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Subjects Runes【完全完結版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第1部アージェント王国編 第1章 超速爆炎の新入生

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第29話 剣の達人・カインの実力

 闘技大会二日目。


 第一試合は準々決勝、俺vsカイン、ネオンvsダンを含む4試合が同時に開始される。


 カインは騎士クラス暫定1位であり、俺の実力がカインにどの程度通用するのか胸を借りることにしよう。


 まずは様子見で軽く剣をあわせる。


 ガキッ!!


「ぐっ・・・」


 重い。


 軽く剣をあわせただけなのに、カインの剣は想像以上に重かった。


 まともに受けていてはダメだ。できるだけ回避して相手のミスを狙う作戦でいくか。


 そう考えた瞬間、カインが真剣なまなざしを俺に向けて叫んだ。


「アゾート、知覚魔法を使え!!」




 俺もネオンも、闘技大会ではまだ一度も知覚魔法を使っていない。


 純粋に自分の剣術だけで勝負してみたかったからだ。


 しかしカインと最初の一太刀を交わしたことで分かったことがある。


 カインのパワーと防御力は段違いだ。


 おそらくまともに一撃を食らえばそれが致命傷となり、俺の攻撃はカインには全く通らないだろう。


 普通にやっていては絶対に勝てない。



「俺は全力のお前と戦いたいんだ!」


 ・・・そうだな。


 俺もカインとは、持てる力の全てを尽くして戦ってみたい。


 ならばもう答えは決まっている!



  【無属性固有魔法・超高速知覚解放】



「そうこなくっちゃな。ならこちらも全力で勝負する。行くぞっ!」


 獰猛な笑みを浮かべたカインの剣を構え直す仕草が、スローモーションのようにゆっくりに見えている。


 こちらから行くぞ!



 俺は速攻でカインに連撃を繰り出した。


 が、これをすべて剣で防ぎ切られる。


 打ち込む速度は明らかにこちらの方が速いのだが、俺が打ち込もうとするポイントがあらかじめ分かっているかのように、カインの防御行動が全く無駄のない最適ルートを描いているのだ。


 ・・・そんなバカな。



 今度はフェイントを入れつつ、高速の剣を叩き込んでやる。


 カインの防御運動をかき乱して隙を作る作戦だ。


 だが俺のフェイントはそのことごとくを見抜かれ、つられる様子すらない。


 なんなんだ、コイツは・・・。



 今度はカインが攻撃を仕掛けてくる。


 体の動き自体はスローモーションに見えるのに、繰り出される剣は恐ろしく速い。


 コンマの差で辛うじてこれをかわす。


 一体どうなっているんだ?



 カインは身体の軸がしっかりしていて、よく見ると綺麗な円を描く無駄のない体さばき。


 そこから繰り出されるのは、身体全体が円運動の重ね合わせで滑らかに連動し、その回転モーメントが余すところなく伝達された超高速の一太刀。


 その剛剣の切っ先がいま、俺の脳天を襲う。


 これぞまさに必殺の剣!


 背筋がゾッとした。


 超高速の知覚を得たからこそ分かってしまった、カインの本当の実力。


 剣の達人。


 長い修行の末にようやく到達しうる完成された技。


 なんでこんなのが、ボロンブラーク騎士学園の1年生にいるんだ。




 それからは運に助けられながらも、俺はカインの猛攻撃をギリギリで凌いでいく。


 が、回避するにも限界がある。


 このままよけ続けても体力が消耗するだけで、全く勝ち目はない。


 ジリ貧なのだ。


 受け身ではまるで勝てないことを悟った俺は、一か八か攻勢に転じる機会を作るため、僅かに生じたカインの防御の隙を突く。


 ・・・いやこれは隙と見せかけたフェイントだ。


 俺はカインの仕掛けた罠だと気付き、その部位への攻撃を逆にフェイントとして使って見せた。


 俺は体を右にスライドさせつつ、ワンテンポ遅らせて僅かに空いたカインの左脇を狙う。


 (かかったな、アゾート)


 カインはアゾートの動きを予想していたかのように攻撃を受けて見せた。


 しまった!


 最初の隙がフェイントだと気付いたまではよかったが、それを逆手にとろうと右側に跳ね動いた動作自体が、カインに誘導されたものだった。


 格闘センスがまるで違う。


 そこからのカインの3連撃により、俺は防御姿勢を崩されあえなく降参した。


 完敗だった。




「負けた負けた。カインには全く勝てる気しねえわ」


「当たり前だ。俺は魔法が使えないんだから、剣でお前に負けてたら何にもならないじゃないか」


「そうは言っても、もう少し勝負になるかと思ったのにな。くそっ」


「魔法ありなら、俺たちいい勝負になるかもな。しかし例の知覚魔法は本当にすごいな。俺の攻撃が全く当たる気がしなかったわ」


「逆だよ逆。超高速の知覚を得て初めて、カインの本当の恐ろしさが理解できたよ」


「とりあえず、ネオンとダンの試合がどうなったか見に行こうぜ」


 試合を終えた俺達は、早々にコートから出るとダンとネオンのコートへと向かった。




 試合はまだ続いていた。


 二人がすごい勢いで剣を繰り出しているのだが、互いにそれを回避して剣が空を切っている。


 ネオンも知覚魔法ありでやってやがるが、こいつら戦闘民族かよ。


「なんだこの戦いは」


「速すぎる」


 闘技大会1日目では見ることのなかった超高速の攻防戦。


 ネオンとダンの戦いはまるで隣のコートの試合を倍速再生したようなもの。


 観衆も完全に呆気にとられていた。


「知覚魔法を使うと、剣術はここまでレベルアップするのか」


 カインが呆れかえってため息をつく。


 あれからダンも少しだけ知覚魔法が使えるようになったのだが、元が強かったからかとんでもない速さに仕上がっている。


「カインも使えたらよかったのにな。そうなると化け物級の強さになるけどな」


「ああ、実に残念だ」


 そういって笑ったカインは、全然残念そうな顔をしていなかった。




 カインと話しているうちにネオンの剣が空を舞い、突然勝負が決した。


 観客が状況に着いていけてず呆然としたまま、試合の済んだ二人が俺たちのほうにやってきた。


「もう少しやれると思ったが、負けたよ。パワーが違う」


「いやネオンのスピードはやっぱり半端なかったな」


「どっちも速すぎて、周りがドン引きしてたぞ」


「そういえばアゾートとカインはどっちが勝った」


「カインだよ。勝負にならなかったわ」


「へー。じゃー僕とアゾートは5位争いで勝負だな」



 そこへマールがこちらに走ってきた。


「勝ったよアゾート!」


 昨日の疲れが完全に癒えたからか、二日目第一試合にしてマールは快勝。30位以内の確保を確実にした。


「やったなマール!」


「えへへ」


 マールが頭を差し出してきたので思わず撫でたら、ネオンに足を踏み抜かれた。


 これ地味に痛いんだぞ。


 ネオンファンクラブのみんなも、順調に勝っているようだ。

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