶を探すことにした。しばらく付近を散策していたが、しグリーン通りから1本中に入った場所に、綺麗そうな漫画喫茶を見つけた。
その漫画喫茶はビルの5階にある。真田は、受付近くにある機械で会員登録を済ませ、久しぶりの漫画喫茶に入る。
部屋に入ると、サナにメールをする。
「池袋についたよー」
と一言だけだ。だが当分メールは返ってこない。接客中のサナは偶然待機室で暇を持て余してない限りは、仕事中はメールを返してこなかった。
「ふう…」真田は大きくため息をつく。この時間、サナは真田の知らない男と店であっていて話している。場合によってはイチャイチャしているわけだが真田はそのことを考えると不思議な感覚に陥る。彼女の仕事であり、サナは自分の彼女でもないので当然文句を言う筋合いはない。友達感覚ではあるはずなのに、彼はそのことに対してすごく嫌な感じがした。女友達に彼氏ができて若干寂しい感覚に陥るということはよくあるが、それとは別のなにかモヤモヤした感だ。それがなんなのか真田にはわからなかった。
そういえば、ユキの日記にでてくる「さなやん」という人物も、ユキの彼氏というわけではないとサナもリカも言っていた。
彼はどんな気持ちで、ユキを待っていたのだろうか。
もしかしたら彼もこの漫画喫茶で、ユキの仕事を終わるのを待っていたのかもしれない。
真田は、そんなことを考えながらいつの間にか寝てしまった。




