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#21 猫に飛び付く妖と忍ぶ兎

編集後です。


よろしくお願いします。

 カラナが暴れているスミス・ストリートの反対側でもバリケードが順次作られ、防衛戦が続いている。


「ええい!どこからこんなに湧いてくるんだい!?邪魔だよ!」


 ラドンナが剣で敵を吹き飛ばす。その隣ではオグマが拳を振るっている。


「このままではいかんな」


 オグマの顔も険しい。

 他の冒険者も随分と消耗している。

 トロールも出てきている。倒したが何人かが死に戻りした。

 NPCの冒険者は、プレイヤーがなんとか死ぬ前に後ろに下げた。

 着実にお互いに戦力を減らしている。

 他のプレイヤーの話では、他の冒険者達はギルドや役所に移動しているらしい。

 つまり、ここへの増援は期待薄である。


「オグマ!あんたの【地変】で壁作れないのかい!?」

「出来なくはないが、この広さだとトロールの攻撃ですぐに砕ける。それにここだけ塞いでも意味はない」

「けっ!本当にやっかいだねぇ!」


 ラドンナとオグマが前面に出て敵を倒す。

 流石に2人も体力が限界に近づいていた時。


「ヤバイ!?」


 トロール1体が2人を突破し、バリケードに向かって走る。

 ラドンナとオグマは止めようとするも、周りの敵が邪魔をしに来る。

 トロールがバリケードに向かって、棍棒を振り上げる。

 バリケードにいる冒険者が目を瞑る。


「【リフレクト・ウォール】!」


 バリケード前に光の壁が生まれ、棍棒を弾き返す。

 バランスを崩すトロールの足元に近づく小さい影が1つ。


「【フリップ】!」


 急にひっくり返るトロール。


「【ピット・フォール】」 


 さらにトロールの下に落とし穴が生まれ、上半身が落ちる。

 周りが驚く中、オグマとラドンナはその正体に気づく。


「ナナキ!ナティ!」


 現れたのはナナキとナティだ。

 2人は落とし穴にはまったトロールに攻撃を加えて倒す。

 オグマ達は2人に近づく。


「無事だったかい。良かったよ」

「そっちもにゃ。手伝うにゃ」

「助かる。しかし、それでもきついな」


 オグマはナナキ達の救援に喜ぶが、それでも戦力の差は大きかった。

 

「でも、やるしかないだろ!」


 ラドンナは近づいてきた敵を倒す。

 オグマとナナキも前に出て、敵を倒していく。


「【ピット・フォール】、【ヒーリング・ライト】」


 ナティが魔法で援助する。

 敵を落とし穴に嵌め、オグマ達を回復する。

 オグマが敵を落とし穴に落とし、スキルで攻撃する。


「【地変《狭砕》】」


 穴が敵を挟むように閉じて、敵を圧殺する。

 上手く嵌ってはいるが、魔力が厳しくなってきたため手札が減ってきた。


「ええい!剣がやばいね!矢も尽きちまったよ!」

「魔力がもうにゃいにゃ」

「こっちもだ」


 ナティも途中から回復魔法に専念している。

 しかし敵はまだまだ攻めてくる。

 ナナキ達は肉弾戦で戦いを余儀なくされていく。


「にゃああ!?」


 敵がナナキの尻尾を掴んで、上へと投げる。


「「ナナキ!?」」

「ニャニャキ!?」


 ナナキは突然の投げに体勢が整えられず、頭から落ちていく。

 3人は駆けつけようとするが、敵が邪魔をする。

 ナナキは死に戻りの覚悟を決める。


「あら。これはラッキーですわ」

「にゃ?」


 声がしたと同時にナナキを何かが包む。

 それが腕だと分かったのは、腕の主に抱えられ、顔が目の前に来たからだ。


「大丈夫ですか?ナナキ様。」


 助けてくれた人はゆっくりとナナキを降ろす。

 ナナキは助けてくれた人を見る。


 その人は薄い水色のワンレンロングに毛先がゆるめのパーマで、黒のライダーズジャケットと黒のタイトパンツを着た女性。冒険者には見えないが、腰には鍔無しの太刀が吊られている。肌が白く、生気がないように見えるのにどこか艶かしい雰囲気を持つ。


「助けてくれてありがとうございますにゃ」

「いえいえ。ナナキ様をお助け出来て何よりですわ。わたくしは白蓮と申しますわ。ジョブは侍ですわ。お見知りおきを」

 

 見た目とは異なり、上品な話し方をする白蓮。


「僕のことを知ってるのですかにゃ?」


 ナナキは名前を名乗った記憶はない。

 白蓮はふふっと笑う。


「お2人は有名ですから」

「にゃ?」

「ここからはわたくしも参加いたしますわ。ナナキ様達は少しお休みくださいませ」

「1人でですかにゃ?」

「私達もいるよー」


 声のした方を向くと、そこには2人の女性がいた。

 1人はピンク色の髪をポニーテールにしており、白蓮と同じく肌が白い女性。首元にはネックウォーマー、灰色の重鎧を身に着け、手には黒い鎌を持っている。

 もう1人は紅い髪をソフトモヒカンにしている女性で、へそ出しノースリーブのトップスにホットパンツと露出が多い服装をしている。スタイルも良い。


「これくらいなら少しは耐えられるから大丈夫」


 ピンク髪の女性が言う。


「おぬしらは武器を補充したら、また参加してくれれば十分じゃ」


 紅髪の人も休憩を勧める。

 白蓮はナナキに向かってほほ笑む。


「ねぇ?大丈夫ですわ」

「にゃ~。分かりましたにゃ。ちょっとだけお願いしますにゃ」


 そう言ってナナキはラドンナ達にも声を掛け、一度補給に向かう。

 白蓮はそれを笑顔で見送り、2人に合流する。


「では、ナナキ様のために頑張りましょう♪リヴァラン。アガタさん」

「はいはい。頑張ろうね。アガタ」

「やれやれじゃのう」


 3人は敵へと飛び掛かる。 


 白蓮は太刀を抜き、敵へと迫る。

 敵を2人軽やかに斬り倒す。

 敵が攻めかかってくるも。


「【凍てる鎌鼬】」


 白蓮が太刀を振るうと風の刃が生まれる。するとさらに、風の刃が凍り、氷の刃となり切り裂いていく。


 敵は白蓮の得体の知れなさに近づけない。

 白蓮は相手に妖艶な笑みを見せる。

 普段なら男共はそれを喜ぶが、戦場で見せられると恐怖でしかない。

 男達は一歩後退る。


「あら。淑女に対して失礼ですわね。【凍える息吹】」


 白蓮は口元に左手を添え、フゥっと息を吹く。

 すると、白い霧のようなものが男達に向かって飛ぶ。

 男達は慌てるも逃げなかった。それが仇となったが。

 男達の体が、白い霧に触れたところから凍り始める。

 驚いてる間に全身が凍っていき、体が動かなくなる。

 白蓮は太刀を脇に構え、


「さようなら。【横一文字】」


 太刀を横に振り抜くと剣閃が飛び、男達をすり抜けていく。

 すると、男達の体が斜めにずれていき、上下に分かれて倒れる。

 上側は地面に落ちると、粉々に割れて砕ける。

 生き残った者たちはその光景におびえる。


「な……なんだよお前は」

「わたくしは【雪女(スノーレディ)】。さぁ、(わたくし)に抱かれて死にたい方はいらしてくださいませ」

 

 男達は白蓮から逃げようとする。

 すると白蓮の後ろから影が飛び出てくる。

 リヴァランだ。


「その首もらうよ」


 リヴァランが鎌を振るう。

 1人の首が飛び、血が噴き出る。


「ひぃ!?く、くるな!」


 近くにいた男は腰が抜けるも、抵抗のつもりか手元にあった石を投げる。

 リヴァランはそれを首を軽く動かすことで避ける。しかし、戦いで出来た地面の窪みに足を取られてバランスを崩す。


「あっ」


 バランスを崩して、体が後ろに傾く。


 しかし、なぜか首はそのまま同じところにあった。

 

 首が浮いていたのだ。

 

「あぶなかった」


 首が浮いていることに、それを見た全員が動きを止める。

 首が浮いていることもそうだが、首が普通に声を出したことや体が普通に動いていることにも理解が及ばずに固まる。


「残念ですが、ばっちり見えてましてよ」

「むぅ。やっぱり戦うと首がずれるか」


 リヴァランは口を尖らせるも、すぐさま次の敵に斬りかかる。


「いくよ。覚悟してね!」


 リヴァランは鎌を振るう。

 1人斬ると、その後ろから顔を狙って矢が飛んでくる。


「よっと」


 リヴァランは首を高く飛ばして避ける。

 それを見て、敵が騒めく。


「ば!化け物!」

「その通り。あたしは【首無し】だからね」


 リヴァランは首を浮かせたまま、敵を斬り続ける。


 その横で、アガタに向かって敵が集団で突っ込む。

 アガタは拳を構え、冷静に対処する。


「ふっ!はっ!」


 最前にいる男2人を殴る。男2人は後ろに倒れ、後続の邪魔になる。

 そこにアガタは手から火を生みだし、敵に放つ。


「【バーン・インパクト】」


 爆発音と共に火が吹き荒れ、男達を焼き払う。


「はぁ!?ま、魔術師か!?殴っといて!?」

「残念じゃのう。魔術師ではない」


 アガタは再び手に火を生み出す。


「我は精霊にして魔人。【イフリーテ】じゃ。【フレイム・ショット】」


 アガタは不敵に笑い、魔法を放つ。

 火の中をものともせず、アガタは歩みを進める。

 その姿に敵は慄く。


 その様子をナナキ達は補給と回復を行いながら見ていた。


「全員すごく珍しい種族だにゃ。」

「というか、雪女とイフリーテって一緒にいて大丈夫なのかい?」

「お互い反対側で戦っているから、あまり良くはないんだろうな」

「それでも強いですにゃ」


 4人は補給を終える。


「どうするにゃ?」

「そうだねぇ。……オグマ。真ん中に壁作れるかい?そうすれば、2人も戦いやすいだろう」

「分かった」


 オグマは前に走りながら、壁を作る。

 そのままアガタの方に行き、戦いに参加する。

 ナナキとラドンナは白蓮の方に参加する。

 ラドンナは弓で牽制し、ナナキも魔法で敵の足並みを乱していく。

 壁のおかげでアガタの炎と、白蓮の氷は勢いを増し、敵を殲滅していく。

 

 トロールも全滅させた頃、1度下がった冒険者達も出てきた。

 戦況は完全に冒険者に傾いた。

 

 

 ナナキ達は出てきた冒険者達と交代し、この後の予定を考える。

 なぜか白蓮はナナキを腕に抱えている。

 それを見てナティが頬を膨らませる。

 ナナキは抵抗しているようだが、抜け出せない。


「そろそろ降ろしてくれるかい?彼女が落ち着かないんだよ」

「あら。では、ご一緒に♪」

「にゃあ!?」


 白蓮はさらっとナティも腕に抱える。

 2人を交互に頬擦りし、堪能する。


「やめんか」

「あう!?」


 アガタが白蓮を殴る。

 その隙に2人は離れて、ラドンナの陰に隠れる。


「あら。残念ですわ」

「嫌われても知らんぞ」

「それは困りますわ。大人しくしますわ」


 白蓮はそう言って、ウィンドウを開く。

 ラドンナはそれを見て、ため息を吐く。


「はぁ。で?これからどうするんだい?」

「他の所はどうにゃんですかにゃ?」


 ナティが尋ねる。


「ギルドは大丈夫だろうねぇ。大神殿も集まってるだろうし。東門は言わずもがな」

「ここで待機するのもありだな」


 ラドンナとオグマが言う。

 白蓮はウィンドウを開いて、何かを考えている。


 ラドンナがその様子に気づく。


「どうしたんだい?」

「ギルドも大神殿も、ほぼ敵の掃討を終えていますわ。役所も防衛網が出来たようですわ」


 その言葉に全員が白蓮を見る。

 どうやら彼女は掲示板を見ていたようだ。

 それを聞いて、アガサが質問する。


「ふむ。まぁ、考えられたことではあるの。東門も大丈夫なのか?」


 東門は最初に襲撃されたところだ。

 それも白蓮はきちんと調べていたようだ。


「東門なんて、真っ先に戦闘系クランが集まっていますわね。他の門も戦闘系クランが参戦して、ほぼ終了。終息に向かっていますわね。ただ……」

「ただ?」


 リヴァランが合いの手を入れる。

 白蓮はウィンドウを見たまま続ける。


「街中に現れた敵が出てきた場所がまだ不明のままですわ。あとは、スラム、農業部の敵の掃討がやや遅れ気味ですわね」


 その言葉に全員が考える。

 白蓮はウィンドウを閉じて、提案する。


「わたくしは農業部に行きますわ。敵の隠れ家は落ち着いてからでも探せばいいですが、農業部の被害は街の生活に響きますわ」


 白蓮の言葉にナナキ達は考える。


「お。なら、私も行く」


 白蓮が言うと、それにリヴァランが乗ってくる。


「では、我もそちらと同行しても良いかの?」


 アガタである。


「あら。よろしいですの?」

「まぁ、何もせんよりは何かできるところに行くべきだの」


 ナナキ達も農業部に行くことを決める。

 それに白蓮は嬉しそうに笑う。


「あら。では、一緒に参りましょうか♪」


 そう言って、白蓮はまたナナキ達を抱えて歩きだす。


「「にゃ~」」


 2人は諦めたように鳴く。


 ラドンナ達はため息をついて、移動を開始する。


 

 


 時は襲撃が始まってすぐ。

 場所は南門と東門の中間にある住宅街。

 そこでも、戦いは起きていた。


「ちぃ!リリリ!そっちに行ったぞ!」

「分かったわ!」


 ディノたちのパーティーは、住民の避難の殿を務めていた。

 しかし、周りに冒険者は少なく、手が足りていなかった。


「『地よ!波を起こして敵を飲め!』【アース・ウェーブ】!」


 ツヴェルトが魔法を放つ。

 地面を荒らし、敵を進みにくくした。


「『敵の脅威を止めよ』【リフレクト・ウォール】」


 シェーンが魔法で壁を作り、敵の魔法や矢を住民に届かないようにする。


「敵を押し流せ【ウンディーネ】!」


 リリリが水の精霊を召喚する。

 水の精霊は大量の水を生み出し、敵に叩きつける。

 敵が水に飲み込まれていく。


「これで時間稼ぎは出来たか?」


 ディノが肩で息をする。

 しかし、足音が聞こえ、近づいてくる。。


 ディノは苛立つ。


「あぁ!チキショウ!魔力はいけるか!?」

「悪いが同じことを後2回までだよ」

「「同じく」」


 ツヴェルトの言葉にリリリ達も同意する。

 ディノは不利と断じる。

 かと言って、逃げられない。


「やってやるぞ!【アンカー・シールド】【アラウンド・フィールド】!【ウォークライ】!」


 ディノは防御力を上げ、それを味方にも付与。そして、自分にヘイトを集める効果を持つスキルを使い、吠える。

 敵はディノを真っ先に狙う。

 ディノは盾を構え、攻撃に備える。


 同様の作戦を2回行い、ディノ達は撤退を開始する。

 そこにニュウが合流する。


「避難は8割完了。他の冒険者も護衛に付いてくれてる。ギルドに向かってる」


 ニュウは住人の護衛と逃げ遅れた住人の探索を行っていた。

 しかし、ニュウが合流するも出来ることは、相手の襲撃を阻害し、撤退を援護することだけだ。

 

 ニュウは屋根上や路地裏に潜んで、敵を奇襲する。

 特に魔術師とトロールを狙う。


「【サイレント・ムーブ】」


 物音を立てずに、魔術師に近づく。


「【キリング・エッジ】」


 背後から魔術師の首を斬る。

 魔術師は何が起こったか分からず、声も出せずに倒れる。

 そしてまた、物影に身を隠す。


 次にトロールを狙う。

 【サイレント・ムーブ】で首元に飛び、首を斬りつける。

 そこにさらに、追撃する。


「【刃蹴】。はっ!」


 蹴りを鋭く放ち、首を完全に斬り飛ばす。


 ニュウのサブ職業は【蹴技士】。足の強化や蹴り技を主体とした職業だ。

 兎のビーストウーマンであるニュウは、足の力が強いため蹴り技はかなり強力な武器となる。

 

 流石にここまですればニュウの姿が認識される。

 矢で攻撃を仕掛けてくるが、ニュウはすぐさまに屋根上に上って躱す。

 ニュウはディノ達に合流するために移動する。

 ディノ達の背中が見えてきたあたりで、少し広めの通りを横切ろうとすると。


「来ないでぇぇ!助けてぇ!」

 

 叫び声が聞こえた。子供の声だ。

 ニュウは足を止めて、周囲を見渡す。

 ディノ達も聞こえたようで、引き返してくるのが見える。

 ディノ達がいる路地の2つ隣の路地から、少女が弟と見られる少年の手を引いて走り出てくるのが見えた。

 そのすぐ後ろからならず者の男達が出てくる。


 ニュウはすぐさま駆け出すも、男達の方が先に少女たちに追いついてしまう。

 男の1人が少年に手を伸ばし、腕をつかむ。

 少年は腕を引かれてバランスを崩し、少女もそれに引っ張られる。


 ニュウはナイフを抜き、男に向かって投げる。

 ナイフは少年を掴んでいる男の腕に刺さる。男は痛みで少年を離してしまう。

 ニュウはその隙に2人を抱えて逃げようとするが、男の仲間がニュウに気づき、少年に剣を振り上げる。

 ニュウは【クイック・ステップ】を発動し、速度を上げる。

 男の剣が少年を斬るギリギリのところで、ニュウが飛び込むように2人を抱えて避ける。

 しかし、男達からは距離が取れなかったため、振り向いたら目の前に男達が武器を振り上げていた。

 ディノ達が慌てているが、間に合いそうにない。


(2人だけでも!)


 ニュウは何とか2人は逃がそうと考えるが、無情にも男達の武器が振り下ろされる。

 ニュウは2人を抱えて、背中を男達に向けて庇う。覚悟を決めて目をつぶる。


「ぎゃっ!」

「ごぅえ!?」


 しかし、いつまでも斬られた感触はなく、それどころか男達の悲鳴が聞こえてくる。

 ニュウは目を開けて、振り向こうとすると。


「危機一髪で御座ったな。我が同胞」


 横を見ると、そこにいたのは忍び装束を着た兎だった。


 青いロップイヤーの兎のライカンスロープで、黒い忍び装束を着ている。顔は目元と耳以外は隠されている。


「拙者の名は青影。地と空を跳ね駆ける忍で御座る。義に従い、我らがお助け申す」


 腕を組み、鋭い瞳でニュウ達を見る青影。

 ポカンと青影を見るニュウは、視線を男達に向ける。


 武器を振りかぶっていた男達はすでに消滅しており、地面にはニュウのナイフと手裏剣が落ちていた。


「てめぇ!」


 生き残った男達が、青影に斬りかかろうとする。

 すると、周囲から大量の手裏剣が男達に突き刺さる。


「がっ!な!?」


 男達は驚きながら消える。


「愚かで御座るな。周りが見えぬとは」


 ニュウと駆けつけたディノ達は、青影の言葉に周りを見渡す。


「げ!?」


 周囲の屋根上や路地の影に、10人以上の忍者がいた。


「さて、ギルドも含めて街はまだ敵で溢れているで御座る。ギルドに向かうにしても、その幼子を連れたままでは無謀で御座る」


 青影の言葉にディノ達は顔を顰める。


 ディノ達が方針を考えていると、ディノ達を追いかけていた敵が追い付いてくる。


「しまった!?」


 ディノ達が武器を構えるが。


「貴殿らは幼子を守るで御座る。あれらは拙者らが相手をするで御座る。陽影」

「はい。旦那様」


 青影がディノ達に告げ、名前を呼ぶといつの間にかその横に女忍者がいた。

 

 青影と同じく黒い忍び装束を着ており、目元と頭からピンッと伸びた赤い兎耳だけが露出している。兎のビーストウーマンのようだ。スタイルも良い。

 旦那様と呼んでいたことから、2人は夫婦のようだ。

 青影が続ける。


「我ら【青兎忍軍(あおとにんぐん)】で抑えるで御座る。援護を」

「はい」

「私も行く」


 ニュウが名乗りを上げる。

 青影はニュウを見る。


「ディノ達はこの子達をお願い。やり返さないと気が済まない」


 ニュウはギラついた眼で、敵を見る。

 ディノはその様子にため息を吐き、頷く。


 青影は右手を上げ、振り下ろす。

 その瞬間、周りの忍者が一斉に敵に突っ込む。

 もちろん、ニュウと青影たちも一緒に。


 敵は突如現れた忍者達に驚き、混乱する。

 その隙をもちろん忍者は見逃さない。


「「「「【シャドウ・ステップ】」」」」


 忍者達が影のごとく動き、高速で敵の中に入り込む。

 敵はその動きに慌てるが、もう遅い。


「「「「【バック・スタブ】」」」」


 忍者に背中を取られた者達が、斬られて倒れる。

 

 すると、忍者の1人が懐から何か玉状のものを取り出して、地面に叩きつける。

 叩きつけた所から煙幕が発生する。

 突如視界を奪われ、パニックになる敵。


「ええい!魔術師!風で飛ばせ!」


 指揮官らしき男が大声を出す。


 それは忍者の前では致命的でしかない。


「己が欲のために他を顧みぬ愚か者」


 後ろから声が聞こえ、振り返ろうとする指揮官。


「お命、頂戴で御座る」


 首を何かが通り過ぎた。

 そう思ったと同時に視界が反転する。

 倒れる?と考えた直後に、指揮官の意識は暗転する。



 指揮官がどうなったかも知らない魔術師は、命令通りに魔法を使おうとする。


「風よ!邪魔も『人の平和を食い物にする悪』!?!?」


 詠唱しようとすると、耳元で女性の声が聞こえ驚く。

 周りを見ようとすると。


「月に代わって成敗致す」


 首を触られたと感じて、魔法と唱えようとするも声が出なかった。

 混乱して首を触ると、手が濡れる感触があったので手を見る。

 掌が真っ赤に血濡れていた。

 魔術師はパニックになるも、めまいがして倒れる。

 倒れながら、最後に見た者は去っていく赤い兎耳の女だった。



 大剣を持ち、襲撃に備える男。

 視界が一向に晴れないため、事態は最悪であると悟る。

 ならばと、男は剣を構えたまま全力で走り始める。

 すると、目の前に足が現れた。


「!?ぐぶ!?」


 男は止まれずに、顔を蹴られバランスを崩す。


「人の平穏邪魔するやつは」


 何か声が聞こえる。


「兎に蹴られて死んじまえ」


 目を開けると、そこに見えたのは再び猛烈な勢いで向かってくる脚だった。


「【脚砲蹴(きゃっぽうしゅう)】」


 ニュウの足技で、男の頭が吹き飛ぶ。

 技の衝撃で煙幕が晴れる。

 敵は1人も残っていなかった。



 ディノ達は予定を決めかねていた。


「ギルドは厳しそうだな。かといって、他に行くにしても正直リリリ達の魔力が回復しないことには動けねぇ」


 その言葉にリリリ達も頷く。

 すると青影が提案してくる。


「その幼子は拙者達がギルドに送るで御座る。拙者達なら見つからずにギルドに送り届けられるで御座る。夜見影(よみかげ)


青影が名を呼ぶと屋根上に影が舞い降りる。


「お頭。お呼びで?」


 降り立ったのは、背中に羽を生やした忍者だった。


「こ奴は梟のビーストマン。こ奴なら2人を空から運べるで御座る。夜見影。お前はこの幼子をギルドへと運ぶで御座る」

「承知した」


 夜見影は2人の横に降り立ち、抱え上げてそのまま飛び立つ。

 悲鳴が聞こえるが、もう助けられないので頑張ってもらうしかない。


「我らはこれより各地に散り、情報収集に動くで御座る。何か欲しい情報はあるで御座るか?」


 青影はディノ達に質問する。

 ディノ達は考える。


 そこにニュウが発言する。


「ナナキ達のこと」


 ニュウの発言にディノ達も頷く。

 それに陽影が反応する。


「それは噂のケット・シーのこと?」


 ニュウ達は頷く。

 青影はそれに頷き、分かり次第連絡すると約束する。


「では、御免!」


 その言葉を合図に忍者達が四方八方に散っていく。


 ディノ達も休める場所を探して移動を始める。




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