#71 初デェト!
よろしくお願いします。
ホームお披露目の翌日。
ナティの朝ご飯を頂いた僕は食堂に下りる。
「おはよう。ナナキ。ナティはどうしたんだい?」
「おはようにゃ。ニャティは今日から下級裁縫職人の修業に行ってるにゃ」
「あぁ。なるほどねぇ」
ラドンナやオグマ、ニュウにリリリがナダの朝ご飯を食べていた。
ナティは昨日のうちに生産ギルドでサブジョブを【下級裁縫職人】に変更した。それで職員さんが予め探してくれていたのか、すぐに修業先を紹介してくれた。
ナティはさっそく朝から修業に行った。
「みんにゃは今日はどうするにゃ?」
「私とオグマはクエストだね」
「あぁ」
「私達は今日はディノとツヴァルトがいないから休みね」
「そう」
お!それはいいタイミングかな?
「ニュウ」
「なに?」
「暇にゃら2人で出かけるにゃ?」
「……え?」
僕はニュウをデートに誘う。
それにニュウはポカンと目を見開く。ラドンナやリリリも少しびっくりしてる。
「……いいの?」
「ニャティからはお許し出てるにゃ。多分、昨日のはにゃしを聞いたからだと思うけどにゃ」
『あぁ~』
ニュウは少し顔を赤くするも不安そうに聞いてくる。それにちゃんとナティからは許可が出ていることとその理由を伝える。
まぁ、ナティも何だかんだんでニュウの事が心配なんだよね。昨日の夜、土下座して一度デートしてもいいかとお願いしたら許して頂けた。
本当に真巳がここに来るのかも分からないし、【ケット・シー】になるのかも分からないけどね。
僕は実は真巳が【エアスト】に来る気はしてるのだが、【ケット・シー】ではない気がしてる。
理由は、真巳はすでにナティの存在を知っているから。
僕のフレンドコード教えた後に掲示板を見たらしい。『彼女さん出来たんですね!おめでとう!』って連絡来てるんだよね。ちなみに掲示板は誰かのフレンドコードを使えば見ることが出来る。本人の許可もいるし、打ち込みは出来ないけどね。
姉は昨日、真巳が僕の事を運命の相手と思ってるって言ってたけどね。僕は違う気がしてるんだよねぇ。
実は言われてるんだよね。『裕南さんはかっこいいけど、彼氏には無理かな。お兄ちゃんって感じ』って。
一応、それはナティには伝えているけどね。まぁ、僕の主観だし、本当の事を言ってたのかどうかは分からないからね。
ということで、ナティ的にはニュウを応援したいようだ。
「【ツヴァート】で散歩とかお店探すにゃ。まだ街をあんまり巡ってにゃいから、色々見て回るにゃ」
「うん……!」
「楽しんでおいで」
「そうね。楽しんでらっしゃい」
「にゃ」
「うん」
ニュウは頬を薄っすらと赤らめながら微笑んで頷く。
さぁ、今日はニュウと楽しもうかな!
特に準備もないので、すぐさま【ツヴァート】に移動する僕達。
ポータルはそれぞれの街の噴水広場にある。ちなみに冒険者ギルドからクラン・ホームに帰る扉はあるが一方通行なので、クラン・ホームからギルドには移動できない。
さて、どこから行こうかな。
「ニュウは街を見て回ったにゃ?」
「ううん。武器屋や防具屋は見たけど、他はまだ見てない。最近は【アサシンリーダー】や【蹴闘士】の練習ばっかりしてたから」
ニュウはメインを【アサシンリーダー】、サブを【蹴闘士】にした。それに慣れるためやレベルアップのために討伐メインのクエストしてたらしい。
「じゃあ、雑貨屋にご飯屋、公園とか回ってみるにゃ!」
「うん」
並んで歩き始める僕達。
でもね、うん。弟と姉にしか見えない。ニュウも小さいのだけどね。僕の方がさらに小さいからなぁ。
それでも!
「にゃ」
「え?」
僕は腕を伸ばし、ニュウの手を握る。子供に見られようがね。僕達はカップルだ。手くらい握るさ。
ニュウは驚いているが、手は離さなかった。
「どうしたにゃ?」
「……ううん。なんでもない」
ニュウは頬を赤くしながら嬉しそうに微笑む。
うむ。かわいい。普段は無表情っぽいからね。こういう表情は新鮮。
僕達は店が並ぶ通りを訪れた。
何店か雑貨屋で小物を見て回る。
う~む。ニュウにはしっくりこない物が多いなぁ。
次に服屋に寄る。
その時、ふとある服が目に入った。
「にゃあ?」
「?どうしたの?」
「にゃあ~」
「え?」
手に取った服をニュウに合わせてみる。
うん。似合いそう。これなら斥候の雰囲気も損なわないきがする。
そこに店員の女性が笑みを浮かべて近づいてくる。
「ご試着されますか?」
「にゃ!」
「え?」
「着てみてにゃ」
「う、うん」
ニュウはまだ少しオドオドしてるけど、試着室に入っていく。
楽しみだね。
5分もせずに試着室が開く。
「おぉ~!!」
「……似合ってる?」
「もちろんにゃ!」
「お見事ですね!」
ニュウが着ているのは簡単に言えば【くノ一】衣装だ。
ノースリーブの上衣のみの着物で、左側が紫、右側が藍色になっている。帯は黒で、黄色の帯締め。袖は二の腕で縛って固定するタイプの振袖。下は紫のホットパンツの下に黒タイツ。
うむ!ナイス!
「後は……首元ににゃにか巻いてもいいかにゃ?」
「そうですねぇ。……いえ、ならば」
「にゃ?」
「これはどうでしょう!」
店員さんが取り出したのはノースリーブのタートルネックのフィットシャツ。
ほぉ!
「これも着てみてください!」
「は、はい」
ニュウは店員さんの勢いに押されて、引きながら受け取る。そして、また試着室に戻り、すぐに出てくる。
「似合ってるにゃ!」
「……そう?」
「はい!イイ感じです!」
肩だけ露出しているのが妙に色気がある。
うん!
「買いで」
「ありがとうございます♪」
「え?」
「このまま着ていきますにゃ!」
「ナナキ。いいの?」
「にゃ。これで和服のお揃いにゃ」
いいじゃんね。今日は別に戦うわけじゃないし。
もちろんお金は僕持ちです。頑張ってるんだぞ!少ない小遣いでね!
……明日からちょっとクエスト頑張らないと。
「ありがとう。ナナキ」
「にゃあ」
「またのお越しをお待ちしております♪」
ニュウは目を細めて嬉しそうに微笑む。
喜んでくれたならよかった。
次はお昼ご飯を食べようということでご飯屋さんを探す。
この街って何がおすすめなんだ?調べてなかったなぁ。
まだプレイヤーが店を出しているのはいないだろうしなぁ。
う~ん。喫茶店で攻めてみるか。
「ここにするにゃ」
「うん」
純喫茶風の店【イングランデ】に入る。
「いらっしゃいませ」
「【ケット・シー】でもいいですかにゃ?」
「もちろんですよ。あちらの席にどうぞ」
眼鏡をかけた白髪オールバックの紳士マスターは、微笑んで奥の個室を示す。
ジェントルメェン!
テーブルに近づくと、マスターは子供用の椅子を持ってきてくれた。
マジ紳士。
お礼を言って、席に座る。メニューを開いて、僕はハンバーグとコーヒーを、ニュウはカルボナーラとオレンジジュースを注文する。
「ニュウはこのゲームが初めてにゃ?」
「ううん。1つだけ他のをやってた。でも、すぐにDTO発売になって過疎化しちゃったから」
「あぁ~、にゃるほど」
「初めからこっちを主体にするつもりだったから、別に良かったんだけど。あんまり練習にならなかった。しかも始めたのに、友達はみんな他の街だった」
「そこでディノに?」
「うん」
いい出会いをしたなぁ。僕も人の事は言えないけど。
「友達には?」
「言ってない。皆は重婚は否定的だった。話すとメンドクサイことになる」
「にゃ~」
「別にいい。恋愛なんて他の人に話したいなんてあまり思わないから」
その後、届いたご飯に舌鼓を打つ。
うん!ウマー!
ニュウも目をキラキラさせて食べている。
ここは当たりだな!
「美味しいにゃあ」
「うん……!……ここもナティと来る?」
ニュウが少し首を傾げて尋ねてくる。
「にゃ?……いや。ここはニュウとだけ来るにゃ」
「……うん」
ナティにはナティで、また見つければいい。
ニュウは少し嬉しそうに微笑む。
かわいいね!
その後、デザートでホットケーキを貰った。
これもウマー♪
コーヒーも美味しかった。
……マスター。恋愛相談は可能ですか?
「気の利いたお答えは出来かねますが。こんなしがない老人でよいのであれば」
ニコリと微笑みながら答えてくれるマスター。
こういう紳士に憧れるよね。
喫茶店を後にして、しばらくブラブラする。
もちろん手を繋いで。
途中で美味しそうな果物を見つけてはナダに何か作ってもらおうと買ったり、リリリやラドンナ達にも似合いそうな小物を探してみたりと店を覗いてみる。
もちろんニュウにも似合いそうな小物も探してるよ?
その途中でお店のおばちゃんに景色がいい所を教えてもらって、そこに行ってみることにした。
夕暮れ時で少しずつ空がオレンジになっていく。
「おぉ~!」
「綺麗」
やってきたのはある外壁近くの建物の屋上。屋上にはどうなっているのか、1本の樹が生えている。
建物は高めで、屋上からは街を見渡すことが出来る。街が夕陽に照らされて綺麗だ。
僕とニュウは樹にもたれるように座る。
「地元の人が知る名所ってところかにゃ?」
「多分。風が気持ちいい」
「だにゃあ」
しばらくまったりとしながら景色を眺める。
屋台で買ったたい焼きを取り出して、2人で食べながら景色を見続ける。
少しずつ夕陽が沈んできて、街の明かりが目立ってきた。
「……ここはニュウとの場所にするにゃ」
「え?……うん。嬉しい」
「ニュウには我慢させることも多いからにゃあ」
「構わない。ナティが一番なのは当然」
ほら。そうやって我慢する。
でも、それは僕が未熟なだけだ。
「……僕は、リアルでは友達は3人だけにゃ」
「……え?」
「少し前に色々と嫌にゃ噂をされてにゃ。一杯いた友達はほとんどいにゃくにゃったにゃ。残ってくれたのは昨日いたアヤニャと男友達2人だけにゃ」
「……」
僕は話すことにした。
ニュウは少し目を見開いて、僕の話を真剣に聞いてくれている。
「いにゃくにゃった人のにゃかに、告白はしてにゃかったけど付き合ってるみたいににゃかが良かった女性がいたにゃ」
「……そんな」
「その人に言われたにゃ。嘘を付いて平気で人を傷つける人でにゃしと知り合いだったにゃんて人生最悪だってにゃ」
「!!」
「それからにゃ。僕はその3人以外友達を作ったり、必要以上に接することをやめたにゃ。今ではにゃさけにゃいって反省してるけどにゃ」
ニュウは突如、僕を抱きかかえて前向きで膝の上に乗せた。
おぉ……これはちょっと新鮮。
「……私達はそんなことしない」
「もちろん分かってるにゃ。だから、みんにゃともっと一緒に色んにゃことをしたいにゃ」
「……うん」
「そこにニャティはもちろん、ニュウも横にいてくれたらもっと嬉しいにゃ」
「……うん」
「もっと頑張ってニュウを見れるようにするにゃ。僕とニュウは恋人にゃんだからにゃ」
「……っ!……うん!」
ニュウの声が少し震えた。
ナティとは違うのが当たり前。それでも恋人になったんだ。ゲームだからって適当にしていい事じゃない。受け入れた以上、僕だってニュウを恋人として見る努力をしないといけないはずだ。
ニュウはギュウっと少し強めに僕を抱きしめる。
……うん。ルナイラさんや白蓮とは違う。
ちょっと、嬉しい。こうしていたいって、思える。
だから、ニュウは僕の恋人だって、胸を張れそうだ。
「ニュウ。ちょっといいかにゃ?」
「うん?」
僕はニュウに向かい合う。膝の上だけどね。
僕はポーチからさっき隠れて買ったものを取り出す。
「はいにゃ」
「これは……?」
「ピンクチューリップのブローチにゃ」
「いいの?」
「もちろんにゃ。ニュウを思い浮かべて買ったんだからにゃ」
ピンクチューリップの花言葉は【愛の芽生え】【誠実な愛】。
今日、『愛の芽生え』をちゃんと感じたから、それに答えられるように『誠実な愛』で向き合う。2番目とか関係なく。
「……ありがとう」
ニュウは少し目尻に涙を浮かべながらも、微笑んでブローチを受け取る。そのままブローチを右胸元に付ける。
「大事にする」
「にゃあ」
「ナナキ」
「にゃ?」
「……大好きです」
「……にゃあ。僕もニュウが大好きにゃ」
2人で向き合って笑う。
空が暗くなったので、屋根から降りて、ゆっくりとクラン・ホームへと戻るために手を繋ぎながら街を歩く。
帰るとディノやリリリ達がニヤニヤと待っており、僕達をからかってきた。
それを僕は無視して、ナダに見つけてきた果物を渡して、切ってもらう。
ニュウは少し顔を赤らめて涙目になりながら、2人で相談して買ったディノ達パーティメンバーへのプレゼントを取り出していた。それを知ったディノ達が慌ててニュウに謝り、貰ったプレゼントで盛り上がる。
それを横目に僕はオクリ、蘭羅、リヴァラン、アガタと切ってもらった果物を堪能する。
意外と美味しかったので、今度も買ってこようと思った。
そしてナティも帰って来て、皆でご飯を食べる。
こうしてニュウとの初デートは何とか無事に終えたのだった。
ナナキとナティの部屋にて。
「にゃあ~(^。Ф H Ф^)」
「ご、ごめんにゃ……!」
「いいですにゃ。別にニャニャキのお迎えにゃんて待ってにゃかったですにゃ(^。Ф H Ф^)」
「本当にごめんにゃさいにゃ!」
「ニュウとのデートは随分と楽しかったみたいですにゃ(^。Ф H Ф^)」
「だ、だって手を抜いたらニャティの彼氏として失格ににゃってしまうにゃ!ニャティの彼氏として、にゃさけにゃいエスコートにゃんて出来にゃいにゃ!」
「……にゃ~」
「ちゃ、ちゃんと次はニャティと行く場所だって探してたにゃ!そこにはニュウとは行ってにゃいにゃ!」
「……にゃあ」
「そ、それにその和服に合うポンチョも買ってきたにゃ!」
「っ!……にゃ、にゃあ」
「そ、そうだにゃ!クリーム餡を使ってるどら焼きも見つけたにゃ!」
「にゃ!?……にゃ♪」
「これだにゃ」
「にゃあ♪にゃあ~ん♪」
パクっとどら焼きを食べて、とろける笑顔になるナティ。
それを横で微笑みながらも正座をしているナナキは、
(あ……危なかった……!)
背中で滝と呼べる程の大汗を流して、外に響き渡りそうな程心臓がドキドキしていたのだった。
ありがとうございました。




