9話
ふたりに頼んで、それぞれのステータスを地面に書き出してもらった。
【名前】ギン
【レベル】4
【力】6
【器用】3
【敏捷】4
【知能】3
【魔力】4
【運】4
【魔法】なし
【スキル】なし
……なるほど。やはり年齢が上がると自然にレベルも上昇するらしい。
そして、特に訓練をしていなくても、持って生まれた資質や身体的な特徴によって、各ステータスに個人差が生まれるようだ。
ギンの「力」が高めなのも納得だ。彼は年齢にしてはかなりがっしりした体格をしている。まさに体を動かすことが好きな“兄貴分”といったところか。
【名前】ラン
【レベル】4
【力】3
【器用】5
【敏捷】4
【知能】7
【魔力】12
【運】4
【魔法】なし
【スキル】予知夢
「……え?」
俺は思わず二度見した。
スキル持ち。それに魔力12。知能も7と、同年代の中では頭ひとつ抜けている。
完全に想定外の存在だ。
「ランお姉ちゃんって、魔法が使えるの!?」
「魔法? 使えないわよ? でも……おばあさまに、素質があるとは言われたことはあるわ」
詳しく話を聞いていくと、ランの祖母は村で“預言師”として知られており、守り神のような存在だという。
なるほど、そういう血筋か。
どうやら、ランはその祖母から魔力の素質と「予知夢」のスキルを受け継いでいるらしい。
「なるほどー……」
俺はふたりに、ステータスのそれぞれの意味を噛み砕いて説明していった。
そして、これらの数値は“努力次第で成長する”ことも伝えておく。
「……なんかよくわかんねえけど、実際に見えてるもんな」
ギンはまだ半信半疑といった顔で、しかし素直に受け止めてくれた。
だが、ランはどこか浮かない表情をしていた。
「ランお姉ちゃん……どうかした?」
「ええ、実は最近……よく、怖い夢を見るの。もしかして……それってこの“ステータス”? その“予知夢”ってやつのせいなのかもって……」
……まさか、予知夢を?
「え、それってどんな夢?」
ランは、少し躊躇いながらも、語り始めた。
「とてもひどい夢なの……。大きくて、熊のような姿をした集団が、海からやってきて村を襲うの。おばあちゃんが魔法で応戦しようとするんだけど、相手にも魔法使いがいて……。結局、村の人たちは……みんな……殺されちゃうの……」
——ッ!
俺の脳裏に、父が語っていた「ヴァイキング」の話がよみがえった。
まさか……あれは本当に来るのか。
「ランお姉ちゃん、それ……たぶん、予知夢だよ! その夢の中で、季節とか、何か手がかりになるものはあった?」
「うん……寒かったわ。おばあちゃんがショールを羽織っていたから、多分11月か12月ごろ。ギンも今より少しだけ大きかった気がする」
……ということは、来年の冬か、あるいは再来年の初冬。
いずれにしても、時間はあまり残されていない。
俺だけでなく、このふたりにも、少なくとも“自分の身を守る”だけの力は身につけさせなければならない。
「……エル?」
ランの声で、我に返る。
「ううん、なんでもない。でもランお姉ちゃん、その夢のこと……おばあさまに話しておいた方がいい。きっと、わかってくれると思う」
「……うん。わかったわ」
そう言って、ランは静かに頷いた。
その後、俺は2人に家まで送ってもらい自然と解散した。
しかし、心の中では、すでに次の計画が動き始めている。
——ふたりの育成方針。
——そして、村を守るための準備。
戦いは、まだ先かもしれない。
だが、もう始まっている。