環状を睨む番犬 — 修羅 —
翌日から、ブルは環状を駆けた。
蛇の群れは思った以上に大きかった。
総長が集めた頃の純粋な牙より、
蛇がみかじめで呼び寄せた腐った牙のほうが多すぎた。
環状を流せば、一晩に一台や二台は腐った匂いを漂わせていた。
ブルは躊躇わなかった。
煽った。
鼻先を突き立てた。
相手が得意とするラインに飛び込み、土俵で叩き潰した。
コーナーも、ストレートも、どこでも仕留めた。
牙を剥くたび、ブルの牙は研がれ、鋭さを増した。
夜が明け、眠りに落ちるときだけ思う。
総長の背中には、まだ遠い。
まだ、全然届かない。
いつもの仲間と集まり、EG6を磨いた。
ガレージの奥、ボンネットを開け、古い鉄をなだめ、
血のように赤いオイルに指を沈める。
——足りねえ。
限界は、背中に鈍い棘のように刺さった。
そんなとき、ブルの耳に噂が届く。
環状族の間では伝説の町工場。
総長のEG6にも、一度だけ手を入れたという話。
乗り手を選ぶ。
速さを語るだけじゃ駄目だ。
牙を磨いていなければ、鉄は預けてもらえない。
ブルは、決めた。
まだ足りないなら——牙も、鉄も、もっと研ぐ。
咬み痕は増えていく。
しかし、まだ咬みきれていない。
夜の入り口でXJRを止めると、潮風が鼻を刺した。
——俺の牙で、この環を全部取り戻す。
スクラップのS14が、どこかで軋む音がした気がした。
環状の番犬が、修羅に踏み込んだ。




