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第8話 違法奴隷市場一斉検挙

 「紳士、淑女の皆さま!どうぞ近くに寄ってご覧ください! ここに集められたのは亜人の奴隷だけではございません!」


 そう言って首に包帯をまいた男が右手を上げると、ひときわ大きな檻が運ばれてくる。


 「こいつを捕獲するために6人の奴隷を使いました。ですが、その価値はあると言えます!こやつは地族の魔物! 異常な肉体と再生能力を持つ化け物でございます!」


 檻に軽くかけられていた覆いをはがすと、中には見事な鱗を持つ、巨大ミミズが…

 うぇー!! 5mくらいあんじゃねぇの?

 何だあれ! 気持ち悪!


 「地下から攻撃されれば人など簡単に殺されましょう。ですが、ご安心を!こやつも今となっては我々に売買される奴隷どもとなんら変わりありません。本日の目玉商品として金貨20枚からお願いいたします!」


 2000万円の価値があるのか…

 高いのか安いのか分からん。


 とりあえず、俺はここから脱出する方法を考えないと。


 「ん? こんな処にガキ?  おいガキ、止まれ」

 「はい?」


 強面なおっさんにかなり乱暴に呼びとめられた。


 「お前…、通行証は持ってるみてぇだな。 こんなとこガキがうろつくんじゃねぇ。 用事を済ましてさっさとあの出口から出て行きな」


 乱暴に背中をおされる。

 でもラッキー!

 出口を教えてもらえたぜ!


 この施設は入口から見て「Y」の字になってるんだけど、中心で奴隷商人が演説をしていて、左右に 檻が続いている。

 それで、左右どちらも行き止まりに見えるんだけど、右奥に出口があるらしい。

 ここからは何も見えないけど、おっさんがあの出口って言った時に右奥を指さしてたからたぶん入口と同じ転移魔法陣があるんじゃないかと思う。


 つーことで、こんなとこさっさと帰るに限るぜ!

 奴隷とかハーレムとか興味あるけど、所持金4万2100円じゃ買えないだろうし?


 ということで右奥を目指して歩き出したところ、イベント発生。

 中央の舞台に立ってたおっさんの部下がその手に鎖で繋がれた奴隷を引っ張ってきて言った。


 「おやおや、みなさん。金貨20枚が惜しいと見えます。この地族の魔物の強さをご覧になればきっと皆さま購入したくなることでしょう! いまより、この奴隷の男とメガリデスを戦わせてご覧に入れましょう」

 「「「「「ワーーーーー!」」」」」


 おいおい、まじかよ!

 そんな残酷なことするの?

 どうにかして辞めさせないと…


 「おい、豚… こんな雑魚と私を戦わせるつもりか?」

 「な、なんだと!? きさま奴隷の分際で…、だがわしは寛容だ。そこのメガリデスと戦い見事に勝ったら許してやる。まぁむりだろうがな!」


 人を1人余裕で飲み込んじまいそうな体してる巨大ミミズに対して男は丸腰。

 これでどうやって勝てっていうんだ!


 「さあ、入れ!」


 奴隷商人の部下に背中を押されて男は檻の中に進んでいく。

 檻自体が巨大ミミズ用の為、檻の隙間から人が入るのは簡単だ。

 俺がどうにか出来ないかと悩んでいる間にどんどん事態は悪い方に進んでいく。


 そして男がミミズの檻に入った時のことだ。



 「そこまでだ! この腐ったゴミども!!  各員抜刀!! 一人も逃がすな!」

 「「「「はっ!!!!」」」」


 全身を深紅の鎧に身を包んだ女性が声を上げ、それに続き客の何人かがフードを取ると中から兵士としか言えない格好の人たちが現れた。


 「な!なぜここに王家の手先が!!? くそ、見られた以上仕方ない。こいつらをまとめて殺せ!!」


 首に包帯を巻いたデブ商人…いや奴隷商人が雑魚セリフをはく。

 と、ココでさらなる変化が起こった。



 グシャァアアアアアア!!


 檻の中から飛び散ったミミズの白く濁った体液が奴隷商人の顔面をどろどろにする。

 おえぇ。


 デブ商人に白い液って誰得じゃこら!


 商人は何が起こったのか分かっていないようで、檻に顔を向ける。


 「な、な、なあぁにが起こったーーーー!」

 「なにって、ミミズじゃ役不足だったってことだよ」


 と先ほど檻に入った男がゆっくり檻から出てくる。

 檻の前にいた奴隷商人の部下はすでに気を失ってのびていた。


 「ふう、服に少しかかったようだ。 アリス、早く終わらせて帰ろう」

 「そうね、リオ。子供が待ってる。でも今は仕事が優先だ!」


 と会話が…って、おい!

 父さんと母さんなのか!?

 

 男の方はくすんだ茶髪をしていて父さんみたいな銀髪じゃないし、女の方も全身鎧でよく分からないけど、確かに声は母さんと父さんの声だった気がする。


 でも母さんあんなしゃべり方してないしな?


 その間も出口を兵士に抑えられてる客というかクズ達がどんどんつかまっていった。


 奴隷商人はあわてて逃げだすのだが、くすんだ茶髪の男にあっさりと捕まえられてしまった。


 深紅の鎧の人物と茶髪の男は出口から外に出たようで、奴隷になっていた人たちと客は兵士に連行されていった。

 

 「君も奴隷商人につれてこられたのかい?」


 と心配そうに声をかけてくれた兵士。

 しめた! ここで連れてこられたと主張すれば何とか逃げられる!


 「もう安心…、っ通行証!?」


 おっと!

 通行証に気が付いた兵士が剣を抜き険しい顔で睨んでくる。

 しくじったー!さっさと捨てとくんだった!!


 「君…話が聞きたい、来てもらえるか?  抵抗すれば…」

 「あ、はい」


 剣をこう、ギラギラさせながら言うのってさ、脅迫だよね?

 まあ、相手からしたら正体不明の少女現る! みたいな状況なんだろうけど。


 もしかして、俺。

 若くして前科者になるのか?


 「さあ、歩け」


 とぼとぼ歩く俺。

 うん。端から見たら年相応の少女だろう。

 と、いきなり【信託】発動。

 

 「(一部始終をみさせていただきました。行く先々で問題を起こし、最後には逮捕ですか。あなたらしい見事な最後ですね。)」

 「(ふざけんな!おま、お前にせいでこんなことになってんだ、どうにかしろ!)」


 そうだ、俺は完全に被害者なのだ。

 奴隷市場に入ってすぐに出口に向かって言ってたのに巻き込まれた。


 「(幼女メイルもいるんだろ? メイルの力でこう、世界を改変してさ)」

 「(残念ながら、それは出来ません。メイルは力を使ったのでお昼寝中です。)」


 幼女つかえねぇえええ!!


 「(じゃあ、クレア助けろよ!)」

 「(先ほどから気になっているのですが)」

 「(なんだよ! 早くしてくれ)」


 もう魔法陣は目の前なんだ。これをくぐったらたぶん大量の兵士に囲まれるんだと思う。


 「(あなたも今は幼女ですよね)」


 おれがその声を聞いて突っ込みを入れるよりも先に転移魔法陣が発動。

 俺は他の客や奴隷商人の仲間と同じく包囲されたのだった。







 ××××××××××××××××××××××××××××××



 私の名前はアリス・グレンノース。

 

 普段なら実家で、リオやユウリと楽しく生活してるとこなのに、今私は簡易テントで書類作成をしている。


 それもこれも国王がだらしないからだ!


 私やリオはその力を国に利用されるのがいやでわざわざ王都をはなれて暮らしているというのに、上位の退役冒険者の義務なんてものを振りかざして私やリオに働けと言ってきたのだ!


 確かに私はかつて冒険者だったし、グレンノース家は代々国につかえて来た。

 だからかつて冒険者だった私にも、有事の際には国に力を貸す退役冒険者の義務がある。


 そしてリオも今は人型で暮らしているとは言え、かつては名を馳せたドラゴンだ。

 国が干渉しないことを条件に有事の際手を貸すことが義務付けられている。



 だが今回のはなんだ!

 確かに大規模な奴隷密売組織が王都に潜伏しており、上級貴族もそれに参加、憲兵も腐敗が進んでいる。

 だからどうした!


 平和に生きている私たちを巻き込むなというんだ。


 姉であるテレサ・バスールが事前に「国王がアリスとリオを利用しようとしている」と知らせてくれたからこの1年だが準備が出来た。

 この一年間何度となく使者が来ては王都を救うために力を貸してくれと言ってきたものだ。

 国はこんな小さな事で私たちを使うことで前例をつくるつもりなんだろう。

 行く行くは首輪でも付けて飼い慣らそうというわけだ!

 

 だが私から言わせれば、そんな暇があるなら自分で解決する道を探せというんだ!


 だからこの一年は「まだ子供が小さいから行けれませんわ~」と引き延ばした。

 そしたらどうだ、ついには「反逆罪で子供を捕える」と遠回しに言ってくるじゃないか!


 さすがにリオも私も国を相手に戦ってやろうかと思った。

 だが、それは未来あるユウリを危険にさらすということ。


 だから今回は姉がユウリに付いていてくれるからこそ嫌々ながら王都まで行くことにした。

 何も知らないユウリは楽しそうに馬車の旅を過ごしていたが、私とリオは国王がもうふざけた理由で私たちを呼ばないように、お話しなくてはならないことが山ほどあって、せっかくユウリとお出かけだというのに心からは楽しめなかった。


 だがその甲斐あって、国王は今回の奴隷商人たちの一斉検挙をすれば、もう私たちの手を煩わせないと涙ながらに約束してくれた。


 たしかに子をもつ親として未成年者まで奴隷にする商人には腹が立つ。

 魔物を街中で売買するのも子供が危険にさらされる。


 だが私たちが来るほどの事なのか?



 この程度の組織を壊滅出来なくてこの国に未来はないと思うのだが…。


 そして何より面倒なのは、捕えた商人や貴族の調書作成と奴隷の処理だ。

 無理やり連れてこられた奴隷もいるから調書を作成し家に帰してあげないと行けない。

 腐敗した憲兵に任せると貴族が金に物を言わせて無罪となってしまうため私がする事になってしまった。



 早く帰ってユウリに会いたいのに!


 そんな書類作成も次で最後だ。


 

 兵士が最後の一人を連れて来たというので、簡易テントに入れさせる。




 はぁ、ユウリに会いたいな~


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