西エリア その2
アキナヴォア軍の予想よりも少し遅いタイミングでシオンたちはダールの村に着いた。
「ここは〜ダ〜ルの村です〜ぅ」
ぽやんとした緑肌の娘がシオンの疑問に答えた。
にへらと笑う、おっぱいがたゆんたゆんの娘である。
頭に南国で咲いていそうな白とピンクの鮮やかな花が生えていて、そのせいで余計に頭のぬくい娘に見える。
上半身が裸であることも無関係ではあるまい。
「うぬぬ……」
「……どうせろくでもないことで悩んでいるんでしょうけど、いちおう聞いてあげる」
「緑肌はあんまり好みじゃない!」
「……そう」
ミアータは予想通りの変態返答に呆れた。
「おっぱい大きいですにゃ!」
リンクスは今までに見たことのないサイズの胸に大興奮である。ちなみに同性愛的なそれではなく幼児性の発露である。
実際、3人が向かい合っているアルラウネの胸はちょーデカイ。
垂れ乳ではあるが頭一つ分くらいの大きさがあった。
これにはシオンも内心で興味津々である。
こういうサイズのおっぱいは日本人ではそうそうない。特ホウ王国でネタに出来るくらいだ。
しかし。
「乳輪も深緑……クソ! ここでピンクでもゲンナリだけど、緑でもいまいちリアクションが取りづれえ!」
「最低ね……」
「ちょっとさわってもいいかにゃ?」
言いながらリンクスはすでにもふもふさわっていた。
ところで諸兄は大っきいおっぱいのさわり方に男女差があるのをご存知だろうか?
男は正面から掴むようにさわる――すなわち乳首を巻き込んでさわるのに対し、女は下から持ち上げるようにさわる。この際、指は動かさず主に手首と肘で感触を確かめる。
リンクスはいちおう女であるので下からさわっている。ただし親指と人差指で挟むように、男に近い手の向きである。
「やぁ〜ん」
とアルラウネは体をくねらせるが嫌がっているふうではない。
ただ見知らぬ人間が相手であることに戸惑っているようだ。
「にゃー……重たいですにゃー、ふかふかですにゃー」
ふよんふよん。
「やぁぁん」
ふわんふわん。
「うむ」
シオンは手を組んで仁王立ちでガン見である。
「うむ」
時々思い出したように訳知り顔で頷く。
「………………」
それをミアータがちょっと引き気味で――というか遠巻きにして眺めていた。
「さあさ、なんにもないところだけど、ゆっくりしていきな、お客人! 乾杯!」
結局30分近くリンクスの乳攻めを視姦したあと、いつのまにか集まっていたアルラウネの住人たちに連れられてシオンたちは村長であるという人物の家に向かった。
そこでようやく彼女らがアルラウネであることや西の魔王アキナヴォアの支配下にあることなどを教えられる。
他種族――それも人間に対して異様に親切な理由も。
もちろん彼女らが女性単一種族であり、いずれかの生物のオスの精が必要であることがその理由である。すでにそのことについては了解済みであり、さっそく今夜からヤってみようということになった。
人間にしてみれば命の危険があることはさすがに言っていない。ただ彼女たちは外縁にあるとは言え、自分たちの村にやって来たことでそこそこ――最低1人分は絞れるだろうと目算していた。
そしてそのことを祝う――表向きにはシオンたちの歓迎する宴会となった。
音頭を取るのは村長であるラキナ。冒頭のアルラウネ――彼女はミラウという――に負けず劣らずのわがままオッパイである。
オッパイと表記した通り、彼女の胸は非常に肉々しく、瑞々しいロケットオッパイである。
擬音で表すと「ッパァーーッッン!!」という感じだ。
2人に限らずアルラウネたちのおっぱいはいずれ劣らぬ爆乳であった。もちろん美乳でもある。なによりそれを活かすだけのプロポーションが彼女たちにはあった。
緑肌でなければなあ、というのがシオンの正直な気持ちである。
「しかし意外だな、肉も出るとは……」
並べられた量も種類も山盛りの料理を見てシオンは小さく呟いた。
アルラウネは植物の妖精である。なんとなく水と光で事足りて食事という概念が無さそうだが、特にそんなことはないらしい。
正確に言えば、これだけの種類があるのは村長であるラキナのが食道楽であるせいだ。
普通のアルラウネは肉を食ったとしても一種類。魚か動物かの2択だ。
周囲の肉全部をとりあえず揃えておくなんてことはしない。
「なに言ってんだ。生きるってのは食うことだぜ? 食えるもんは全部食う! これがアタシの生き方だ」
「ご立派ご立派。元は食虫植物かなんかか?」
「おんや? 勇者殿はこの花をご存知でないと見える」
ニヤニヤと笑ってラキナは自分の頭の花を指さした。
ラキナの頭に咲くのは赤い、赤い鮮血のような毒々しい花だ。ヒガンバナに近いだろうがもっと肉厚で花弁も大きい。
「……やっぱり」
「そちらはご存知だったようだぞ?」
「知っているのか、雷電!」
「知ってるもナニも有名な毒草よ。トキシジーっていう強い幻覚作用を持つ花粉を撒き散らして弱い株ごと周囲の生物を殺す共食いの花。この花は成長すると根が脚の代わりを果たして動くようになるの」
「魔族領のものはさらに進化して手の代わりも果たす。つまり捕食だな!」
「ほう、触手か。善哉善哉」
勝手に同類認定し喜ぶシオン。さすがにラキナも目の前の男が人間でないとは思っていない。
「なんだ。驚かないし怯えないのか。さすが勇者というべきかもしれないがつまらんな。前にここを訪れた人間はそれだけで恐慌を起こしたものだけど」
「まあ、ミアータたちに影響があるのはちょっとかわいそうかなとは思うけどね」
「そうするつもりならさっさとしているさ。ただ、言われた通りアタシの毒は同族にも効果があるからね、さすがに村のど真ん中じゃ撒き散らさないよ」
「撒き散らさない代わりに食い物に入れるのはどうかと思うけどね」
「ハハハ! 効いてねえんだからいいじゃねえか!!」
ちなみにミアータたちの食事にも混ざっているが、彼女たちに寄生している触手が無毒化しているのである。
「これで死んだらどうするつもりだったのさ?」
「死ぬほどの量は入れてねえ。それに幻覚作用だっつったろ? キモチヨくしてやろうっていう優しさじゃねえか!」
「はいはい。それはあとでね。今は食欲優先」
「ちぇっ。ちなみに最初はアタシが相手だからな」
村長権限である。横暴ともいう。
そう言われると改めて好色な目で見てしまうのが男というものである。
深い、黒に近い緑の髪をストレートに真っ直ぐに伸ばし、ロケットオッパイをさらに突き出すように背中を逸らす様は、大和撫子的な女性らしさも、集団の長としての男性的なものも綯い交ぜにした超越感がある。
しかしそこからさらに視線を下ろし、腹、尻と下がるに連れて男性度はグングン下がり女性度が急上昇する。
さすがにスカート状の腰巻をしているのではっきりとは分からないが、それでも彼女が実に素晴らしい安産体型であり、男好きのする下半身――特に脚の曲線が美しい――であることに疑いはない。
そうだと思ってしまえば彼女は間違いなく美女だと断定できる。村長として皆を率いる男性的な強さも、パッツンパッツンに張り詰めたオッパイを際立たせるための装置にすぎないのだ。
緑肌を除けば。
「つくづく惜しい……」
蜜から作られた甘ったるい酒を呷ってシオンは呟く。
それを隣でミアータが半眼で蔑んでいた。
リンクスは美味い飯を食うのに必死である。
「さて、宴もたけなわ、そろそろ床の準備でもするかい?」
ミアータもリンクスも、そしてアルラウネの大半の者たちも酔いつぶれ、あたりは死屍累々たる惨状だ。
日も沈み、篝火だけがあたりを照らすせいで余計に凄まじいものがある。
「ふむ……とはいえここはアルラウネの村。眠るのは大地の上と決まっているわけだが」
ラキナは素面でそう答えた。元が毒草のせいか実に酔いに強い。いや毒に強いと言うべきか。
「青姦か……まあ、趣味ではないがそういうのもたまにはいいか」
言ってニュルリと触手をラキナに伸ばす。後ろ毛を触手化した。両手を空けるのは基本である。
「な……っ!」
これに驚いたのはラキナだ。瞬く間に足元から触手が蛇のように這いまわり、体全体に纏わりつく。
じゅん、と快感が触れたところから染み込んでくる。
「アタシの解毒を超えてくるだと……!!」
見る間にラキナの顔に赤みが差す。とにかく態勢を整えようと、纏わりつく触手をなんとか引きちぎろうと掴む。
が、ヌラヌラとして力が伝わらない。
「くっ! 触手がお前だけのものだと思うなよ!」
力で抗し切れないと素早く判断したアルラウネの村長はやはりシオンと同じように髪の毛を一部だけ触手化してシオンに伸ばした。
それをシオンも触手で迎撃する。シオンの方の触手が卑猥な形をしているのは、まあ、そういうわけである。
2人の間わずか1メートルほどの空間に十本ほどの触手の橋が架かる。
いずれもラキナの触手1本に、野太いシオンの触手が数本睦みあっていた。
それらはあたかも蛇の交尾のように互いが互いを絡ませ、蠕動を繰り返す。
「ハハハ! 案外触手同士の交わりもエロいな!」
シオンをそれを見て、蠢きを感じて笑いを上げた。
初の触手を使っての交わりである。その相手もまた触手を使うことに奇妙な興奮を覚えていた。
「ふ……っ、……んんッ!」
お互い立ったまま始まった性戦はしかし意外と早くラキナが膝をついたことで転機を迎える。
「くぅ……!」
顔を赤らめ、膝をついて快感に耐えるさまは勝気なラキナをして乙女に見せる。いや、むしろ勝気な雰囲気を見せていたからこそ、弱々しく悦楽に抗する姿が艶やかなのだ。
股間を隠すように内股に足を閉じ、なんとか自分を襲う快感から逃れようと全身をわななかせる。
シオンの触手に巻かれながら彼女は自分を掻き抱く。それは身を縮こませて波を、嵐をなんとかやり過ごそうとする人体の反射と言っても良かった。
もっともそれを許すようなシオンではないが。
すっ、と直径1センチほどの触手が1本ラキナに伸ばされた。そして、ついっと彼女の穿くスカートを少しだけ捲り上げる。
果たしてそこにあったのはしとどに濡れた女陰である。
「ほう……ほう……」
覗き見、うんうんと頷く。
そのことで余計にラキナの顔が赤くなる。
「お、お前! こうして嬲るだけか! この意気地なしめ!」
なんとかそう叫ぶアルラウネだったが、顔どころか全身が赤い。緑肌に赤みが差すというのも奇妙な光景だったが、これはこれでエロティックだ。
さらに言えばシオンの触手によって丸く強張らせていた体は無理矢理に開かれている。
両手は頭付近に、両足は当然のようにM字開脚である。
無理矢理体を開いています、という感じが実にそそる。
鋭く睨みつけるような目つきも瞳が潤んでいて効果は半減しているし、表情自体、半笑いというか、泣き笑いというか、ともかくなんとも言いがたい。
アヘ顔という言うほど崩壊しているわけではないのがまたラキナの気の強さを表すようで、シオンとしては大変満足していた。
「前戯は大事だよ。それに……これから幾日続くかわからないんだ。ゆっくり楽しもうぜ」
シオンの「幾日続くかわからない」発言に顔をひきつらせるラキナ。
触手はまだ腕や脚、せいぜいが腹回りを撫でさするだけで、オッパイや性器には頑として触れようとしていない。
それでも今まで経験したことがないような気持ちよさなのだ。もしも敏感なそこに触手が這い回るとしたらと思うと、むしろ恐ろしい。
それでも挑発してみせたのは早く始めれば勝機が見えるかもしれないと思ったからだ。
毒草でもある彼女は花粉だけでなく体液も毒性を帯びている。始めてしまえばその毒でなんとか……と思っていた。
実際、人体は同じ粘膜部位でも上半身よりは下半身のほうが弱い。経口摂取で効果がなかったとしても粘膜摂取ならば効果抜群ということは普通にある。しかし今回に限れば相手が悪かった。
「ちなみに俺に毒は効かない。効くものもあるかも知れないが、少なくともボツリヌス程度じゃ死なない」
地球で最強に近い毒を例えに出してシオンはラキナに告げる。もちろんラキナはわからなかったが、自分にも通じる毒を使う生物が自分の分泌する毒に侵されることはないだろうという当たり前の考えにようやく到達した。
「まずはお前からゆっくり犯してやるよ。それからお前の一族全員相手してやる。感謝しろよ? これだけ優秀な子種は後にも先にもないだろうからな」




