第74話「奮闘の果て、見えた真実」
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俺は思考を巡らせる。
どうすればあの化け物じみたデカブツを落とせる……?
マキナの雷撃すら効かない。その事実が、俺たちの希望を薄暗い絶望へと引きずり込む。
気づけば龍神は空の上で暴れ狂っていた。翼を大きく広げ、怒りをぶちまけるようにその巨体を振り回している。周囲に漂うのは圧倒的な威圧感と、抗えない力への恐怖だ。
よく見ると、龍神の体の一部が奇妙に光りを放っている。それはまるで、内側から破壊しようとする何者かの存在を示しているようだった。
『……どうやら半身はまだ死んではいないようだ。やつの内側から攻撃しているようだ』
「……まさかあの龍神の体内に入ったってことか!?」
ゼウス……お前、何を考えているんだ。そんな無茶をして――お前自身はどうなるんだよ。
倒せてもお前が死んだら、素直に喜べるはずがないだろ。いまのゼウスは神じゃないんだぞ。
龍神はゼウスの攻撃に為す術なく、空で未だ足掻いている。その姿は確かにダメージを受けているように見えた。
その様子を地上で見守る俺とマキナ。
何もできるわけじゃない。ただじっと見守る……俺たちにはそれしか出来ない。
「このっ!このっ!!出ていけ!」
「無駄だ、我はもうお前と朽ちることを選んだ」
龍神の怒声が空間を切り裂く。その咆哮には狂気が宿り、荒れ狂う巨体がもはや制御を失っていることが明白だった。
『……フィー、あれを見ろ』
マキナが静かに指差した先に、俺も目を凝らす。
「……まさか……本当にやりやがった」
龍神の体に複数の穴が開き始めていた。その穴から漏れ出す雷光は、ゼウスがまだ生きている証拠だ。
「だけどよ、アイツもう死んでるんじゃなかったか?」
『正確には、龍神は既に死した体を動かしているだけだ。再生は出来ない』
「……ってことは完全な不死身ってわけじゃないのか」
『そうだ』
俺は拳を強く握りしめる。不死身じゃないのなら……希望はある。けど――どうやって止める?
ならバラバラにしちまえば死ぬってことか。もう死んでるのに死ぬって変な話だが。
「がああああああああああああああああ」
龍神は荒れ狂い、地上にまでその暴虐を及ぼしていた。
龍神の眼は充血し、無差別に破壊のブレスを吐き出していた。その威力は、地上を抉り、あたり一面を焦土に変えていく。
『フィー、我から離れるな!』
「お、おう!」
マキナが再び雷のバリアを展開し、俺を守る。だが、そのバリアも長くはもたない。ブレスの威力は次元が違う――ここら一帯を消し飛ばすほどの力だ。
オーディンは地面を抉り、土壁を作り出してその場をしのいでいた。
「頼むから、はやくくたばってくれ……」
俺のつぶやきは、自分にすら虚しく響く。
ゼウスは龍神の中で奮闘しているようだ。しかし、漏れ出していた光が次第に弱まっていくのがわかる。
『……力が』
「ああ、弱まってる……」
体中穴だらけの龍神。それでも奴はまだ落ちてこない。もう言葉を発することもなくなったのに、なお暴れ続ける。
『フィー、半身を回復できないか?』
「……中にいる間は無理だ……せめて出てきてくれれば」
俺は必死にゼウスの光を追い続けるが、どうすれば助けられるのかわからない。
『なら我が行こう。……オーディン!フィーを頼む』
「おい!まさかお前までアイツの中に入るのか!?無茶だやめろ!」
『あんなんでも元は我の一部。フィー、お前を愛した者の一人だ。……どうやら今は違うようだが』
マキナのその言葉が胸に刺さる。
「……今は違う?どういうことだよ!」
問いかける俺に答えることなく、マキナは空を見上げた。その目には決意が宿っている。
『頼んだぞ!オーディン!』
「任せてよ!」
「おいっ!マキナっ!!!」
マキナは俺を守っていたバリアを解き、荒れ狂う龍神に向かって飛び立った。
俺はオーディンが作り出した大地の壁に守られながら、彼女の背中を見つめることしかできない。
「………マキナ……死ぬなよ……」
「……大丈夫さフィー、私の旧友はこんなんじゃ死なないよ」
オーディンの言葉には確信があった。だが、神は不滅とはいえ、心が壊れればそれは死と同じだ。
ゼウスが見せた覚悟に続くマキナの行動が、彼女を追い詰めることにならないよう願うしかない。
龍神のブレスによって、地面は赤く焼け爛れていた。一部はマグマのように煮えたぎり、立ち込める熱気が命を奪い取ろうと迫る。
その光景に、俺の意識が奪われそうになる。だが、今は耐えるしかない。
***
……どれだけ時間が経っただろう。
「……あ!見てフィー!マキナだ!」
「おおやったか……!」
オーディンの声に目を凝らすと、マキナが龍神の体内からゼウスを連れ出してくる姿が見えた。
龍神は未だ荒れ狂い、ブレスを吐き続けている。だが、マキナはそれを避けながらこちらへと向かってきていた。
『……戻ってきたぞ……フィー』
「………ああ、よくやったマキナ。……『ハイヒール』」
俺はゼウスに向けて回復魔法を放った。彼女の体から傷が消えていくのを見て、少しだけ安堵が胸を包む。
「悪いな、フィー。ありがとう」
「礼なんていらない。もうあんな無茶するな」
『話は後だ、ここは引くぞ。アイツをこのまま放っておくのは我としても癪だが……』
マキナの声が冷静に響く。それでも、彼女の表情にはわずかな焦りが見えた。
俺は頷く。マキナの言う通りだ。あの龍神は我を失い、暴走している。このまま留まれば、俺たちも無事では済まない。
「……マキナ、ポセイドンはどうするんだ?」
『……あいつはあんなもので死ぬようなやつじゃない。あれでも誰よりメンタルが強い』
ポセイドンを信じるしかない。今は俺たちが生き延びることが最優先だ。
「分かった……マキナ、頼む」
『ああ』
マキナは俺に微弱な雷を纏わせ、飛行を始めた。ゼウスとオーディンもそれぞれ空に舞い上がる。
『……それでどこへ向かう、フィー』
「……そうだな、ルクス達の所へ頼む。ちょっと確かめたい事がある」
『分かった』
俺たちは再び、龍神によって焼かれたコルネット村へ向かうことにした。
そこはかつて緑豊かで穏やかだった村でアスフィ・シーネーットが生まれた場所でもある。今は黒煙も収まり、焼け焦げた灰と無数の遺体が残るだけの場所だ。
アスフィーが育った家も、真っ黒な瓦礫となり、かつての面影はどこにもない。
俺はその中で、目を凝らし、あるものを探した。
「…………やっぱりな」
『どうした、フィー』
「アリアの遺体がない」
アスフィの母、アリアの遺体が見当たらない――それが俺の確認したかったことだった。
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アリアはどこへ




