表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄破棄されたので流行らない喫茶店をはじめました  作者: みずとき かたくり子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/83

40話 迷惑すぎる知らせ

40話 迷惑すぎる知らせ


 王宮から届いた“名誉のはずの通知”を前に、雪乃はテーブルに突っ伏していた。


「なんでこうなるのよ……私、王宮に喧嘩なんて売った覚え、一ミリもないんだけど?」


 額を押さえながら呻く雪乃。

 弥生は困り顔で、木箱から引っ張り出した例の看板を持ち上げた。


「ですが、お嬢様。王宮御用達に指定されるなんて、普通の店なら名誉ですわよ?」


 雪乃はバネ仕掛けのように起き上がる。


「私は普通の店なんてやってないの! 静かに優雅に紅茶を飲むための“趣味空間”なの!」


「(趣味空間なのに営業してるんだよなぁ……)」

 忍の冷静なツッコミは、心の中でだけこだました。


 雪乃は看板をじとっと睨む。


「これを掲げたら……絶対お客様増えるじゃない。いやよそんなの!」


「しかし王宮の命令ですから……従わないのは難しいかと」


 忍が淡々と言うと、雪乃は「うぅ……」と唸り声を漏らした。


「だったら……だったらせめて、店のすみ~っこ……見えにく~い場所に……そっと置くとか!」


「お嬢様、それは無理です。明らかに“掲げてません”と判断されます」


 弥生の正論に、雪乃はぎゅっと唇を噛む。


「……分かったわよ! 掲げればいいんでしょ、掲げれば! どうせ誰も気にしないに決まってるわ。王宮御用達なんて、ただの飾りよ!」


 その言葉は、現実をまったく理解していない人の典型例だった。



---


翌日。思わぬ“効果”


 翌日、喫茶「雪の庭」の入口には――

 ばーん、と場違いなほど堂々とした「王宮御用達」の看板が掲げられた。


 雪乃は、カウンターで膝を抱えながらぶつぶつ言う。


「嫌な予感しかしない。絶対、貴族とか商人とか、ぞろぞろ来るわ……」


 しかし開店から1時間が経っても――


「……お客様、来ないわね」


 雪乃がそっと時計を覗く。

 普段なら常連たちが入れ替わり立ち替わり訪れる時間帯だ。

 だが今日は、風が店内を横切る音しか聞こえない。


 弥生も首を傾げる。


「……どうしたんでしょうか?」


 その時、扉がゆっくり開いた。


「よぉ、雪乃。今日も……静かだな?」


 常連のレオンがひょっこり顔を出した。


「レオン、どういうこと? なんでこんなにお客様が来ないの?」


 レオンは店先の看板を親指で示し、ケラケラ笑いながら答えた。


「そりゃあ……あの看板のせいだな」


「看板?」


「“王宮御用達”って書かれた店だと、庶民は気後れするんだよ。

 『自分みたいなのが入っていいのか?』ってな。

 俺も最初、ちょっと躊躇したぞ?」


「……! つまり……」


 雪乃の瞳に、一気に輝きが戻る。


「この看板のおかげでお客様が減ったってことじゃない!」


「お嬢様、それ喜ぶところじゃありません!」


 弥生の悲鳴にも似た声をよそに、雪乃は深く、深~く頷いた。


「いいのよ弥生。

 これで静かな午後が保証されるなら……むしろ王宮には感謝したいくらいだわ!」


「(いや、そこは普通怒るところでは……)」

 忍の心の中のツッコミが再び発動する。


 雪乃は満悦の笑みを浮かべながら紅茶を啜った。


「ふふ……王宮御用達の看板って、案外使えるじゃない」


 こうして――

 “客が増えるから嫌!”と言いながら、

 結果、客が減って満足するという、なんとも雪乃らしい展開で幕を閉じたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ