#88 闘技大会!3位決定戦
よろしくお願いします!
途中から3人称に変わります。ご了承ください。
気づいたら宿に居ました。
しかも夜です。
隣にはナティもいました。
ナティも周りを見てキョロキョロとしてます。
「「にゃ?」」
顔を見合わせて、首を傾げる僕達。
そこにニュウが部屋に入ってきた。
「大丈夫?」
「にゃ」
「皆、下でご飯食べてる」
「行くにゃ」
「にゃ」
ナティとニュウと一緒に食堂に下りる。
下には皆がご飯を食べていた。
なんか顔が沈んでいるけど。特にリリリが酷い。
僕達に気づいたオグマが声を掛けてくる。
「大丈夫か?」
「にゃ」
僕は頷きながら、席に座る。
するとリリリが声を掛けてくる。
「ごめん……私のヘマで……」
顔も真っ青で涙目だ。
「大丈夫にゃ。朝にも行ったけど、ここまで来れた時点で凄い事にゃ。それにあれで怒ったりしたら、僕達だって倒すのが遅かったしにゃ」
「ですにゃ」
「……ありがとう」
「俺達だって遊ばれてたしな」
「ですね」
僕の言葉にディノとシェーンは苦笑する。
だよね。僕達だって装備アイテムがなかったら、もっと時間かかってただろうし。
リリリは鼻を啜りながら改めて頭を下げる。
「そういえば、明日の相手はどうにゃったにゃ?」
僕の言葉に全員が顔を顰める。
え?何?その反応?
思い出せ。僕達の次の試合は確か……バサラさんとエリマさん達だ!
……あれ?どっちもやばくない?
「私達だよ」
「よろしくね~」
冷や汗が出始めたところにエリマさんとシィナさんが現れる。
……マジで?え?バサラさん勝ったの?この3人に。
「5対3でねぇ。力押しされたよ」
「にゃるほど」
それでも凄いですよ!
でもバサラさん達でも5人で力押ししなきゃダメだったのかぁ。
僕達だったらどうすればいいんだ?
しかもエリマさん達って僕達のスキルほぼ把握してるんだよね。
【ケット・シー】の事も僕達より詳しいと思うもん。
「……手加減は」
「するわけないねぇ」
「ただでさえ~粗末な装備だけで~戦うのよ~」
「にゃ~」
ですよね。
むぅ~……どうすればいいんだろうか?
「まぁ、まずはご飯食べなさいねん」
「「にゃ!」」
ナーマさんが魚のフライてんこ盛りを目の前に置く。
いい匂い!頂きます!
「「にゃっふぅ~ん♪」」
「幸せそうだな」
「向こうはやけくそ気味だけどね」
向こう?
僕とナティは隣のテーブルを見る。
「ぐす……にゃぐ…ハグハグ…ぐずっ……にゃぐ……ハグハグ……」
「ナウラ……泣くのか食べ続けるのか、どっちかにしなよ」
ナウラが涙を流しながら、同じく魚フライてんこ盛りに齧り付いていた。
それをマオが心配そうに見ながらも声を掛けるが、ナウラはそのまま泣きながら食べ続ける。
……そうでした。ナウラも山籠もり決定だった。
一番謝らんといけないのはナウラだった。
「ニャウラ、ごめんにゃ。ちゃんとタマ師匠にお願いして、ニャウラは今回は見逃してもらうようにお願いするにゃ」
「ぐすっ……ニャニャキィ……にゃう~」
僕が声を掛けると更にボロボロと泣き始めるナウラ。
しもた!トドメ刺した!?
「お兄さん……泣かしちゃ駄目!メッ!」
「にゃ!」
「ごめんにゃさいにゃ!」
マジでゴメン!?
でも、可哀想じゃん。試合にも出てないのに。
流石にこればっかりはタマ師匠に土下座してナウラは見逃してもらうとしよう。
とりあえず、明日が最後!頑張ろ!
おはようございます!
目が覚めたのだけど。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
「うにゃぁ……うにゃぁ……うにゃぁ……」
「……」
ナティが僕の体に抱き着き、ニュウが僕の頭を胸元に抱きしめております。
良く寝れてたな、僕よ!!
そして心臓が飛び出しそう!助けて!……でも、この状態も捨てがたい!
いや、実際どうしたらいい?起こすと、それはそれでパニックが起こる気がする。
……柔らかい。……いい匂い。
あかん!試合前に体が壊れる!
「んにゃ~」
「うん?……う~ん……う!?」
「にゃ?うにゃ~……にゃ!?」
必殺!寝たふりして寝転がって起こす!
ナティとニュウは目を覚まして、ボォ~っと今の状況に気づいて、声を上げる。
今だ!起きそうなふり!
「んにゃ~?」
「「!!」」
僕が声を出した瞬間、2人は飛び起きて離れる。
助かった!!
ゆっくりと起き上がって、目をコシコシする。
自然に!自然に!
「にゃ~……おはようにゃ」
「お、おはようですにゃ」
「お、おはよう」
2人は顔を真っ赤にして、挨拶を返す。
僕は自然に出来ているでしょうか?
幸せでしたが、心臓に悪いです。
その後、落ち着いた僕達は食事を食べて、闘技場に向かう。
「とりあえずニナは出るんだよな?」
「出場人数次第じゃない?2、3人ならボアンさんなんて私じゃ止められないわよ」
「それもそうじゃの」
「ディノは必要不可欠じゃない?」
「ちょっと考えがあるにゃ」
「というと?」
僕は思いついた作戦を説明する。
かなり賭けだけどね。
それに全員が腕を組んで、話した作戦を考え込んでいる。
「確かに賭けではあるが……」
「可能性はあるかのぅ……」
上手く行くかどうかわからないけどね。
エリマさん達が対処出来ないわけはないだろうし。
『レディーーーース!!アーンド!!スットコドッコイ共ぉ!!いよいよ闘技大会最終日!!やっとこの地獄から解放されるぜイヤッフーーーー!!』
ピョンさんのこのアナウンスも今日までなのか。
ちょっと寂しいね。
「ナナキ」
「にゃ?」
「プレイグ様のところ」
「にゃ?」
オグマの言葉に僕とナティはプレイグ様達がいる席を見る。
そこには、6匹の黒い猫が動き回っていた。
……増えてるね。しかもマントとリボンが靡いているように見えるね。
まぁ、そうだよね。ニャッキーマンとナティニャンだよね。
完成早いなホント!?
「一体何体まで増えるんだろうね?羨ましい」
「いつか会いに行ける施設でも作ってくれないかなぁ」
「鼻血で出血死するから止めとけば?恥ずかしいわよ?鼻血で死に戻るとか」
「「本望!!」」
ファナとリュリィが力強く頷く。
怖いわ。
でも、本当にどれくらいまで増えるんだろうね。
そして、並んで仁王立ちしてるのは昨日の嫌味でしょうか?
『3位決定戦はこの2組!!【ギルド連合】対【眠猫庵】!!』
僕達の反対には制服の上に質素な装備を身に着けているエリマさん達が立つ。
う~ん。やっぱり威圧感が凄いなぁ。
『こちらの情報によりますと、【ギルド連合】の選手は【眠猫庵】リーダーのナナキ選手の担当職員でもあるようです』
『リアリィ!?これはハンデってレベルでネェだな!!かわいそ!!』
うっさい。だったらもっとハンデくれ。
ちょっと期待を込めてバットル様を見る。
僕の視線に気づいたバットル様はニヤァと笑みを浮かべる。
それくらいどうにかしてみろと、言うことでしょうかね。
ですよね。
「ニャティ」
「はいにゃ」
「流石にあの3人相手だと、『あれ』を使わにゃいわけにはいかにゃいと思うのにゃ」
「……にゃあ」
「でも、それはこの観衆全員に見られるということにゃ」
「……頑張るですにゃ」
すでに涙目やないか。
無理しないでもいいと思うんだ。僕だけでもいいんだよ?
こればっかりは本当に。
「一緒にやりますにゃ!」
「分かったにゃ!」
「……にゃんのはにゃしをしてるのですかにゃ?」
「さぁ?」
僕とナティの言葉にナウラとマオが首を傾げる。
すぐにわかるよ。ナウラ。
君に待ち受ける試練が!
『さっそく試合形式を……決めるわけねぇだろうがーーーー!!』
あれ?
『最終日だお!?表彰台決定戦やで!?ガチンコ一択に決まっているのザマス!!』
なるほど。
『ただし、人数はサイコロで決定します』
その言葉と同時にサイコロが出現し、回転を始める。
まぁ、そこも含めて大会だしね。
【3】以上ならいいなぁ。
そして出た数字は【4】。
「第1関門クリアだな」
「さて、どうしましょうか」
「ナナキとナティは決定。4人ならニナも出てもらおうぜ」
「「にゃ!」」
「頑張らせてもらうわ」
僕達は頷く。
「となると後は……」
「ディノさん、それにモーカさんとナダさんでしょう」
白蓮が名前を上げる。
「いいのか?」
「ディノさんでなければボアンさんの攻撃を捌ききれませんわ。そして遠距離が2人追加できるのも捨てられません。後1人行けるならニュウさんも入れたかったですが」
白蓮の言葉にメンバーは納得するように頷く。
皆が文句ないなら、僕も文句はありません!
「昨日のリベンジさせてもらうぜ!」
ディノは気合を入れる。
ナダとモーカもそれに同意するように頷く。
よし!では行きましょう!
僕達はステージの上に上がる。
すでにボアンさん達は武器を抜いて、立っている。ボアンさんは斧ではなく太めの棍棒を持っている。
僕達もディノを先頭に陣形を組む。
向こうのリーダーはエリマさんだ。でも、他の2人も十分リーダーが出来るくらいの経験と判断力がある。エリマさんばかりに固執すると、あっという間に負けてしまう。
なので最初に狙うはボアンさんだ!!
すると、ステージの中央に誰かが降り立つ。
『審判はバトラー・セバスティンが執り行います』
「皆様。どうぞよろしくお願い致します」
ピシッと双方にお辞儀をするレフェリー柄の執事服を着たジェントルマン。
白髪のオールバックに右目に片眼鏡、チョビ髭を生やしている。
うん。ザ・セバスチャンって感じ。
バトラー・セバスティンはステージの端に立つ。
「それでは双方。ご準備はよろしいでしょうか?」
頷く僕達。
それを確認したバトラー・セバスティンは右腕をまっすぐ上にあげる。
「それでは!!3位決定戦!!始めぇ!!」
試合が開始された。
ボアンが飛び出そうとした時、
「「【タウンティング・ハウル】!!」」
「ぬ!」
ディノとニナが声を上げて、ボアン達のターゲットを無理矢理引き付ける。
その隙にナダが真上に向けて弓を向ける。
「【レイン・ショット】!」
上空に矢を放つ。直後、矢が分裂して、数十本の矢となってボアン達に降り注ぐ。
「【トルネード】!」
それをエリマが上空に竜巻を放ち、拡散させる。
そのまま竜巻をナナキ達に向かって放つ。
「『飛べ』【ファイヤー・ランス】!」
モーカが竜巻に向かって炎の槍を放ち、相殺する。
「相殺で精一杯。装備が完全だったら止められなかったわね」
「1つの魔法でこっちの技を2つ潰されるか。やはり手強いな」
ナダとモーカは実力差を感じて、顔を顰める。
ディノとニナも2人がかりでボアンを抑え込んでいる。
「ぐっ!」
「かったいわねぇ!」
「まだまだこれからだぜぇ!」
「それは、こっちもだぜ!」
「あぁん?」
ディノの言葉にボアンは眉を顰める。
その時、
「「【ニャニャニャ】!」」
「「「!!」」」
ナナキとナティの声に目を鋭くするエリマ達。
ナナキとナティは肩を並べて、スキル名を叫ぶ。
すると、2人の両手に日の丸扇子が現れる。
そしてニパッ!と笑顔になると、
「「ニャニャンニャニャン♪ニャニャニャニャニャン♪ニャアッニャ ニャンニャン♪ニャンニャンニャン♪」」
パタパタと扇子を振りながら、ぴょこぴょこ踊るナナキとナティ。
『おぉ!?なんだぁ!いきなり可愛く踊り出したぞい!?』
『可愛いですね』
「……あれが噂の【ニャニャニャ】ですかにゃ……」
「あれって強制なんだっけ?」
「ああ」
「……にゃ~」
踊りを見てナウラが涙目になる。
それをマオは頭を撫でることで慰める。
「でも、これで……」
「勝機も生まれる」
「ゴーー!!」
「やっつけろだぞーー!!」
「頑張れ。ナナキ、ナティ」
2人の踊りを受けたディノ達は一気にボアンを押し返す。
「おっらあああああ!!」
「【オーラ・セイバー】!!」
「ぐぅ!!」
「シィナ!ボアンにバフ!」
「分かってるわ~!【パワー・ビルド】!」
ディノとニナに弾き飛ばされるボアン。
そこにすぐさまシィナが筋力強化の魔法を掛ける。
「【スウィング・バスター】!」
「【シールド・チャージ】!」
ボアンの棍棒とディノの盾がぶつかり合う。
どちらも吹き飛ばされることなく、押し合いになる。
「っ!パワー底上げされてんのに互角かよ!ナナキ達の踊りはどんだけだよ!?」
「うちの猫夫婦を舐めんなよぉ!!」
「はあああああ!!」
「ちぃ!」
ニナが飛び掛かり、ボアンは飛び下がって距離を取るが、すぐさまディノも詰め寄る。
エリマ達もボアンの援護に動きたいが、ナダとモーカの攻撃にやや手こずっていた。
「【ウインド・カッター】!」
「【スナイプ・シュート】!」
「【ウインド・ベール】!」
「【ライト・……!」
「【トライ・スナイプ】!」
「っ!【キューブ・シールド】!」
シィナ達が魔法を使うより先にモーカとナダの攻撃が速く放たれる。
それにエリマ達は防御魔法を使わざるを得ない状況になっていた。
「流石ね~。敏捷が段違いに上がってるわ~」
「威力もだねぇ。これはちょっと不利だねぇ」
そう言いながらも2人はまだまだ余裕の笑みを顔に浮かべていた。
それによりナダとモーカは気を抜けずに2人に専念せざるを得ない状況であり、ナダ達も足止めされてしまっていた。
「防御に専念されるとやっぱり駄目ね。まぁ、こっちに専念させれているだけマシよね」
「そうだな。こっちも他に目を移す余裕はないがね」
「あっちはナナキ達に任せましょう」
踊り終えたナナキ達が動き始めた。
刀を抜いて、ボアンに迫るナナキ。
「【猫刃閃】!」
「うお!?3人がかりかよ!?」
ボアンはナナキの高速の斬撃を躱すも、掠ったようで左脇腹から少量の血が噴き出す。
「うおおおおお!!【スウィング・インパクト】!!」
ボアンは地面に向かって棍棒を叩きつけて、衝撃波を放つ。
それにナナキ達は下がるしかなく、距離を空けてしまう。
「【スワロー・エッジ】!」
「【鎌鼬】!」
ニナとナナキはすぐさま遠距離スキルで攻撃する。
「舐めんなぁ!!」
しかしそれをボアンは棍棒一振りで掻き消す。
それに目を見開くナナキ達。
「強すぎにも程があるわよ!?」
「木の棍棒だよな!?あれ!?」
「思いっきり振れば風圧で壊せるんだよ。残念だったな」
「そんにゃの僕かすっただけで頭吹っ飛ぶにゃ!?」
「だろうな」
トントンと棍棒で肩を叩くボアンにナナキ達は冷や汗を流す。
「ニャティ!」
「はいにゃ!」
「来るか!」
いつの間にかナナキのすぐ傍まで近づいていたナティにナナキが声を掛ける。
ボアンは構えるが、ナティの手にステッキが現れる。
「【ニャラン】!」
ナティが笑顔でステッキをボアンに向かって振る。
ボアンが光に包まれる。
それを見た瞬間、ニナが飛び出す。
しかし、猫になるはずだったボアンを包む光が、突如弾けれたように霧散する。
「「にゃ!?」」
「うそ!?」
「わりぃなぁ!【スウィング・バスター】!」
「ぐぅ!?あああああ!?」
「ニニャ!!」
目を見開くナナキ達と飛び出しているニナ。
ボアンはすぐさまニナに詰め寄り、棍棒を振り抜いてニナの腹に叩き込む。
ニナはくの字になって後ろに吹き飛び、場外の壁に叩きつけられる。
「ごぉ!?」
ニナはそのまま地面に倒れ込み、起き上がらなかった。
「ニナ選手!戦闘不能と判断致します!」
「マジかよ!?」
「どうやってにゃ!?」
「シィナの【ディスペル・クレスト】だ。体に【ディスペル】の効果を持つ紋様を刻んで、一度だけ【呪い】などの体に悪影響を与える魔法を打ち消す」
「「にゃにゃあ!?」」
「お前さん達の【リバース】対策だったんだが、まさか【ニャラン】を使ってくるとはな」
ボアンの言葉に目を見開いて固まるナナキ達。
【ニャラン】こそがナナキ達のボアンを倒す切り札だった。
「忠告しとくぜ。後1回ならエリマの【ディスペル・ルーン】で無効化出来る」
「「!!」」
「ナナキとナティがいるんだ。2重に対策はするさ。まぁ、これは全試合でしてたけどな」
「……まいったぜ」
「戦いは始まる前から始まってんだぜ。作戦を立てるのはもちろん、あらかじめスキルを掛けておくのだって立派な戦術だ。戦いはあらゆる備えを整えた方が勝つ。覚えておきな」
ボアンの言葉に何も言い返せないナナキ達。
確かに試合前にスキルを使ってはいけないというルールはない。
事実、バトラー・セバスティンやバットルは何も言わない。
『なんかギャラリーが騒いでやがんな!!言っとくが、今のは問題ナッシング!!』
『別に道具を使っているわけでもありません。それにその程度はしていて当然と言うのがバットル様のお言葉です』
「スキルでの備え故にハンデに引っかかることもない。というわけですわね」
「確かに普段の戦闘では使うじゃろうしの。大会は例外と言うのも変な話ではあるの」
「そこも含めて競うのが闘技大会ってわけかい……」
「にゃあ……」
「お兄さん……!」
「頑張れ……!」
モーカとナダも顔を顰めていた。
「まいったわね」
「モーカ。魔力は?」
「……【ファイヤー・ランス】クラスが後3発くらいかしら」
「……私の矢も残り20もない。厄介なことだ」
「向こうはまだ余裕そうね」
エリマとシィナは汗1つ掻いていない。
モーカの言葉が聞こえていたのか、エリマがモーカに語り掛ける。
「牽制で魔法を使い過ぎたねぇ。それがダメとは言わないけど、ちゃんと魔力切れ対策をしとかないとねぇ」
すると、エリマは右袖を捲くし上げる。
エリマの右前腕にはひし形の刺青のようなものが浮かんでいた。
「それは……?」
「【マナ・クレスト】。簡単に言えば魔力を集めて固めたものだよ」
「「!!」」
「そう。これを使えば、魔力を補充出来る。昨日も使ったから1個だけだし、これだけだと半分も回復しないけどねぇ」
「それでも~あなた達よりは~多く魔法が使えるわ~」
「……準備万端。いえ、私達の認識が甘かったってだけね」
「そのようだな」
格の違いを見せつけられて、ため息を吐くナダとモーカ。
すると、エリマから魔力が溢れ出す。
「防いでごらんよ。『息吹き、渦巻き、轟き、飲み込め』【トライ・ハリケーン】」
風、水、雷の3つで構成された竜巻がナダとモーカに向かって放たれる。
ナティが動こうとしたが、ボアンが再び衝撃波を放って、動きを阻害する。
「抗うぞ!!モーカ!!」
「もち!!」
ナダは矢筒から矢を取り出し、モーカも魔力を練る。
「『燃えて逆巻け』【フレイム・トルネード】!!」
モーカが炎の竜巻を放ち、エリマのハリケーンにぶつける。
一瞬拮抗するが、炎と雷が反応し合って大爆発を起こす。
しかし弾けたのは炎の竜巻だけで、水と風のハリケーンは健在だった。
そのため爆発はモーカとナダにのみ襲い掛かった。
「くっ!っ!?【ソニック・スナイプ】」
ナダは爆風を無視して矢を放つ。
その直後にモーカに飛び付き、抱き抱えて爆風から庇う様に背を向ける。
そして2人は爆風とハリケーンに飲み込まれる。
それを見届けたエリマ達は、
「まさか、あの状況で隙間を狙って撃ち込んでくるとはねぇ」
「ちょっと驚いたわね~」
エリマ達の目の前には矢が1本突き刺さっていた。
最後にナダが放った矢が爆風とハリケーンをすり抜けて、飛んできたのだ。
残念ながら直前で勢いを失くしてしまったが。
「ナダ選手、モーカ選手戦闘不能!!」
バトラー・セバスティンが宣言する。
「これで3対3だね」
「後衛職はナティ様だけ。向こうは回復も砲台も健在。しかも魔力の補充も出来、【ニャラン】や【リバース】対策も万全。……本当に流石ですわね」
「ボアンの攻撃はディノじゃないと防げない。でも、そうなるとエリマの攻撃が厳しい」
「マキナー戦で見せたナティの反射魔法も対策されてそうだしねぇ」
「あれはシィナさんがまた反射すれば、もう防げないからな」
「それはナナキ達も気づいてるでしょうけど……もう【ニャニャニャ】も終わるわ」
白蓮達も顔を顰めて見守っているが、やはり厳しいと言わざるを得ない。
バフも消えてしまうと、ボアンのパワーをディノ1人では抑えきれないだろう。
「くっそぉ!」
「ふ!」
「ぐうう!」
そしてボアンの攻撃に弾かれ、後ろに滑るディノ。
ナナキは隙を狙うが、ボアンが絶えず棍棒を振って威嚇するため近づけない。
【ピット・フォール】は使った瞬間に飛び上がって躱された。
攻撃範囲が広すぎて【ミラージュサイン】も使えない。【スナッチ】も同様。
さらにナティもディノへの回復で魔力をどんどん消費していく。
「【サンダー・ボルト】!」
「!!【スイッチ】!」
ナナキはナティのすぐ横に現れて、ナティを押し飛ばす。
「にゃ!?」
「ニャバババババババ!?」
「ニャニャキ!?」
ナティは後ろにコロンと転がる。
そこにナナキの悲鳴が響いて、ナティは飛び起きる。
ナナキは体から煙をブスブスと上げながらもナティを庇う様に立っていた。
「【ヒール】!」
「ありがとうにゃ」
「はいにゃ」
ナティはすぐさま回復魔法を使う。
「がああ!?」
「リーダーのお前が庇ってどうすんだよ!」
「!!【スリップ】!」
ディノが吹き飛ばされると、ボアンはすぐさまナナキに迫る。
ナナキはナティを抱きかかえて走り出した瞬間にスキルを使って滑り出す。
「そんな使い方かよ!?」
「【リフレクト・ウォール】!」
「にゃ!?」
ナナキ達の目の前に光の壁が現れる。
ナナキは弾かれて、反対方向に滑る。
その先にはボアンが待ち構えていた。
「くらえ!!」
「させるかぁ!!【タウンティング・ハウル】!!」
「ちぃ!」
「【ウインド・ランス】!」
ボアンが攻撃する直前に、ディノが吠えてターゲットを強制的に自身に変える。
しかし、そのディノに向けて風の槍が放たれる。
ディノはボアンの攻撃を防いだ直後で体勢が整えられず、魔法が直撃する。
「ごぉ!!」
「終わりだぁ!」
そこに更にボアンの追撃を頭に浴びて、地面に叩きつけられて消滅する。
「ディノ選手!戦闘不能!!」
『これで残ったのは猫ちゃんカップルだけだ!!』
「ディノ!」
「よく耐えたの」
「ブラボー!」
ディノは白蓮達のすぐそばに現れる。
気絶しているようでシェーンやリリリが慌てて近寄る。
「これでお兄さん達だけ……!」
「ニャニャキ……ニャティ……」
ナナキはナティを背中に庇い、刀を構えている。
「にゃ~……」
「ニャニャキ……」
「これでお前達だけだな」
「流石に勝ち目はないねぇ」
「降参する~?」
「嫌ですにゃ!」
「にゃ!」
ナナキはボアンに向かって飛び出す。
ボアンが構え、エリマ達も杖を構える。
「【ピット・フォール】!」
「!!」
ナティがエリマを落とし穴に落とす。
「エリマ!」
「フニャ~~~~~~~~ン」
「やべ!って、あ?」
シィナが一瞬気を取られた隙を突いて、ナナキが鳴き声を上げる。
それにボアンは慌てて耳を押さえて離れようとするが、ナナキは崩れ落ちなかったことで違和感を覚えた。
「にゃいただけにゃ」
「何考えて!?」
「上だよ!」
「「!!」」
ナナキの言葉に訝しむボアンだが、穴に落ちたエリマの声にすぐさま上を見る。
3人の真上には大きな盾が現れていた。
「やば!?」
「【ビッグシールド・レーザー】!!」
ナティが叫んだ瞬間、巨大な光線がステージに突き刺さる。
その衝撃でナナキ達は吹き飛ばされそうになり、互いに抱き着いて地面に伏せる。
『クレイジーーーーー!!なんちゅうぶっとい光線を放ちやがるんだ!?あの子猫!』
「上手い!真下に撃てば、反射されても問題ない!」
「あの威力を防ぐにはかなりの魔力が必要なはず!」
「防げてもボアンさんまでカバー出来たかは怪しい!」
白蓮達もナティの攻撃に盛り上がる。
もくもくと煙が立ち、ステージの半分が見えない。
ナナキ達は立ち上がり、油断せずに煙を見つめる。
「……少しは効いたかにゃ?ニャティ、大丈夫かにゃ?」
「にゃあ。もう……魔力が……」
その時、煙の中から光線が飛んできた。
ナナキはナティを再び突き飛ばし、光線はナナキの脇腹を抉る。
「にゃ゛あ゛あ゛あ゛!」
「ニャニャキィ!?」
「ちょっと焦ったぜ」
「!!」
ナナキは痛みに叫ぶ。
ナティは涙目で慌てて近寄り回復しようとするが、そこにボアンが棍棒を構えて現れる。
ナティは迫る棍棒をただ見ることしか出来なかった。
当たる直前にナナキがナティの抱き着き、ボアンの棍棒を背中に受けて吹き飛ばされる。
「にゃが!?にゃご!にゃぐううう!」
数回地面を転がったナナキはステージギリギリで止まる。
「ニャニャキ!!」
「にゃ……にゃあ……」
ナティは慌てて起き上がる。
ナナキは腕をプルプルと震わせながら、なんとか立ち上がる。
ボアンは追撃せずに、ナナキ達の様子を眺める。
「ふぅ~……よくその傷で動けるもんだぜ」
「ナナキ君はナティちゃんのためなら腕を捨てれるんだよ?あれくらいは出来るさ」
「試合としては~赤点だけどね~」
エリマとシィナが苦笑しながら、煙の中から現れる。
それにナナキは悔し気に顔を歪め、メンバー達も歯軋りをする。
「ほとんど無傷だなんて……!?」
「もうナティに魔力はないみたいよ!?」
「そんな……!」
ボアンは服は破れてはいるが大きな怪我は見られず、エリマとシィナも服は汚れていても、破れていたり出血している様子はない。
「【キューブ・シールド】。それにボアンには~【ヒーリング・オーラ】よ~。10秒間回復させ続ける魔法よ~」
「それに【アイアン・ボディ】で防御力を高めて、ダメージを最小限にしたんだ」
「私は大人しくしてただけだねぇ」
完璧な判断力と行動力だった。
「もはやナティちゃんも回復は出来ないようだし、ナナキ君も満足に動けないよねぇ」
「詰みだな」
「ナティちゃんを~庇わなかったら~まだ隙は突けたかもね~」
「……僕は」
「ん?」
「僕は試合でも!!目の前でニャティが傷つけられるにゃんて!!ぜっっったいに!!嫌だにゃあ!!」
「……ニャニャキ」
ナナキは脇腹から血を噴き出しながら、思いっきり叫ぶ。
一瞬、ナナキから放たれた気迫にエリマ達は目を見開く。
ナティはボロボロと涙を流し始める。
ナナキは刀を抜いて、しっかりと両手で握って構える。
「みんにゃでここまで来たにゃ!!この程度で降参だにゃんて!!絶対に言ってやらにゃいにゃ!!」
「……よく言った。ちょっと見くびってたぜ」
ナナキの言葉を聞いたボアンが飛び出す。
両手で棍棒を握り、後ろに振り被る。
「ちゃんと決めてやるよ。行くぞぉ!!【クラッシュ・バスター】!!!」
全力で踏み込んで、ナナキに向かって棍棒を振り下ろすボアン。
ナナキも震える脚に力を込めて、飛び掛かろうとする。
その時、
「【リフレクト・ウォール】!!」
「「!!」」
ナナキとボアンの間に輝く壁が出現する。
ボアンの攻撃は弾かれて、ボアンは後ろに飛ばされる。
「ニャティ……」
「はぁ!……はぁ!……はぁ!……」
ナナキは振り返り、壁を生み出したナティを見る。
ナティは顔を真っ青にして荒く息を吐き、フラフラになりながら立っていた。
それを慌ててナナキはナティを支える。
「駄目ですにゃ……」
「え?」
「私だって……ニャニャキを助けるですにゃ。……支えるですにゃ。……横で……戦うですにゃ」
「……ニャティ」
「もう……にゃにも出来にゃいのは……嫌ですにゃ」
もはや脚もガクガクでナナキに抱き着かないと立っていられない状態のナティ。
それでもナナキの服を握り締めて、倒れまいとしている。
その姿に観客席では涙を流し始める者が続出する。
「……やっぱり……ナティは凄い……本当に凄い」
「……にゃあ」
「……うん」
ニュウは胸元で両手を握り締める。
あの姿に憧れた。あんな2人に憧れた。改めて、ニュウはそれを自覚したのだった。
そして確信も出来た。
ナナキとナティを好きになったことは、絶対に間違っていないと。
「……心が痛むねぇ。あの2人を倒さないといけないなんて」
「しばらくは針の筵だな。こりゃ」
「そうね~。でも~これもまた戦いよ~」
「そうだねぇ。担当だからこそ、やらないとねぇ」
「あいよ」
再びボアンが2人に向かって歩き始める。
それをナナキ達はまっすぐに見つめる。
「ニャティ」
「……はいにゃ」
「もうちょっと……頑張ってくれるかにゃ?」
「……にゃあ」
「ありがとうにゃ。……愛してるにゃ」
「私もですにゃ」
ナナキの言葉にナティはホワッと微笑む。
ナナキはナティに顔を擦り付け、ナティも擦り付け返す。
意識してか無意識か、2人の尻尾がくるりと繋がり合う。
その時、2人が強く輝く。
「な!?なんだ!?」
「これは……!?」
「なに!?」
ボアンはエリマ達の傍に飛び下がり、エリマ達は目を見開く。
白蓮達も同じく目を見開いている。
その光の意味に気づいているのは、2柱の神と5匹のケット・シーのみ。
『これは……』
『ここで見せるのか~。やっぱり、面白いねぇ』
「タマ様」
「あれがアイツらの……」
「まさかもうそこまでつにゃがってるとは……」
光が落ち着いた時、そこにいたのは、赤いハットを被り青いフロックコートを着た長身の猫人だった。
「「「は?」」」
エリマ達はポカンと目を見開いている。
ニュウ達や観客達も唖然とその猫人を見つめる。
「……ニャニャキ」
「にゃあ」
「「「「「「……え?」」」」」」
猫人の腕にはナティが抱えられている。
ナティの呼びかけに猫人は低い渋めの声で応える。
それにエリマ達とニュウ達はさらに目を見開く。
「ナティ……もう大丈夫にゃ。僕に任せて、ゆっくり休むにゃ」
「でも……」
「大丈夫にゃ。お姫様を抱えた僕は、誰にも負けないにゃ。お姫様は僕を信じられないにゃ?」
「……にゃあ。信じてますにゃ。疑った事にゃんてにゃいですにゃ」
「にゃあ」
ナナキ王子の言葉に顔を赤らめながらも、安心した様に微笑みながら目を瞑り、気を失うナティ。
その顔をナナキ王子は愛おしそうに撫でて、左腕でナティを抱えて、右手で腰の剣を抜く。
「さぁ……決着を付けようにゃ。お姫様を抱えた僕に、勝てない者なんていないにゃ」
「お、おい……!あれなんだよ!?どうすりゃいいんだ!?」
「み、見たことないねぇ」
「っ!来るわよ!」
「さぁ、踊りましょうにゃ」
シュパァン!と一瞬で距離を詰めるナナキ王子。
ボアンは目を見開きながらも、棍棒を構える。
ナナキの右腕がブレると、ボアンの棍棒が音もなく輪切りにされる。
「なっ!?」
「【リフレクト・ウォール】!」
「にゃあ」
シィナがすぐさま光の壁を生み出す。
ナナキ王子は一鳴きすると、一瞬でシィナの後ろに現れる。
「っ!?」
「【ウインド・ベール】!」
今度はエリマが自身とシィナを風のドームで囲む。
そこにボアンも拳を構えて、ナナキ王子に飛び掛かる。
ボアンの拳をナナキ王子はヒラヒラと優雅に躱す。
「速えぇ!」
「君が遅いのにゃ」
「!?があああああ!?」
「ボアン!?【ハイ・ヒール】!」
突如、ボアンの両腕が斬り刻まれて血が噴き出す。
目を見開いたシィナがすぐさま回復する。
「こいつ!」
「強くなり過ぎじゃない!?」
「よく分からないねぇ!【ウインド・ランス】!」
エリマの風の槍も躱し、剣で斬り落とすナナキ王子。
その凄まじさにエリマ達は余裕を失くす。
「仕方ないねぇ!ボアン!我慢しなよ!」
「っ!!仕方ねぇなぁ!」
「囲むわ!【キューブ・シールド】!」
ボアンが拳を連続で放ち、ナナキ王子を牽制する。
シィナはボアンとナナキ王子をシールドで囲み、閉じ込める。
その隙にエリマは魔力を回復し、魔力を練る。
「タイミング合わせなよ!」
「もちろん!」
「行くよ!!『迸れ』【ライトニング・バーン】!!」
ナナキ王子がボアンの攻撃を避けて、エリマ達の目の前に来る。
その瞬間、エリマは両腕を突き出して、魔法を放つ。
それと同時にシィナの壁が消える。
「!!」
ナナキ王子に光速の雷が襲い掛かる。
雷に飲み込まれたと思われた直後、シィナが突如くの字になって後ろに吹き飛んでいく。
「シィナ!?」
エリマは目を見開いてシィナを見る。
シィナの腹にはナナキ王子の剣が突き刺さっていた。
更にエリマの真横にナナキ王子が現れる。
「っ!?くぅ!」
エリマは咄嗟に前に飛び転がる。
すぐさま起き上がりながら、ナナキ王子に振り返る。
ナナキ王子は背中が焼き焦げていた。しかし腕に抱えられたナティは無傷で今も安らかな表情をしていた。
「……ナティちゃんを庇ったのかい?」
「当然ですにゃ。僕はお姫様を守ることを何より大事にしているですにゃ」
「だよねぇ」
後ろに目を向けるとボアンが大の字で転がっていた。
シィナも剣を抜いて、回復魔法を掛けているが、すぐに戦線復帰は厳しそうだ。
「一気に逆転か……」
「にゃあ。降参してくれますかにゃ?」
「君が断ったのに、私達が出来ると思うかい?」
「それもそうですにゃ。じゃあ、これで終わりですにゃ」
ナナキ王子が右腕を振り被る。
エリマはまっすぐに見つめながら結果を受け入れようとすると、
ポン!
と、ナナキが元の姿に戻った。
「え?」
エリマが再びポカンとする。
ナナキはナティを抱きしめたまま、膝を着く。
「……にゃあ。だ……め……だった……にゃ?……ご…めん……にゃ。……ニャティ」
ナティを抱きしめたまま倒れるナナキ。
そのまま動くことはなかった。
そこにバトラー・セバスティンが駆け寄り、ナナキ達の状態を確認する。
「ナナキ選手、ナティ選手!そしてボアン選手!戦闘不能と判断致します!この勝負、【ギルド連合】の勝利です!!」
奇跡を起こすも僅かに届かず、ナナキ達の闘技大会は終わりを迎えるのであった。
ありがとうございました!




