#58 Shall we dance?
よろしくお願いします。
「「にゃっふうううううううう!!!!」」
『ふぇ!?』
ナナキとナティが突如両手を掲げて叫び始める。
プレイグは突然の奇行に慌てる。プレイグは基本スキル構成やステータスを見て黒ナナキ達を操っている。もちろん過去の戦闘ログも見ている。そのデータの中にこの行動はなかった。
スキルにもこの行動をさせるものは無い。だから行動が予測できなかった。
「「にゃあああああ!!」」
するとナナキが走り出し、ナティが後ろからナナキの肩を掴んで浮かび上がった。
ナナキはナティを背中で浮かせたまま猛スピードで走る。
『うぇ!?あ!!【フロート】!!』
ナティは自分にフロートを掛けて浮かんだのだ。
『ナ、ナティん!落としちゃえ!』
黒ナティが【ピット・フォール】を発動する。
ナナキはそれに嵌って落ちてしまう。
「にゃ!?にゃにゃにゃにゃーーーー!!」
しかし、すぐに穴から駆けあがるように飛び上がって出てきた。
『なんで!?ってそうか!【立体機動】か!!』
ナナキのブーツに付与されたスキル【立体機動】により壁を駆け登ったのだ。
まだナティは肩に掴まったままだ。
「うにゃっふーーーーーー!!」
「にゃはーーーー!!」
ナティがナナキの肩に乗る。直後ナナキが急にスケートみたいに滑りクルクルと回転を始め、竜巻を生み出しながら黒ナナキ達に迫る。
『いきなりこっちの物真似!?だったらナティん!【シールド・フェアリーズ】!』
プレイグが指示を出し、黒ナティがナナキ達の進行方向に盾の大群を生み出す。
カン!
コン!
『ん?』
不意にプレイグ達の近くで何かの音がした。
それを訝しむと、
『はぁ!?』
ナナキとナティがポン!と黒ナナキ達を挟み込むように現れた。
『【スイッチ】!?でもどうやってってさっきの音は石ころ!?』
ナナキは【ピット・フォール】や防がれた時のために両手に石を持っていたのだ。
盾が現れた瞬間に回転しながら石を投げたのだ。
『ヤバイ!触られたら!』
「「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃーー!!」」
『うひゃああああ!?』
プレイグは【リバース】を恐れて離れるように指示を出そうとするとナナキ達は同時に【月爪乱舞】を放って黒ナナキ達に叩き込む。
『飛んで!』
プレイグの指示に【スイッチ】を使って逃れる黒ナナキ達。その体はボロボロだった。
『回復を!』
黒ナティに回復を指示をするが、そこに【ライト・レーザー】が放たれる。
そのため黒ナティは回避を余儀なくされ回復が中断された。
「ふにゃああああ!!」
そこにナナキが全速力で走っていく。ナティも後ろから付いて行く。もちろんナナキからは置いていかれるが。
『うぅ!どっちを止めるべき!?』
プレイグはナナキを足止めするべきか、ナティを足止めするべきか迷っていた。
【シールド・フェアリーズ】や【ピット・フォール】はまだクールタイム解除まで20秒はある。
対してナナキ達の【スイッチ】は前の2つよりは短いので先に使えるようになる。
『ナナキん!ナティを落として!ナティんはナナキに壁を!』
黒ナナキがナティに【ピット・フォール】を使用する。ナティが穴に落ちる。しかし同時に黒ナティも穴に落ちた。
『あぁ!?』
「にゃっはーーーー!!」
ナナキが突如方向転換して黒ナナキに向かっていく。
『ナナキん!回って!ってはぁ!?』
黒ナナキが回転を始めた瞬間に、黒ナナキも穴に落ちる。
それを見届けたナナキは再び黒ナティの穴に向かう。さらに穴から少し離れた所にナティがポン!と現れる。そしてナティも穴に向かって走り出す。
「うにゃにゃーーー!」
『うえぇ!?まずい!』
【スイッチ】は使えない。【シールド・フェアリーズ】ももう少しだがギリギリナナキの方が先に着きそうだ。【フロート】で穴から出たって意味はない。
『くぅ!ナティん!【キューブ・シールド】!』
黒ナティの落ちた穴の周囲に光の壁が囲う。【リフレクト・ウォール】の箱型版だ。
「ふにゃああ!!【シールド・フェアリーズ】!」
『あぁ!?』
しかし、ナティは箱の中に盾を召喚する。
「【シューティングスター・フェアリーズ】にゃああ!」
『ナティん!間に合え!【シールド・フェアリーズ】!』
穴に向かって光線が大量に発射される。丁度クールタイムが終了したので指示を出すプレイグ。
箱の中を光線が入り乱れる。
その後ろで黒ナナキが穴から【フロート】で飛び出てきた。そしてナナキ達に走り迫る。
キキィーー!とナナキは急ブレーキをかけて黒ナナキに向き直してビュン!と走り出す。
「ふにゃっはーーー!!」
ナナキはまた竜巻を生み出して黒ナナキに迫る。
『くぅ!?2人とも!戻って!』
プレイグは再び【スイッチ】を使わせて黒ナナキ達を戻す。そして回復させる。
『うぅ~完全に後手だなぁ……。でも向こうも攻めきれてはない……うぅ~』
プレイグは唸りながら考える。
それはナナキ達も同じだった。
「にゃ~。後1歩ってところだったけどにゃ~」
「遠距離技が少にゃいのがやっぱりきついですにゃ」
「だにゃあ。【レイピア】の技じゃあ簡単に避けられちゃうしにゃあ」
いい感じに混乱させることは出来たが、やはりトドメが足りないのだ。
ケット・シーのスキル構成は相手をおちょくって隙を作り、不意打ちのような形で攻撃することに特化している。そのため似た者同士が戦うと非常にやりにくいことになるのだ。
今回はほぼ全く一緒のスキル構成にステータスだ。違いは装備の差だけ。さすがにトドメをさせるまでの違いはない。
「やっぱり……『あれ』を試してみるかにゃあ」
「にゃう~」
ナナキの言葉にナティは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
その様子にプレイグは首を傾げる。
『あそこまで恥ずかしがるようなスキルなんてなかったよね?【ニャニャニャ】?その派生なんて思いつかないし……』
正直さっきまでの奇行に比べれば【ニャニャニャ】なんてマシじゃね?と考えるプレイグ。
すると、ナナキがこちらに背を向ける形でナティと向き合う。
プレイグが首を傾げていると、
「ニャティ……愛してるにゃ。あんにゃ偽物にゃんかにドキドキしにゃいにゃ」
「ニャニャキ……」
『は?』
「決闘中に何やってんだ?」
急に愛を囁き始めるナナキ。それにナティも顔を赤らめてうっとりしている。
プレイグとダンディ・ボンドはそれに呆れた声を上げる。
ゆっくりと2人は顔を近づけていく。
プレイグや黒ナナキ達は両目を手で覆うもお約束通り指の隙間からガン見している。
ダンディ・ボンドは半目で見ている。
ナナキとナティの口が触れあった瞬間。
ピカァっ!!
『うきゃあ!?目が!?目がぁ~!』
「なんだ?」
突然光り輝きだした。
プレイグは眩しさに目を押さえて倒れ込んでバタバタする。黒ナナキ達も目は無いはずなのにプレイグの真似をして目を押さえてバタバタする。
そして光が収まると、そこには長身の猫人がナティをお姫様抱っこしていた。
『「はぁ?」』
プレイグとダンディ・ボンドはその光景に呆ける。
猫人は貴族のような青いフロックコートに白のスカーフを巻いた出で立ちだった。頭には赤いハットを被っている。腰にはナナキが持っていた細剣を差している。身長は180cmほどある。
「大丈夫かにゃ?ナティ」
「ニャ……ニャニャキ?」
「にゃあ」
『え!?』
「何が起こったんだ?」
やはり長身の猫人はナナキだった。その声は低く渋めでナティの呼び方も正しいものになっている。
『え?何それ!?そんなスキルなんて知らない!持ってなかったよね!?』
「当然だにゃ。これは僕達の『愛』が生み出した奇跡だにゃ。その偽物では出来るわけはないにゃ」
『え?どういうこと?どういうこと!?』
プレイグは完全に混乱している。
その代わりにダンディ・ボンドが答えに辿り着く。
「そうか……。妖精族に伝わる【愛の奇跡】だな?」
「ザッツライトにゃ」
『え!?それが!?』
ダンディ・ボンドの言葉にナナキは頷く。
「これは儚い奇跡だにゃ。準備はいいかにゃ?マイプリンセス。大丈夫にゃ。君は僕の腕の中でいてくれればいいにゃ」
「ニャニャキィ……」
ナティはポ~っと顔を赤くしてナナキの腕の中で顔を見上げながらうっとりしている。
「さぁ……僕と一緒に踊りましょうにゃ」
ナナキは左腕1本でナティを抱え、右腕を黒ナナキ達に伸ばしてポーズを決める。
その姿にプレイグと黒ナナキ達はポカンと固まっていた。
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エアストを旅立つ少し前……
僕達はタマ師匠とジェジェン先生に声を掛けられてギルドの相談室にいた。
いつもならエリマさんかシィナさんが同席するのに今日はいなかった。
僕とナティは首を傾げる。
「いいですかにゃ?2人とも。ここでのはにゃしは誰にも言ってはダメですにゃ。これは【妖精族】に属する者だけが知ることですにゃ。そしてこれは口伝で伝わっており、おにゃじ妖精族同士であっても、普段はにゃすことは禁忌ですにゃ。これはエリマ達ですら知らにゃいことですにゃ」
ジェジェン先生の言葉に僕達はピン!と背筋を伸ばしてゴクリと唾を飲む。
「これはにゃあ本来にゃら親から伝えられるものだにゃ。でもおめぇらは【渡り人】で親がいねぇにゃ。だから俺達がはにゃすにゃ」
タマ師匠も目を真剣なものにして話す。
そこまでのものなのか!?
「2人に教えるのは【愛の奇跡】と呼ばれるものですにゃ」
「「愛の奇跡……?」」
「はいにゃ。これは妖精族でさらに同種同士のみで見られる現象ですにゃ。強い愛でつにゃがっている妖精族は特定の行動を取った際に、強力にゃ力を発現しますにゃ」
強力な力?
それは僕達ならケット・シー同士で発動すると。確かに僕とナティには関係ある話だ。
「この力の問題は『それぞれで現れる力が異にゃる』ことにあるにゃ」
「それぞれで異にゃる?」
「そうだにゃ。例えば『竜のようにゃ姿ににゃる』『空から隕石を落とす』『強力にゃモンスターや武器を生み出す』『近くにいる者達の傷や病を一瞬で癒す』にゃど挙げればキリがにゃいにゃ」
なんだそれ!?
「これこそがケット・シーを始めとする妖精族達が狙われる原因の一つですにゃ。もちろん狙う連中は条件までは気づいてはにゃいですが、それでも妖精族が時折強力にゃ力を使っているのは知ってますからにゃ」
なるほど。だから口伝でのみ……そして基本親から伝えられると。多分結婚することも条件に挙げられるんだろうな。
「ちにゃみに特定の行動は『2人にとって大事にゃこと』だからそれぞれで違うにゃ。まぁ、最初は大体キッスだけどにゃ」
「「にゃ!?」」
「ただし、これは2人が『奇跡よ起これ』と相手を思いながら行わないと発動しにゃいですにゃ」
「「ふにゃあ」」
よかった……のか?まぁ、でもキスする度にドキドキするのは嫌だからいいことか。
「それに恋人ににゃったからって直ぐに使えるわけじゃねぇにゃ。だからこれが使えるかどうかは俺達でもお前達自身も分からんにゃ。【強い愛】がどれくらいかにゃんてそれぞれだからにゃ」
「それに使うときの精神状態も左右しますにゃ。普段は使えていたけど喧嘩している時には使えにゃいというのもよくありますにゃ」
確かに……つまりその時にならないとどうなるか分からないと。しかも使ってみないと何が起こるか分からないと。
博打だなぁ。
「今はあくまで【愛の奇跡】というものがあるということを知っておけばいいにゃ。そしてそれが発現した時には周りのにゃかま達には上手く誤魔化せるようにしとけってことだにゃ」
あぁ~そうか。クランの皆にも黙っておかないといけないのか。
「にゃかま位にゃらと思うかもしれにゃいですが……どこからバレるか分からにゃいですにゃ。そしてバレればその危険は自分達だけでにゃく、妖精族全体に及びますにゃ。だから申し訳にゃいですが、これだけは守ってもらいますにゃ」
「「はいにゃ」」
そうだな。他のケット・シーや妖精族を危険にさらしたくはない。
注意しよう。
「もし発現したら、バレにくい2人だけの愛の証明を考えとくにゃ。キッスじゃあいつかバレるかもしれにゃいからにゃ」
2人だけのかぁ。それは今からでも考えとこうかなぁ。
僕達は少し顔を赤らめながら、そう考えていた。
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そして、今ここにそれが発動した。
『うっそぉ!?まだ2人って付き合い始めて半年も経ってないよね!?なのに【愛の奇跡】が生まれるまでになってるの!?』
「まぁ、愛は時間じゃねぇって言うこともあるしなぁ」
プレイグは流石に慌てる。何が起きるか分からないからだ。
「では……行くにゃ」
ナナキはナティを抱えたままシュパッ!と走り出す。
「ニャニャキ!私は降りますにゃ!」
「にゃあ。大丈夫にゃ。マイプリンセス・ナティ。君を抱えているからこそ僕は最高の力を発揮できるにゃ」
「で、でも重い……かもですにゃ」
「にゃあ。そんなことあるわけないにゃ。今も君は羽の様に軽く感じてしまって、もっと強く抱きしめてないといないのではないかと不安になりそうだにゃ」
「にゃ……にゃあ~~!」
ナナキの言葉にナティは顔を真っ赤にして両手で目を隠してイヤンイヤンと悶える。
その様子をナナキは愛おしそうに目を細めて微笑む。
『おぉう……なんてラブラブ空間……!ナナキく……いや、ナナキ王子恐ろしい子……!ってヤバ!?ナナキん!』
プレイグはナナキが目の前に来て慌てて指示を出す。
黒ナナキが剣を抜いて、前に出る。
『いくらラブラブでも右手一本で勝てると思うなよ!』
「十分過ぎるにゃ」
黒ナナキがナナキに迫ろうという瞬間、ナナキの姿がブレて消える。気づくと黒ナナキの後ろに右腕を横に伸ばした状態で立っていた。
『え?』
プレイグが目を見開いた瞬間、ズバババババババババン!!と音を立てて黒ナナキの全身が切り刻まれて仰向けに倒れる。そのまま起き上がることはなかった。
『えええええええ!?』
「これで終わりだにゃ」
スッと黒ナティの後ろに現れ、首の後ろにトン!と手刀を当てるナナキ。
黒ナティはポテっと前のめりに倒れる。黒ナティもそのまま起き上がることはなかった。
『え!?うそぉ!?起きて!頑張ってナにゃちゃんズ!起きてぇ!!』
プレイグは叫ぶも黒ナナキ達はそれに応えることはなかった。
「なんとまぁ……。K.O!!ウィナー!パーティー・ナナキ!!」
『うっそおおおおおぉぉ!!!』
ダンディ・ボンドが決闘終了を告げる。
勝者宣言にプレイグは叫びながら崩れ落ちる。
「にゃあ。マイプリンセス・ナティを抱く僕に勝てる相手なんていないのにゃ」
「ニャニャキィ……」
「にゃあ」
それを横目にナナキは右手でナティの両手を握りながら見つめ合う。
ナティはもはや決闘なんて頭から吹っ飛んでかっこよすぎるナナキをうっとりと見つめる。
こうして神の遊戯はナナキ達の愛の前に蹴散らせたのだった。
ありがとうございました。




