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お嬢様と執事

本作の文体は不定形です。

 ボヨン、ボヨン、ボヨン……。


「ご主人様、何をなされているのですか?」

「見ればわかるじゃない」

「わかった上で伺っています」

「そう。じゃあ答えなくていいわね?」

「御言葉ですが、ご主人様。僕は従者として、ご主人様が道を踏み外す事を見逃す訳には参りません。どうか、自分の行動を口にし、己の罪を自覚してくださいませ……!」

「ベッドでピョンピョンするくらいで大袈裟な!?」


 ボピョン、ボピョン、ボピョン。


「……ホコリが舞うのでおやめください」

「空気清浄機が全力で働いてるから問題ないわ」

「確かそれなら大丈夫です、が、このままではベッドも空気清浄機も寿命を縮めます。過労死案件です」

「もぅ、いいじゃない。私のお金で買ったのよ?」

「しかし発注したのは僕です。世界中を探し回って、長い時間をかけた末に見つけた一級品です」

「いや確かに一級品だけども、インターネットでポチったやつよね、これ」

「それでも世界中のサイトを検索して三時間かかったのは事実です」


 バピョン、バピョン、バピョン。


「……そもそも、私が壊れないベッドを頼んで、貴方がこれを選んだのよ? ちゃんと命令を忠実に守ったのなら、どんなにこのベッドの上で飛び跳ねても壊れる筈ないわ」

「申し訳ありませんがご主人様、この世に不滅の物などございません。全ての物質は長い時間の中で少しずつ傷を負い、やがては崩壊します。ですので、ご主人様の命令は実現不可能。しかし、僕は命に代えてでも命令を遂行しなければなりません」

「確かに壊れないベッドとは言ったけど、何も永久不滅のベッドを持って来なさいとは言ってないわよ……?」

「僕はご主人様の写真を整理しつつ、この問題の解決策を探りました」

「えっ? 私の写真? 一体いつそんなのを撮ったのよ……?」

「そして、僕は天啓を得たのです!」

「ねえ、無視しないで」


 ピヨーン、ピヨーン、ピヨーン、ミシィ。


「……考えてみれば簡単な話です。壊れる前に修復すれば良いのですよ」

「ベッドの修復ってどうするのよ……?」

「このベッドの裏側には高度な魔方陣が描かれています。それによってなんやかんやでベッドが自動修復されるのです!」

「なんやかんやって」

「まるで生きているかのように!」

「急に使いたくなくなったわ」


 ボヨヨーン、ミシィィ、ボヨヨーン、ミシィィ。


「……しかし、万が一の事もあります。ご主人様、ベッドの上で飛び跳ねるのはおやめ下さい」

「今までずっと喋りながら跳ねてたけど、なんの問題も無かったわよ?」

「よく舌を噛みませんでしたね」

「多分、これからも問題なんて起こらないわよ。ささっ、他の仕事をして来なさい」

「そこまで言うのならば……承知しま――」


 その時だった。ベッドを支えていた床が度重なる衝撃によって歪み、堪え切れずに割れてしまう。突然の出来事に動揺する二人。非情にもベッドは床を突き抜け始め、転落へと移行する。悪いのは執事の忠告を無視し続けたお嬢様か、床の状態を確認しなかった執事か。それは誰にもわからない。ただわかるのは、お嬢様がベッドと共に落下するという事だけだ。


「ご主人様あああぁぁ!?」


ベット(bet):賭けること

ベッド(bed):寝床


ややこしいです。

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