環状に鳴く、夜鳥 — 夜鳥 —
仲間たちが駆けつけたのは、赤色灯が滲む前だった。
曲がりきれず転がった小さなカプチーノは、もう二度と羽ばたかない。
誰も声を上げなかった。
砕けた鉄片の隙間に、ピヨの汗の匂いがまだ路面に残っていた。
群れは言葉を失い、冷たい夜風に肩を濡らした。
遠くで、サイレンの音が滲む。
誰も手を伸ばせなかった。
誰も小さな亡骸を抱き上げられなかった。
ピヨの羽は、鉄の残骸と共に環状の片隅に置き去りにされた。
蛇は遠くでテールを揺らしていた。
ミラーの奥で嗤った。
「馬鹿な小僧だ」と、吐き捨てる声だけを残して。
影は夜に溶けた。
親鳥から授かった小さなカプチーノは砕けた。
環状に憧れた青年は、二度と輪を駆けない。
けれど、その夜。
ピヨは、鉄の檻から放たれた。
現世という鳥かごを破り、誰よりも自由に空を舞った。
雛だった夜鳥は、環状に鮮やかな羽音を刻み、夜空の奥へ飛び去った。
あの輪は、あの小さな翼を呑み込んだが、奪い切れなかった。
群れは散った。
恐れと悔しさを胸に、誰もアクセルを踏めなくなった。
ピヨが最後に見せたあの速さが、仲間たちの指先を震わせた。
訃報は、環状の闇よりも速く駆け抜けた。
誰かが囁き、誰かが拳を握りしめ、誰かが目を伏せた。
さびれたアパートの奥にも、その羽音は届いた。
親鳥の胸に、夜鳥の最後の羽音が落ちた。
古びた煙草の火が、夜風に滲んだ。
男は涙を流さなかった。
ただ、奥歯を噛みしめた。
指先に染みついたオイルの匂いが、まだピヨを思い出させた。
錆びついた工具が、静かに鳴った。
男は小さく息を吐いた。
夜の奥へ、鋭い瞳が滲んだ。
一度だけ、低く声を漏らした。
「……蛇を——殺す。」
夜の輪に、鈍い鋼の音が返った。
親鳥はもはや、ただの親鳥ではなかった。
雛鳥の亡骸を弔うのは、次に生まれる刃の羽音だ。
環状を荒らす蛇を、夜の奥で必ず切り裂く。
小さな夜鳥の亡骸を越えて、誰かがまた飛ぶ。
そして、環状の夜に親鳥が鳴いた。
新たな羽音が、闇を裂く気配がした。




