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旅を経て
絵描きになりたかった。それは物心ついた頃からの夢だった。
別に天才だった訳じゃない。全く才能がなかった訳でもない。多分ごく普通の人間だった。それでも『僕』は夢を見ていた。いつか自分の絵が沢山の人の目に触れて、それで生きていくんだって。信じてた。強く。
今日は個展だ。夢にまで見た僕の個展なんだ。隣には愛しい家族がいて、僕は夢を叶えている。
『あの時』出来たら良かったけど、それは過ぎた話。記憶はあるけど、生きているのは今。
目を閉じると、あの日々が浮かぶ。『ぼく』はぼろっちい机で絵を描いていた。
ねえ、信じられる? こんなことがあるなんてさ。
ぼくが見たらきっと飛び跳ねて喜んだかな。いや、泣いてしまっただろうか。
ねえ、今度絵を描くよ。きみの絵を。きみの命や思いを、筆に乗せて空の向こうへ。だから――




