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Subjects Runes【完全完結版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第1部アージェント王国編 第1章 超速爆炎の新入生

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第30話 決戦! アゾートvsネオン

 準決勝には挑めなかったが、5~8位決定戦の初戦を拾った俺とネオン。


 次はいよいよ5位をかけての俺とネオンの対戦だ。


 そしてこれが俺にとっての本番、絶対に負けられない戦いがまさにこの試合。


 7位決定戦も同時に始まり、その後3位決定戦、本日のハイライトである決勝戦カインvsダンと続く。


 パワー型同士の戦いだが、ダンには超高速知覚解放によるスピードも加わっている。


 俺の見立てではほぼ互角の戦いになると予想しており、全生徒にとっても期待のカードなのだ。


「ネオンのやつをとっとと片付けて、決勝戦を観戦しに行くぞ」



 だがこれが盛大なフラグとなり、俺とネオンの戦いは試合開始から10分以上が過ぎてもまだ勝負が着いていなかった。


 ネオンのやつが潔く負けないからだ。


 俺たちの試合がなかなか終わらないため後続の試合も次々開始し、決勝も含めてすべての試合は終わってしまったのに、俺たちはまだ戦っている。


 結果、1年生全生徒が俺たちの試合を観戦している。



「何なんだこいつらは・・・」


「動きが速すぎて目が全然追いつかない」


「俺、放課後に二人が模擬戦してるとこ見たことあるけど、あの時よりもさらに速くなってるわ」


 互いに打ち出す高速の剣戟を紙一重でかわし続ける俺たち二人。


 二人とも絶対に負けられないという強い気持ちが集中力を高め、ついにゾーン状態にまで達してしまった。


 見える、見えるぞネオンの動きが。


 次は右か!


 ネオンのわずかな体重移動から次の攻撃を先読みする。


 しかしそれはネオンも同じ。


 俺の動きを完全に読み切った動きに、この膠着状態を打破するきっかけが全くつかめない。



 いったい何手先まで読めばコイツに勝てる。


 おそらくネオンもそう考えてるはず。


 対局盤を挟んだ棋士のように互いの思考を読み合う俺たち二人。


 読み切った上に繰り出した一撃は、空しく空を斬っていく。


 教官たちが一か所に集まり、そろそろ時間切れで判定にしようか協議を始めたその時、突然試合が動いた。


 それは俺が横一線に打ち込もうとして、ほんの一瞬だけ躊躇してしまったのだ。


 すぐさま少し剣の軌道を変えたのだが、そのわずかな隙を見逃さず、ネオンの剣が俺を捉えて勝負がついた。



「ま、負けた・・・」


 両手と膝を床につけて項垂れる俺と、勝ったのになぜか真っ赤な顔のネオン。


 突然の幕切れに一瞬シンと静まり返り、次の瞬間、会場は大歓声に包まれた。


 ワアアアアアアアッ!


「すごい試合だったな」


「実力伯仲とはまさにこの事だろう」


「判定でも勝負がつけられなかったのではないのか」


 みんな口々に試合の感想を言い合って、あたりは興奮のるつぼと化した。


 当の本人たち以外は。



「お疲れ様」


「見ごたえのあるすごい試合だったな」


 みんな俺とネオンの奮闘を称えたが、


「しかし最後の決着のシーンは予想外というか、いったい何が起こったんだ?」


 カインが仕切りに首にひねり、何が勝負の決め手だったのか誰にも理解できないでいた。




 実はこの模擬戦にはいくつかの反則行為が定められており、急所攻撃もその一つ。


 そう。


 俺があのまま剣を振り抜くと、ネオンの胸に攻撃が当たる可能性があった。


 ネオンは男子生徒だと思われているため、もちろん審判から反則行為をとられることはない。


 俺の頭はそれを織り込んだ上で、数手先まで読みきった完璧な攻撃コンボを放つはずだった。


 しかし俺の身体は勝手にネオンを女の子と認識してしまって、とっさに剣を止めてしまったのだ。


 頭では分かっているのに、身体がネオンを女の子として認識してしまった自分を殺してやりたい。


 こんなのがネオンに負けた理由になるのが、あまりにも屈辱的すぎる。


「ああああああああああ!」


 絶対に言えるわけないし、認めたくもない。


「くそおおおおおおおっ!」






 アゾートと同じくゾーン状態に入っていた私も、彼の攻撃の数手先まで読みきっていた。


 だから自分の胸元を狙ってくる攻撃も当然のものとして読んでいたのに、まさかあそこでアゾートが躊躇するなんて。


 試合に勝った瞬間、喜びよりも勝因が恥ずかしくて早くコートから立ち去りたかった。


 でも今は違う。


 無意識にでもアゾートが自分を女性として扱ってくれたことが、とても嬉しかった。


 アゾートのばか。


「なんであそこで一瞬剣をとめたんだ。理由を教えろよ!」


 ダンとカインに両側から肩を組まれて、それでも決して理由を話そうとしないアゾートを見て、私はそっと自分の胸に手を当て、頬を赤く染めていた。




剣術実技個人戦結果発表


1位 A組カイン

2位 B組ダン

5位 B組ネオン

6位 B組アゾート

22位 B組マール


 ネオンファンクラブも4人が30位以内に入り、残りのB組のメンバーも下位コースの上位を占める結果となった。





 さて、本来ならこれで今日のテストは終わりのはずだが、俺たちにとってはこれからが本番だ。


 いよいよ、上級クラスとのクラス対抗戦総力戦が始まる。




 シュミット先生から試合の準備ができたことを告げられると、俺たちはグラウンドに向かった。


 前にグラウンドを使用していた2年生騎士クラスの魔法団体戦は既に終了しており、事前の予想通りセレーネが優勝した。


 圧勝だったらしい。


 こうなったら是非、フリュオリーネにも勝ってもらいたい。


 そして上級クラスのヤツラに俺たち騎士クラスの実力を知らしめてほしい。


 その前にまずは俺たちだ。


 俺たちの手で上級クラスの横暴を正すのだ。


 これから行う上級クラスとのクラス対抗総力戦に、是が非でも勝たなければならない。



 闘技大会を通じて、B組の実力が予想以上に伸びていることは確認できた。


 特にネオンファンクラブの女子生徒たちは、確実に戦力になる。本当に嬉しい誤算だ。


 モテない同盟たちも力はつけている。


 カインがA組なので出られないのは残念だが、ダンがいるのは本当に心強い。


 マールに至っては、魔力攻撃だけでなく剣術まで期待できるオールラウンダーになった。


 そして俺とネオンも、さっきの試合がいい準備運動になった。


 身体の暖まったし、感覚も鋭敏な状態を維持できている。


 これ以上ない、完璧だ。





 グラウンドには着くと、既に上級クラスのメンバーが揃っていた。


 彼らの横に控えている年配の女性が、魔法講師ベラ・シャウプ。


 魔法棟使用禁止を学園として受理してしまった諸悪の元凶。


 いかにも上位貴族らしい酷薄とした笑みを俺たちに向けている。




 俺たちは上級クラスの前に立ち並び、正面をまっすぐ見据えて相手を睨みつける。


 闘志をみなぎらせながら、開始の合図を静かに待つのだった。

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