第二十一話
「家族、増えた」
と言った瞬間、美百合は
「チッ」
と舌打ちして勝手に切った。嫉妬が深いぞ、オイ。
ちょうど、負傷兵の回収車が来た。
「この二人だ。できたら市ヶ谷の自宅まで頼む」
回収車から降りてきた兵は、二人を舐めるように見て言う。
「真田涼よ、運がいいねぇ。今度は兵長と黒影旅団かい。美少女バリエがまた増えた」
少々どころか、結構ウザい。
「んじゃ、悔しいが送っといてやる。集合時間に近い。お前も乗れ」
俺たちは高速で集合場所の旧浜松市役所跡地に向かった。
涼はこの後市ケ谷に戻ったが、軍本部で中尉の位置に一気に成り上がったという。
さて、二人の怪我も治って奇跡的に空いていた病院から退院する日。
涼は二人に名前を聞いた。
「…砲車ちさき。家は以前の戦闘で崩壊。家族も全滅した」
「月詠美夜です。あの時は、ほんと、ありがとうございます。寮が無くなった…」
「…ってことは二人は俺んちに居候か。これで俺とMoka含め七人… 七人!?」
「だ、大家族なのか?あの、何百年も前に日本を席巻した超庶民的アニメの」
「サ〇エさんみたいにですか?」
「え?ああ、うぅ… とりあえず見て」
涼のポケットの中で一人、Mokaがクスクス笑っていた。
タクシーが家に着く。
「ただいま…?!」
ファンシーな動物のぬいぐるみがいっぱいおかれたソファー。
と、そこに座って談笑している美少女三人。
だがこれは涼にとってはいつもの光景なので驚きはしなかった。
三人が持っている物に涼は絶句した。
美百合が持っている『シュー刊GeN代』は涼が特集されており(表紙に大きく見出し)、
理沙が手にしている『Playガ~ル』は涼の袋とじつき。
ローズに至っては『NyUtoN・ムック』の[真田涼、その強さの謎]を読んでいる。
さらにテレビでは涼の事で大変になっていた。
「「「おかえりなさ~い」」」
「ぴっ?!」
「すまん。この状況は何なんだ?」
「ああ、ゴメン。いつもの状況。俺の部屋で話そう」
そう言った瞬間、俺は何かにとても強い力で吹き飛ばされた。なすすべもなく床を転がる。
「あなた?!この子たちは誰!?」
お前だな、殴ったのは。
「涼さんを泥棒猫二匹が連れ去ろうとしてる!」
「某眉がつながった警官を思い出すからやめい。事情があるから。聞いてくれい」
「涼様の貞操がああぁ!!あたしが守る!」
「どんどん方向が違う感じになって来たよね!?」
遠くの方で、ちさきと美夜は黙りこくっていた。
………………
落ち着きを取り戻すのに一時間。
「あっ、ああ、そ、そういうことだったの(汗)。私は真田美百合。よろしく」
「ちょっと真田を使って欲しくないんだけど」
「イヤ。死ぬまで使う」
「…」
結婚確定なのだろうか。あと、目つきが超怖い。
「あたしは九重理沙よ。狭いけど、ちょっと我慢してね」
「なけなしの金でやっと借りれた部屋に文句垂れるな」
「だって、涼さんの隠し口座、昨日見つけましたもんね?」
「…」
もう隠したりしません。許してください。
「藤永・ローズ・マグワイアです。家計は火の車に乗りそうだけど、ひとまず安心していいよ」
「うっすら俺に『金稼ぎまくれや』って言ってるよね」
「強いんですよね?今のところ、家を購入するための貯金を切り崩してます」
「…」
何なら先にぬいぐるみやら本やらを売ってくれ。
「てなわけで、よろしく」
やっぱり神運のおかげなんだろうか。




