西エリア その3(打ち切り)
「――――報告を」
魔王アキナヴォアは鎧兜の向こうから静かに報告を促した。
側近はわずかに逡巡を見せ、それからため息をつくように結果を告げる。
「全滅です。――いえ、死亡したという意味ではありません」
「犯されたか」
「はい。すでに孕んでいる者もいるようです」
「――――――」
側近から魔王の表情は、兜の奥に飲み込まれ伺えない。それでも愉快ではないだろうことは察せられた。
「これは明らかな侵略行為です。たった1つの村とはいえ蹂躙されたまま黙っているわけにはいきません!」
だからこそ彼女の思いを代弁するように側近は語気も荒く詰め寄った。
「無論だ」
魔王は短く答え、そして続ける。
「しかしアルラウネが番となる雄性を選ばないのは周知の事実。たとえそれが陵辱に値するものであったとしても彼女らはそれを受け入れ、そしてその雄を守るだろう。まして今回は彼女たちが歓迎した事態だ」
「しかし!」
「我らが動くには――魔王軍が動くには相応の理由が必要だ」
側近の背中に怖気が走る。それがアキナヴォアの発する怒気のせいだと即座に理解し、彼女の怒りの深さを思い知った。
「まさか英霊とはな……」
「その片鱗すらも見せませんでした。かなりの使い手と見てよいでしょう」
「準警戒態勢を取れ。敵性行為を発見次第討伐に向かう」
「ハッ!!」
結局ラキナの相手は三日三晩続いた。その後ミラウを始めとする人間サイズの村民たちの相手をし、それから手のひらサイズから幼児サイズのアルラウネたちを相手取り、シオンが一通り満足したのは2週間ほど後のことだ。
ちなみにミアータとリンクスも混じった。
最初にあっさりリンクスが折れ、その後様々な葛藤を経てミアータも折れた。
まあ、山ほどの人間が犯されている横で平然といられるほどできた性癖ではない。
最終的にミアータが一番ノリノリで犯されていた。
内紛決着からの1年と少しの間で一番性癖が広がったのは間違いなくミアータである。
寡黙系女子は一皮剥けば淫乱というのはもはや定番を通り越して様式美なのだ。
詳細には語ら(れ)ないが。
「しかしどうにも視線が痛いな」
ミラウにだいしゅきホールドを構されながらシオンが呟いた。頭サイズの垂れ乳が押し付けられて実に気持ちいい。
「これだけ派手に犯せばね」
答えるのは落ち着いて我に返ったミアータである。開き直ってもはや全裸である辺りに彼女の適応性が伺える。
実際アルラウネたちはほぼ全裸であるし、この2週間はマッパで過ごしていたのだ。服を着ているほうが浮く。ただでさえ肌の色が違うのだから。
「えー……でも同意アリだよ?」
「同意があればなにをしてもよいわけじゃない」
「まあ、感謝はしているがな」
大の字に寝転がりながらラキナも呆れた。
「お前が感じている連中は魔王軍の斥候だ」
「……バラしてもいいの?」
唐突なラキナの告白にむしろミアータが驚き尋ね返す。
「私たちは確かに魔王さまの庇護下にあるがな。優先順位はあくまで自分たちが上だ。まして自分たちをまとめて相手にできるような雄は最優先事項といっても過言じゃない。だからこそ言うがここに留まるつもりはないか?」
「別にいいけど」
「いいの!?」
シオンの発言にミアータはさらに驚いた。
「ただなんで監視されているのかは知りたいかな」
「そもそも魔族領に侵入してきた奴は全員が監視対象だ」
「なるほど」
「加えて言うならシオンはかなり強いからな。警戒もするさ」
「そういうことか」
真面目な顔でわりと重要なことを話しているが、ギシアン中である。
ギシアンというにはベッドもないし開放的すぎるシチュエーションだが。
「それじゃあ今日からお前がダール村村長だ」
「アルラウネじゃないけど」
「問題ない。私たちが信奉しているというのが重要なんだ。それに生まれてくる娘達はアルラウネだけだしな。お前が死ねばまた誰かが村長になるだけさ」
「りょーかい」
あっさりとシオンは引き受けた。
それをミアータが横目で呆れながら見ていた。
リンクスは寝ている。
5年が過ぎた。
ダール村は今や都市である。
アルラウネの寿命と成長速度はほぼサイズに正比例する。手のひらサイズの連中は早死である代わりに成長速度は早い。人間大の連中は人間よりも寿命が長い分、成長も遅い。
ただしそれは通常状態の話だ。
アルラウネに限らず魔族は魔力の多寡によって在り方を大きく変える。
だからこそ『魔族』と区分けされるのだ。
彼女らの場合は直接生命力に換算される。
すなわち多ければ多いだけ、寿命は長く、成長は早く、回復も早くなる。もちろん病気や怪我に対する耐性だって上がる。
どの魔族も大なり小なりそうであるがアルラウネは群を抜いてその影響が大きい。
ゆえに。
ダール村の人口はすでに1万人を突破している。
元が50人前後だったことを考えれば単純計算で1人頭200人産んだことになる。
もちろん、噂を聞きつけて合流した別のアルラウネの村の連中もいるし、5年の間に成長して出産している子世代、孫世代の連中もいるので、そこまで多くはないが、それでも平均すれば余裕で2桁である。
この魔力の源こそシオンである。
「どうしてこうなった……!!」
20人以上のアルラウネを同時に犯しながら村長――否、いまや市長であるシオンが苦悩を叫ぶ。
犯すといっても体はむしろ空いている。触手が伸びているようにも見えないが、しかし20人位上のアルラウネたちはシオンの背後で間違いなく触手に犯されていた。
「既定路線よ」
少し離れた所でミアータが子どもをあやしながら、半眼でつっこむ。
この5年でミアータもリンクスも人の母となった。ミアータは1児、リンクスは3児もうけた。
ちなみに人間も獣人も魔力の影響は小さい。リンクスが3児の母なのは、獣人の場合、双子以上で生まれるのが普通だからだ。
もちろん2人も成長した。
懸念したような劣化もなく、実に微妙にあるいは美妙に育った。
ロリというほどでもなく、しかし成熟した女の色香はなく。
ほっそりとした少女の儚さと大人の芯の強さを併せた、シオンの理想的な女性となった。
リンクスは子どもたちを連れて散歩である。彼女は母となってもあまり変わらない。ミアータもそれほど変わったわけではないが、リンクスは見た目以外ほぼそのままである。
「既定路線って」
「実際、私が予想したとおりになった」
「まあ、そうなんだけど」
アルラウネは文明レベルが低く、文化的な活動もそれほど活発ではない。
ラキナのような食道楽がいるだけでもめずらしいくらいには、その日暮らしの生活を送るだけの生命体である。
繁殖が全てといっても過言ではない。
そういう連中にシオンのような底なしの種が蔓れば増殖に次ぐ増殖で爆発的に増えるだろうことはかなり早い段階でミアータが予想していたし、告げてもいた。
それを「まあいいんじゃないの?」で放置した結果がつまりアルラウネの都市である。アルラウネの集落としては魔族領始まって以来の規模であるらしい。
規模のことはもっと文明レベルの高い種族から聞いた話なのでたぶん間違いない。
かように他種族との交流も図れるくらいには大きな街になったのだ。
もっとも、流されるままに都市運営した結果であるので誇れるようなことはなにひとつない。
シオンがこの5年でやったことと言えばせいぜいがアルラウネたちに服を着る習慣を根付かせたことくらいである。
「恥じらいが足りん!!」
ということで、パレオ付きのビキニのような服装をデフォルトにするようにしたのだ。
もちろん、おっぱいや下半身が丸出しでは恥ずかしい、という認識も植えつけた。
どちらも催眠を使わず地道な啓蒙活動の結果である。
余談だがアルラウネにも羞恥心はある。彼女たちの場合、快感を覚える事自体が羞恥であり、この心理機構を持つ魔族を俗に淫魔と呼ぶ。
淫魔は基本的に女性体である。男性体が存在しないわけではないが、こちらは種族としてよりもイレギュラーとしての個体が多い。
ちなみに何の因果か今代の魔王は4人ともが淫魔である。
悪魔族リリス種の東の魔王。
吸血族カーミラ種の南の魔王。
魔人族サクブス種の北の魔王。
そして西の魔王――アキナヴォアも淫魔である。正確にはダークエルフという種族が淫魔である。
どうしてダークエルフが淫魔であるのか、その紆余曲折はいずれ語ることにして、ともかく魔王は4人が4人とも淫魔である。
ゆえにダール市は魔族領全体から注目を浴びていた。
プロットから作り直したいので打ち切ります。




