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『魔物を煮込むな! 外伝 ~規格外の天才料理人に振り回される人々のごちそう回想録~』  作者: にゃん


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魔術師団の暴走

魔術師団本部は、朝から異様な熱気に包まれていた。


「おい、昨日の団子……まだ残ってないのか?」


「俺なんて、あれ食べてから魔力の流れがスムーズでさ……」


「今日の演習、絶対に自己最高記録出るぞ!」



若手魔術師たちが、まるで恋でもしたかのように浮き足立っている。


その中心にいるのは――


筆頭魔術師カシアン。


彼は、眉間に皺を寄せながら、


魔力測定器の水晶を叩いていた。




「……おかしい。


 昨日から魔力の揺らぎがほとんどない。


 全員の数値が安定しすぎている……」


副官が苦笑しながら言う。


「カシアン様、それは良いことでは……?」


「良すぎるのだ。


 魔術師団は、もっとこう……不安定であるべきだ」


「(それはどうなんだ……?)」




__ 若手魔術師たちの“暴走”__


そこへ、若手魔術師たちが雪崩れ込んできた。


「カシアン様! 例の料理人はどこですか!」


「リゼットさんに会わせてください!」


「今日もあの団子を……!」


カシアンは、こめかみを押さえた。


「……お前たちは、魔術師か。


 それとも食いしん坊か」


「魔術師です!」


「でも団子が欲しいです!」


「リゼットさんが作ったやつじゃないとダメなんです!」


「……はぁ」


カシアンは深いため息をついた。


「リゼットは、今は市場にいるはずだ。


 だが――」


その瞬間、若手たちの目が輝いた。


「市場!? 行くぞ!」


「リゼットさんの料理を求めて!」


「魔術師団、出撃だぁぁぁ!」


「待て! お前たち、勝手に出るな!」


だが、若手たちは聞く耳を持たず、


魔術師団本部を飛び出していった。


カシアンは、額を押さえながら呟いた。


「……胃袋に支配された魔術師団など、聞いたことがない……」




___市場にて___



その頃、リゼットは市場で買い物をしていた。


「わぁ、この月光キャベツ、今日のは特に綺麗ね!」


「火竜の涙も買っておこうっと!」


胸元がふわりと揺れるたび、


周囲の商人たちが目をそらしたり、赤面したりしている。


「リゼットちゃん、今日も綺麗だねぇ」


「昨日の魚の料理、最高だったよ!」


「ありがとう! 今日もいっぱい作るわよ!」


そこへ――


「リゼットさぁぁぁん!!」


魔術師団の若手たちが、


砂煙を上げながら突撃してきた。


「えっ!? な、なに!?」


「今日も団子を……!」


「スープでもいいです!」


「なんでもいいから食べさせてください!!」


リゼットは目をぱちぱちさせた。


「え、えぇ……? そんなにお腹空いてるの?」


「違います! 魔力が……魔力が……!」


「リゼットさんの料理じゃないと安定しないんです!」


「お願いします、我々を救ってください!!」


市場の人々がざわつく。


「魔術師団が……料理を求めて土下座してる……?」


「リゼットちゃん、何したの……?」


と、皆が驚いていると


「お前たち、勝手に走るなと言っただろう!」


カシアンが息を切らしながら追いついた。


「リゼット、すまない。


 こいつらは……その……」


「お腹空いてるのね?」


「……まぁ、そういうことにしておこう」


若手たちは、リゼットの前で正座していた。


「リゼットさん……どうか……」


「我々に……」


「魔力の安定を……!」


リゼットは困ったように笑った。


「しょうがないわねぇ。


 じゃあ、今から簡単なスープ作るから、ちょっと待ってて!」


若手たちの顔が輝いた。


「神……!」


「天使……!」


「リゼット様……!」


カシアンは、額を押さえた。


「……魔術師団が料理人に跪く日が来るとは……」


__リゼットの“即興スープ”__


リゼットは、


市場で買った月光キャベツと影根ニンジンを刻み、


痺れアンコウの肝を少量だけ溶かし込んだ。


「はい、できた!」


若手たちは一斉に飲み干す。


「……っ! 体が……軽い……!」


「魔力が……流れる……!」


「昨日より……すごい……!」


市場の人々がどよめいた。


「リゼットちゃん、すごすぎる……」


「魔術師団が全員復活してる……!」


カシアンは、


スープを一口飲んで目を見開いた。


「……これは……


 魔力循環を整える“理想の配合”だ……


 どうやって……?」


リゼットは首を傾げた。


「え? なんとなく?」


カシアンは、


その場で膝から崩れ落ちた。


「……料理の天才とは……こういうものか……」



魔術師団が市場で土下座したという噂は、


その日のうちに王都全域へ広がった。


「リゼットという娘は……魔術師団を支配したらしい」


「いや、救ったんだろ」


「どっちにしろ、ただ者じゃないな……」


そして――


その噂は、


ついに王宮の奥深くへと届くことになる。



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