#26 現実世界その1
現実パートです。
少々不快になる表現があります。
よろしくお願いします。
裕南の部屋。
「ふわぁ~。ねむ」
月曜日の朝6時。目覚ましが鳴り、目を覚ます。
「さて、とりあえず」
裕南はヘッドギアを被り、ログインする。
これは、ログアウト中ゲームの進む時間がリアルと同じ時間で進むからだ。
登校前にゲームの中で夜まで過ごし、早めに寝てログアウトすれば学校に行ってる間は夜だからだ。
裕南は1時間後ログアウトし、朝ご飯を食べて弁当を用意して登校する。
学校に向かって歩いていると。
「裕南!」
「おはようございます!裕南先輩!」
「おはよう。潤。綾」
やってきたのは2人の男女。
親友の中島潤と妹の綾だ。
「裕南!お前はDTOでどこにいるんだよ。結局未だに会えないじゃないか」
「そうですよ先輩!私達ずっと探しているんですよ!」
「悪いとは思っているよ。でも、せっかくなんだから楽しまないと」
2人はDTOで未だに裕南を見つけられない。
「私は先輩と一緒に楽しみたいのです!」
「まさかクランなんて作ってないよな?」
「あ~。ごめん。出来ちゃった」
「「えぇ!?」」
2人は裕南の言葉に驚く。
「どこだ?名前くらいは教えてくれよ。」
「う~ん。秘密」
「そんな~」
「2人も色んな出会いを楽しみなよ。クランが一緒じゃなくても楽しめるんだから」
裕南はまだ2人に教えるつもりはない。
「マジかよ~。ヒントもないのか?」
「多分、僕のこと見たことはあるんじゃない?」
「ということは珍しい種族ですね。う~ん」
綾は裕南の言葉を聞いて、思い出しているようだ。
話しているうちに学校に着いた。
綾と別れ、潤と教室に入る。
クラスメイトと簡単に挨拶する。
「お~う。席座れ~。HRやるぞ~」
予鈴が鳴り、入ってきたのはおっさん教師の団藤だ。団ちゃんと呼ばれ意外と生徒からは好かれている。
団藤は気だるげに連絡事項を話していく。
「あ~。最後に、昨日DTOってゲームが販売されたのは知ってるな。多分この中にも始めてる奴はいるだろう」
団藤がDTOについて話し出した。
「まぁ、基本的に学校は不介入だが、ゲームのし過ぎで成績が下がるなら補習を容赦なく受けさせるからな。あと、ゲームのいざこざを現実や学校に持ち込んで犯罪に抵触しても学校はかばわんぞ。停学・退学はあるからな。それを頭に入れて遊ぶように」
「団ちゃんはやってるの?」
生徒の1人が質問する。
「ん?俺か?んなもん、やってるに決まってるだろうが」
団藤はその質問に親指を立てて答える。
団藤が人気な理由はゲーマーであることが大きい。
生徒と人気ゲームの攻略とかで話が合うのだ。
「フレ登録しよ~」
「やだよ。なんでゲームでまでお前らの面倒見なきゃならんのか。俺は嫁と遊ぶので忙しい」
なんと夫婦でDTOにいるようだ。
授業を受けて、昼休みになる。
「裕南。弁当か?」
「うん」
「じゃあ先に中庭行っててくれ。俺は購買で買ってくる」
「分かった」
裕南は弁当を持って歩いていると。
「あれ~。木花君じゃーん」
「………高棚君。なんか用?」
「冷たい態度だなぁ。友達だろ?なぁ」
ニヤニヤ笑いながら裕南の肩を拳で叩く。
少し力が強く、ジンジンと痛む。
高棚はニヤニヤと笑っている。
「はは。じゃあな。また放課後にでも遊ぼうぜ」
「………」
そう言って高棚は去っていく。
裕南はそれを冷めた目で見送っていく。
「来たか裕南」
「尚。先に来てたの」
「お前から聞きたいことが山ほどあるからな」
「DTOのことなら、頑張って探してね」
「てめぇ」
「ははは」
中庭のいつもの場所には、すでに人がいた。
親友の福永尚。
クラスが違うため、いつもここで会うことになっている。
「けっ。変なところでいやらしい奴だぜ」
「それもゲームの醍醐味だよ」
「ふん」
潤と綾が合流し、食事を始める。
「2人は珍しいね。弁当忘れたの?」
「どうせ、遅くまでDTOしてて寝坊しただけだろ」
裕南の疑問に尚が答える。
「わりぃかよ」
「先輩を捜していただけです」
それに潤と綾が拗ねたように言う。
話題は襲撃の話にもなった。
「そっか。3人はギルドにいたのか」
「あぁ、そこが一番お前がいる可能性があったからな」
尚が言う。
「まぁ、あの女ドワーフの2人がいなかったら大神殿にいただろうけどな」
「女ドワーフ?」
「オクリさんと蘭羅さんという方々です。物凄い力で敵を薙ぎ払ってました」
「あれは凄かったな」
「あぁ。あの2人か」
潤と綾の言葉に、裕南も納得したように呟く。
その様子を尚が見ているのを、裕南が気づかなかった。
「あれ?中島君達じゃん。君達もここでご飯食べてるんんだ」
「ん?」
そこにいたのは茶髪のショートカットの女子。
クラスメイトの月見里奈々だ。
「月見里さんか。お前もここで?」
「普段は教室だけどね。今日は外で食べようって奈季と決めたの」
月見里は後ろにいた女子を示す。
名前は射手矢奈季。彼女は黒髪の長髪で、前髪で目元が隠れている。
クラスメイトだが、ほとんど話したことはない。
成績は学年でトップ10入りするほどだが、物静かな性格で目立たない。
「というか、君達って仲良かったんだね。知らなかった」
「そりゃ、クラスも学年も違うからな。ここくらいしか集まらねぇよ」
「そっか」
簡単に話をして、月見里達は去っていく。
裕南はその後ろ姿を目で追う。
「どうした?裕南」
「いや。月見里さんを学校以外であったことがある気がして」
「なんだ?タイプか?」
「違うよ」
月見里の顔に既視感を感じたが、潤のからかわれたので考えるのをやめる。
4人は時間ぎりぎりまでDTOのことで盛り上がる。
「どう?奈季。たまには外で食べるのもいいでしょ?」
「うん」
2人は木陰に座り、昼食を食べる。
「初めてよかったでしょ?DTO」
「うん。楽しかった」
「それはゲームとして?それとも?」
月見里はニヤニヤして尋ねる。
射手矢は顔を赤らめる。
「もう。奈々。しつこいよ」
「ふふ。ゴメンゴメン」
月見里は射手矢に軽く謝る。
「いやー、まさか初日でパートナー作るんだもん」
「私だって……す、好きになると思わなかったもん」
射手矢は顔をどんどん真っ赤にしていく。
月見里はそれを見て苦笑する。
「そう?私はお似合いだと思ってたよ?」
「ほ、ほ、本当に?」
射手矢はお似合いという言葉に照れる。
「お似合い。お似合い。性格も似てるしねぇ。年も同じくらいじゃない?」
「そうかな?」
射手矢は少し不安そうだ。
「ま、現実で会えるかなんて分かんないんだから。気にしてもしょうがないよ」
「うん」
月見里は再びニヤニヤと見る。
「早く会いたいよねぇ。愛しのナナキ君に。ニャティちゃん?」
「も!もう!ニナ!」
授業が終わり、潤達は部活に行った。
潤はバスケ部。尚は将棋部。綾は料理部だ。
裕南は帰宅部だ。
特に寄り道することなく、自宅に向かう。
「お。みぃ~っけ」
「っ!」
前から現れたのは高棚だった。
後ろには他にも男達が言う。
「ちょっと一緒に遊ぼうぜぇ?裕南く~ん」
高棚は裕南の肩を組みながら言う。
裕南は逃げられないと悟った。
路地裏。
「ぐぅ!?」
裕南は腹を押さえてうずくまる。
「ほら。さっさとお金渡してよ。友達だろ?」
高棚は裕南の腹を殴り、うずくまった裕南に話しかける。
裕南は高棚から中学の頃からいじめを受けていた。
お金を恐喝され、時には物を盗まれたりした。
高棚が卑劣なところは、絶対に学校内では仕掛けないことだ。
登下校の時を狙って、証拠を残さないように仕掛けてくるのだ。
それを昔、教師に訴えたが相手にされず、さらに高棚に教師に言ったことがバレて周りに嘘つきと印象操作された。
それで潤達以外の友人は離れていった。
当時、付き合ってると言えるくらい仲が良かった女子も、それで離れていった。
それが止めとなり、裕南はそれ以降、積極的に友人を作るのをやめた。
裏切られるのがつらいから。
裕南は家から少し離れた進学校に行くことを決めた。
家のすぐ近くにも高校はあり、多くのものが中学校からそのままそこに進学する。
裕南は成績は上の中くらいだったので、問題なく進学できた。
潤達も一緒に進学できた。
しかし、入学するとそこには高棚の姿があった。
裕南の姿を見て、ニヤニヤしているのを見つけたときは絶望を覚えた。
なぜ、この学校に進学したのかは未だに知らない。
知りたくもない。
「ほらぁ。早く。困ってるんだよ俺達。友達だろ?」
高棚は手を出して言ってくる。
「………悪いけど、高いゲームで使ってね。金欠だよ」
裕南は財布を出して、高棚に渡す。
高棚は財布を見る。そこには千円程度しかなかった。
高棚はイラついた顔をして財布を裕南に叩きつける。
「役に立たねぇ友達だなぁ!ゲームってあれか?DTOだろ?」
高棚はニヤついて聞いてくる。
「なら、それを寄越せよ。今からお前んち行くわ」
「君、僕の家知ってたっけ?」
裕南は高校に行く際に、たまたま父親の用事で引っ越しをした。
中学校に入る際も引っ越しをした。
元の家からほとんど離れてはいないが。
それを知ってるのは潤達だけだ。
高棚は前の家も、今の家にも呼んだことはない。
だから、知らないはずだ。
「あぁ?一緒に行けばいいだろうが」
「断るよ」
「…………てめぇ、相変わらず舐めてくれんなぁ」
いじめられてるとはいえ、裕南は一度も屈したことはない。
そのせいで続いてるのかもしれないが、だからと言って屈する理由にもならない。
高棚はイラついた顔をして、仲間の男達と裕南を殴ろうとしたが。
「やってもいいけど。そのときは被害出すよ。ここまでの道で防犯カメラには映ってるだろうしね」
裕南の言葉に全員が止まる。
「はっ。俺らがやったって証拠は出んのか?」
「気づいてないんだ。さっきからそこで防犯カメラがここを映してるよ?」
「な!?」
高棚達は周りを見回し、一台の防犯カメラを見つけた。
「ここらへんは暴力団排除に力を入れてるから、人目が少ない路地には防犯カメラがあるんだよ」
「て、てめぇ!!」
高棚は顔を真っ赤にして、怒りに震える。
「……この落とし前は、絶対に、つけさせるぞ。いいな?」
そう言って、高棚達はそそくさと去っていく。
「はぁ~。小物だねぇ。だからこそ面倒なんだけど」
裕南は体を起こし、汚れを落とす。
財布をポケットにしまい、端末が壊れていないか確認する。
「さて、帰り道も気を付けないとね。バスの時間も考えていかないと。」
裕南は歩き始める。
バスの到着時間ギリギリまで時間をつぶして、バスがドアを閉める直前で乗り込む。
(バスの乗り方も今後は考えないとな。自転車も考えるか)
裕南は家に帰り、着替えて一度ログインする。
また夜になるのを待ってログアウトし、晩御飯と風呂の準備をする。
「ただいま」
「お帰り姉さん」
姉が帰ってきた。
晩御飯を食べ、姉が先に風呂に入る。
そのあとに自分も入る。
風呂から出て、ゲームをするために飲み物などを準備しているとき。
「ゆ、裕南」
姉が声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「デ、DTO。買ったんでしょ?」
「うん。そうだけど?」
何が言いたいのか。
裕南が内心首を傾げてる。
姉は何処か落ち着きがない。
「ど、ど、どこで」
「?」
「どこで何してもいいけど、勉強とか疎かにしちゃだめよ」
「分かってるよ」
姉のお小言に答えて、裕南は部屋に戻る。
リビングにて。
「うぅ~。またやっちゃったぁ」
姉の穂果が涙目になって嘆き、ゲーム内で親友にお小言を言われてさらに落ち込むのであった。
裕南は目覚ましをセットして、ヘッドギアを被る。
「………ナティとどこに行こうかなぁ」
裕南は恋人とどう過ごすか考えて笑う。
早く会いに行こうと、裕南はログインする。
ありがとうございました。




