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3:魔王軍へ その2

 2日目になって、周囲の風景が変わってきた。

 端的に言うと、殺伐とした雰囲気。どこからか狙われていてもおかしくない感じ。

 とは言っても、索敵スキルで周囲に誰かいればわかる。よほど強力な力の持ち主が隠遁してたら別だけど。

 さて、アンカーの制限時間72時間のうち、16時間を消費した。残り56時間以内に先の勇者を発見し、魔王を倒す必要がある。

 うーん、無理ゲーだ。以前の僕ならそう思うだろうし、現行勇者の未緒にも不可能だろう。なんせレベルが1のままだから。

 未緒が無事に戻れたとして、記憶を消して元の生活を送るか、それとも僕のように勇者を回収する仕事に就くか。鑑定したところ、世界を渡ったことによるスキルは戦闘向きだ。それに元々武道をしていたなら向いているかもしれない。後は資質だ。

 どこかのタイミングで確かめておいた方がいいかも知れない。

 その機会はすぐに訪れた。


「……いるなぁ」


 前方に敵がいると僕の探知スキルが知らせてきたのは昼前だった。


「敵ですか!?」


 前のめりで訊いてくる未緒。

 危うい感じもするけど、まあいい機会か。


「ここから500メートルほど先に数匹敵がいる」

「……5町足らず……ですね」


 小声で未緒はなにやらつぶやく。


「いつでも戦えるようにして――」

「はい」


 気合いの入った返事で、未緒はすでに剣を抜いていた。

 やはり殺す気満々だ。大丈夫か。

 一抹の不安もありながら、気づかれずに姿が見えるところまで接近する。

 緑色の体長1メートルくらいの魔族が6匹いた。


「ゴブリンか。部隊からはぐれた連中かな」

「あれは小鬼……ですか。私が殺ります」

「大丈夫か?」

「いけます」


 心なしか高揚した声で応えると、未緒は飛び出した。


「佐久流刀剣術師範、佐久良未緒参る!」


 わざわざ名乗りを上げて未緒はゴブリンに向かって行った。名乗りのおかげで戸惑ったゴブリンは対応が遅れる。

 そこを未緒は上手く突いた。

 一瞬で距離を詰めると、長剣一閃。まったくブレのない軌跡が虚空に刻まれた。

 そして、ゴブリン2匹の首が転げ落ちる。

 おお、凄い。僕も剣は使ってたけど、勇者の力で適当に振り回してただけだ。技術としては素人同然。その点、未緒は無駄がない。両刃の剣なんて使ったことはないだろうに、すでに使いこなしている。

 しかし、迷いがなさ過ぎて怖い。僕が初めてモンスターを殺した時は稽古をつけてくれた部隊長が半殺しにしてくれた牛くらいの大きさのポイズンスパイダーを前にして、行こうかな行くのやめようかなと数分迷った末、目をつむってエイッて斬りつけたら外されたってくらい情けない状態だった。それと比べたらゴブリンだぞ。人型だぞ。しかも、ピンピンしてる元気なゴブリンだぞ。いやー、ありえない。

 そんな事を考えている間に、未緒はさらに1匹を袈裟掛けに斬り殺し、盛大に緑色の血しぶきを浴びていた。

 残った2匹と対峙する未緒。ゴブリンはようやく武器――いわゆるヒノキの棒を構えて未緒を左右から挟むように移動する。へえ、頭を使うようになったか。

 おっと、後ろからもう1匹が狙ってるな。

 1匹くらい倒しておかないとなと、僕は石を拾って軽く投げつけた。ゴブリンはポンッと脳漿をまき散らして倒れる。

 注意をそらすつもりが、殺っちゃった。

 それが合図になったのか、1匹が仕掛けていった。未緒は攻撃をわずかな動きでかわし、出来た隙に迷わず斬りかかる。反対方向からの攻撃は斬ったゴブリンを跳び越えていなすと、一瞬で距離を詰める。

 見事なチェックメイトだ。

 未緒は剣についた緑の血をゴブリンの体でぬぐうと、僕に向かって来た。血しぶきを浴びた姿はちょっと怖い。目つきも興奮でギラギラしていて、ついに殺られるかと覚悟するほど。


「かたじけない」


 深々と礼をする。どうやら僕が1匹倒したことに気づいたみたいだ。


「石つぶての一投で倒すなど武芸の達人並みです。いつか葛見殿と試合たいです」

「この世界から出られたらね」

「男に二言はありませんよね。約束しましたよ」


 ああ、もう逃げられないぞと言われた気分だ。

 それでも収穫はあった。未緒は《ディヴィジョン》の仕事をこなせるだろう。荒事専門になるかもしれないけど。

 まあ、それは戻ってからでいい。今は一刻も早く先の勇者を見つけて合流することだ。

 そういや、先の勇者なんて言ってるけど、これじゃもうすでに死んじゃってるみたいだな。フラグにならなけりゃいいけど。


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