2.おとぎ話?
何があったか、最近ぼくの家の窓に小鳥やリスがやってくる。窓だけは大きめだから、その枠を行ったり来たりしてチュンチュン。偶に木の実やベリーを持ってきてくれて、まるでおとぎ話の主人公にでもなった気分だ。ただ、貰う時少しだけ周囲を確認する。
ぼくの家は森の近くで、ぎりぎり住宅街と言えるかどうかの間隔で家が並んでいる。人通りも少ない。そこまで気にする必要はないかもしれないけれど、世間では最近魔女狩りが盛んだ。
「ありがとうね」
言いつつ、誰にも見られないようにしないとと思う。
彼らに何かしてあげた覚えはないけれど、ありがたいし可愛いから、ある時お礼なのかは分からないけど絵に描いてみた。すると……
「あっ、ちょっと! ぼくの絵返してよ!」
絵の具の着彩も済んで、乾いたろうと思った時。
まるでぼくの心を読んだみたいに、鳥達が開け放した窓からぼくの絵を奪い取ってどこかへと飛んでいく。ぼくは急いで後を追った。
「返してってば! ちょっと止まってよ!」
貴重な絵の具とキャンバス、そして何よりぼくが描いたという大事な絵なのだ。放っておくなんて出来る訳がない。先を飛ぶ彼らを追いかけて、ぼくは森へと入っていく。
暫くは難なく走れていたのに、鳥達は傍へ逸れて、低めの木が重なりトンネルのようになった狭い場所へと入っていく。
「あーもう!」
ぼくは少しだけ姿勢を低くして追いかける。彼らはぼくがぎりぎり追いつけるくらいの速度で飛び続けていて、まるで弄ばれているみたいだ。
全く止まらず飛び続ける彼らを追いかけて息が切れてきた頃、やっと開けた場所へ出た。そこにはピンクや白の混じった屋根に、クリーム色の壁というメルヘンチックな小屋がぽつんと一つ見える。ぼくの家よりほんの少しだけ大きそうなその小屋に、鳥達は窓から中へと入ってしまった。仕方ないから、ぼくもその小屋に近付く。それにしても、おとぎ話っていうのはこの家から始まってるんじゃないかな。
「……あのー、誰かいる? 鳥が持ってきた絵、返してほしいんだけど……」
赤茶のチョコレートのような木製のドアを軽くノックすると、暫くしてから同い年くらいの少女が出てきた。
「これ、あなたのだったのね。素敵な絵」
小屋と同化しそうな、ピンクのワンピースに白のリボンをふりふりさせた赤毛の少女は、にこりと微笑む。
「えっと、どうも。それで絵は……返してくれる?」
「いいけど、少しお話してからね」
そう言うと少女は中へ入ってしまったので、ぼくも続く。
中は外装から予想がつくようなメルヘンさだった。まるでお菓子の家だ。ぼくの家とは違って、家具も沢山ある。角の丸いダイニングテーブル、背もたれ付きの丸っこい椅子、タンスにソファ、小鳥達の為か止まり木もあちこちにある。キッチンにはドールハウスのような可愛らしい見た目と色のティーポットや鍋……。気付くと、そこらにぼくの家に来ていたリスや鳥が走り歌っていた。
「お前達……」
「叱らないであげて。わたしがお友達がほしいって呟いてたからきっと誰か探しに行ってくれたの」
彼女は言う。まるで彼らと友達みたいだ。彼らは彼女の家で暮らしているのだろうか。
少女はにこにことしている。けれど……絵を盗むのはやめてほしかったな。ぼくが、じっと小鳥を見つめていると、小鳥は「チュン」と言い飛び去ってしまった。
「逃げた……」
「ちょっと悪かったって思ったのね」




