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触手勇者(途中打ち切り)  作者: 刃羽器霧
前振り的なアレ
4/12

確認 その1

 触手が好きというマイノリティのくせにシオンはそのシチュエーションにもかなりこだわる。


 まず現代劇は基本的にNG。魔法少女ものならギリギリ許容範囲だが未知の生物だとか科学実験の末生じた触手はダメ。正確に言えば犯す対象が現実に即しているとダメ。


 ファンタジーでも人間を対象にするとダメ。村娘、町娘は以ての外で、ギリギリ王家や上位貴族の娘あるいは美貌の母なら許容。魔法使いは基本的にOK。


 一番良いのはエルフだとか悪魔だとかの亜人とグループされる人間を対象にしたものだ。ただし他のモンスターが出現するとNG。


 以上のことを斟酌するとシオンは基本的に人間の味方であり、魔王たち亜人と言われる者たちの敵である。


 ただし陵辱レイプは趣味ではないという厄介な性癖を持っているので表立って戦うのかどうかは微妙なところである。


 脱糞の挙句に悶死した分際で中々の上から目線だが、今のシオンはそれを言えるだけの戦力を持っていた。


 だから人間を触手の対象にするのは基本的にNGという思想に基づき、シオンは人間を相手にするときはマッハ20で動ける超速度を武器としている。


 ただしそれは触手を使わないということを意味しているわけではない。

 むしろ感覚器として非常に優れているからこそ音速の20倍という途轍もない速度で動けるのだ。


 それゆえに――


「練度も士気も高いが画一的だな。一般兵ならばいざ知らず近衛がこれというのは少々問題だ」


 ――個々人の能力も手に取るようにわかる。


 むろん城内の女性のスリーサイズは完璧に把握した。残念ながらシオンの眼鏡にかなうような美女はいなかった。王妃・王女も普通だったのだ。


「これだから現実は……」


 というのが全部確認し終わったあとのシオンの第一声である。


「何故です?」


 近衛騎士団の団長が問う。国王ヴァイセンに優るとも劣らない巨躯の男だ。


「それについては実戦で見せるのが早いな。なにか武器を。刃引きで構わない」


「でしたらこちらで……」


 そう言って差し出したのはショートソードだ。


「ふむ……」


 ヒュンと振るう。まあまあか。


 目の前には100名以上からなる近衛騎士団が勢ぞろいしている。


「これからお前らと実戦形式で訓練を行う。俺に一太刀浴びせた奴は団長に次期団長として推薦してやる」


 ざわざわ……ざわざわ……。


「むろん実戦形式なのでお前ら全員対俺だ。使用するのはお前らは真剣、俺はこいつを使う」


 言って刃引きのショートソードを見せる。


「こいつに痒みを誘発する塗料を塗っておく。痒くなったやつから脱落だ。ちなみに耐えて掛かって来てもいい。ただし2度と痒みは治まらなくなるからそのつもりで。脱落した奴は速やかに解毒剤を飲むこと」


 ちなみにその痒みの薬はシオン製(体液)である。解毒剤も。


 ところで何故こんなこと――近衛騎士団に稽古を付けるような真似をしているかというと、シオンが実地で自分の性能を試してみたくなったからだ。


「敵になるにしろ、味方になるにしろ、戦力が増強する分には構うまい?」


 というのが口説き文句だ。

 残念ながら即日とはいかず召喚から3日ほどが経っている。


 その3日間でこの世界・国・種族など大凡のことは把握した。もちろん教師役はルドルフだ。

 わかったことは多々あるが今この場で必要な情報はなにもない。


 逆に近衛の連中がシオンについて知っていることは少ない。

 勇者召喚に応じた英霊という程度だ。

 召喚の際に護衛に付いていた10人はルドルフの親衛隊ということになった。シオンの情報を漏らさないための措置だということは本人たちを含め誰もが気づいていたが、そのことに不平を漏らす者はいない。


 王が平伏するほどの者であることが知られているからだ。もちろんこれは宮中においては公然の秘密である。


 中段に構えてシオンは告げる。


「全力は出さない。どの程度の力は団長殿が計られるだろう。そうであっても一太刀浴びせた奴は団長に推薦してやる。今代の団長殿がどう思うかは知らん」


 数秒の間を置き――団長が開始を告げた。


「始め!」


 実戦でヨーイドンで戦闘を始めるバカはそうそういないが今回はあくまで訓練であることを念頭に置いている。


 だからこそ互いに後の先を狙っている。


 団長推薦の餌に引っかかることなく、訓練通りに騎士団は部隊を展開する。

 近衛の最強状態ですら相手にならないことを確認するために全員が重甲冑を身につけ、各々得意の武器を手に持っている。


 先鋒となる前線部隊は槍を装備した者たち。敵の獲物が剣であるならばリーチで勝る槍を宛てがうのは基本的な戦術といえる。


 そこからは流れるような連携だった。


 槍の部隊が追い込み、弓で追い立て、剣で止めを刺す。むろん全員が命を取りに来ているが、それぞれの役割を忘れるようなあるいは無視するような行動を取るものはいない。


 だからこそ。


「……なんと」


 団長は流れるように捌かれてゆく騎士たちを見て感嘆した。


 一見すればシオンは大したことをしていない。

 圧倒的な腕力を以って打ち倒すのでもなく、超越的な速度で以って翻弄するのでもない。

 ただただ相手の隙を、連携の隙間を縫うように剣を繰り出しているだけだ。


 そこには確かな技量がある。

 重装備の隙間を――それも熟練の連携を掻い潜った上で狙うなどそうそう出来ない。

 見ている団長ですら自分では不可能だと判断した。


 しかし動き自体はできそうだった。

 後ろにも目が付いているかのような不可解な動きは1つもない。全てが予測を基に、そして現状を踏まえた上で繰り出されている。脚も、剣も。


 そしてその動きが騎士たちの動きとほぼ同じであることに俯瞰していた団長だけが気づいた。


 さらにその動きが一定の法則で繰り出されていることも。


 上段に対しては下段、中段に対しては上段というような、ごくごく単純なものだ。


 それは誰に対しても行われている。まるでそれで充分だと言わんばかりに。


 おそらくだが、一定の攻撃を行なった者は全員が同じ所を斬られているはずだ。

 それはある攻撃に対する反撃が1つで足りているからだ。


 連携を取っているのだからそうはならないはずだが、現実には同じ反撃を全員が受けていた。


 終わってみればシオンは無傷で、騎士団の面々は苦渋に満ちた顔をしていた。

 見ていただけの団長も、だ。


 シオンは満足気にウンウンと頷く。わかっていたがやはり触手の感知能力は素晴らしい。

 思考や感覚という内面的なものはわからないが、呼吸や心拍、視線の動きなど戦闘に必要なものが手に取るように――否、自分のことのようにわかる。


 嘘を見破るのが得意なシオンとしてはそれだけの情報があればいくらでも予想・予測は立てられる。


 神様は相当なチートを積んで受肉してくれたらしい。


「むしろラッキーだったのかもな」


 自分の手のひらを見つめてシオンは呟いた。

次は早ければ金曜。遅ければエター……げふん。週明けには!

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