46話 今日も大人気
46話 今日も大人気
忙しさが増す店内
昼下がりの「雪の庭」は、マリトッツォ効果で今日も大盛況だった。
入口のベルが鳴るたびに、弥生とセリーヌが慌ただしく客を案内し、
クラリスは丁寧な所作でスイーツを運び、
忍は静かに店内を巡って安全を確保している。
――その中心でただ一人、優雅に紅茶を飲んでいる人物がいた。
言うまでもなく、店主・雪乃である。
「……お嬢様、ほんの少しでいいのでお手伝いいただけませんか?」
カウンターから皿を運びながら、弥生が半分泣きそうな声で訴えた。
雪乃は紅茶カップをソーサーに置き、眉をひそめる。
「いやよ。私は監督なんだから、あなたたちの働きぶりを見守るのが仕事なの。」
「監督と呼ぶには、あまりにも動いていませんけど!?」
弥生の静かなツッコミに、常連客たちからくすくすと笑い声が漏れた。
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護衛なのに手際が良すぎる二人
その横で、セリーヌとクラリスは見事な連携で作業をこなしていた。
「セリーヌさん、次のテーブルへミントティー三つお願いします。」
「了解しました。……クラリス、そちらのマリトッツォ追加分をお願い。」
「任せて。」
本来は王宮の護衛兼監視役である二人だが――
その働きぶりは、完全に一流カフェ店員である。
「護衛任務って……こんなに充実したものだったかしら?」
セリーヌがトレイを持ちながらこっそり囁く。
クラリスは肩をすくめた。
「お嬢様のスイーツを毎日味見できる時点で、役得すぎるわ。」
「あら、聞こえてるわよ?」
奥から雪乃が涼しい顔で言ったが、怒る気配はない。
むしろ「美味しいわよね、私のスイーツ」と言わんばかりのドヤ顔だった。
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客の波は止まらない
店内の席はほぼ満席。
マリトッツォを頬張る客たちの顔は笑顔であふれている。
「これ、王都で流行るぞ……」
「次の新作はいつなんだ?」
「雪姫の作るカフェ、最高じゃねぇか!」
そんな声が店中に広がる。
雪乃はそれを聞きながら、ゆったりと紅茶をすすり――
眉間に小さな皺を寄せた。
「……静かで暇な喫茶店にしたかったはずなのに。なんでこうなるのよ。」
忍が、いつもの冷静な声で答える。
「お嬢様のスイーツが、美味しすぎるからです。」
「それ、褒めてるの?」
「事実を述べただけです。」
「……褒めてるってことで納得しておくわ。」
雪乃はふくれっ面をしながらも、まんざらでもなさそうだった。
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こうして「雪の庭」の一日は、
またしても大人気のうちに過ぎていった。
店員たちは忙しさに汗をにじませ、
雪乃は相変わらずカウンターで優雅に紅茶を楽しみながら――
「……今日こそ静かに過ごせると思ったのに。」
ぽつりと呟く。
だが、その呟きが叶う気配はまったくない。
なぜなら今日も――
雪乃のスイーツを求める客たちが、
次々と扉を開けて入ってきていたからだ。




