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寄り添う親友の怒り顔

「で、今回は一体どうしたのさ。キス寸前みたいなこと言ってたけど」

「麻那からの電話がなかったら、あのまま大和とキス出来たのに……」

「それはゴメンて……」


 私が寮に戻り、部屋に入るや否や葬式ムード。

 大和とのキスが目前でお預け食らった私はもちろんの事、最悪のタイミングで電話をかけてしまった事に麻那自身気にしているようだった。


 しかし、麻那は伊達に長い事ソフトボール部で司令塔(キャッチャー)を任されているわけじゃなく、頭の切り替えがとても早い。


「てか、結局レモン味のキスはどうしたのよ。結構こだわってたじゃない。それは諦めたの?」

 さっきまで自分のベッドで体育座りをして反省気味だった麻那だったが、私に疑問を投げかけると共にその姿勢を解き、私のベッドまでやってくる彼女。


 真剣な表情で私に寄り添う麻那の眼差しに、私も自ずと重苦しい気持ちを切り替えようとなる。

 そんな麻那の凄さを実感しながら、私は彼女の質問に答えた。

「諦めたわけじゃないけど……大和がしたいなら、いつまでもこだわってても仕方ないかなーって」

 と。


「ふぅーん? まぁ、アンタがそれでいいなら別にいいんじゃない? 私の恋愛じゃないし」

「そんなに怒んないでよー!プリン食べちゃったのは謝るから! 今度一緒に並ぶから!!」

「別に怒ってるわけじゃ───」

 一瞬、麻那は固まる。ほんの一瞬だけ。

 そしてほんの少し、笑みを浮かべた後に再び言葉を発する。

「いや、怒ってる。とても怒ってる!! これはプリンだけじゃ到底許せないなぁ!!!」

 あからさまに作っているような、わざとらしく強い口調で。


 当然、そんな事をされて分からないほど、私の目は節穴ではない。

「今、怒ってるわけじゃないっていいかけてなかった?」

 そう麻那に言うと、彼女はただひたすらに笑っていた。


 笑っていたと言っても、それは表面だけであり目は笑っていない。


 そしてそのまま私は

「気のせいよ」

「気のせいなわけ」

「気の、せい、よ」

「……はい」

 彼女に押し切られてしまった。


 しかし、やはり麻那は切り替えがうまく───

「と、まぁ……プリンの話はここまでにしておいて」

 ぱんっ!と手のひらを鳴らして話を変える合図をして、表情も真面目になっていく。


 そして、そのまま私と麻那は本題に取り掛かる事にした。


「一体、今日はどんなイチャイチャをしてきたのさ。昨日は手を繋いで、ハグして、最後に城廻にキスされかけてって感じだったけど」

「えっと、今日は後ろから抱きついたよ」

「おー、ベタだけどキュンとくるやつ。城廻のクセになかなかやるね〜」

「えっと、その……私が、後ろから抱きついたの……」

「だよねー、城廻ごときが梨花を後ろから抱きしめるなんてことできるはずないよね〜」

「……あの、麻那は大和に何か恨みでも?」

「いや? 全く」

「あ、そう……」


 今日の出来事を昨日を振り返りながら、私は麻那に報告した。

 私が照れながら報告しているというのに、麻那は基本真顔で、それでいて時々大和に対して何かしらの感情を表に出す。それがどんなものかは私には分からなかったが、麻那にも何かあるのだろう。


 それに、麻那と大和がどんな関係でも、気にする必要はないと私は信じている。

 麻那はなんでも相談できる仲で、大和はずっとずーっと大好きな彼氏。

 二人とも私にとって大事な人に変わりはないのだから。


 そんな事を考えながら、話題は次へと移る。

「で、それから梨花が城廻に抱きついた後、どうしたのさ。最後まで教えてよね」


 次なる話題は私が抱きついた後、つまりはキスされかける直前の事。


「あ、うん、そうだね。えーっとね、次は───」

 私はより一層照れながら、大和へ行った仕草を麻那に伝え始める。


 油断していた大和の首筋に指を這わせて、私に勉強させたお返しをした事。

 耳に息を吹きかけて、少し揶揄からかってみた事。

 そして、そのまま怒った大和にキスされそうになった事。


 それらを顔を赤らめ、時々大和のかっこよさを教えながら麻那に伝えた。


 すると、その直後のことだった。

「───あいたぁっっ!!!」

「つくづくアンタは手間かけさせてくれる……!」

「うぅ……どうして今、私チョップされたのぉ……?」

 体を真っ二つに割られてしまうのではというくらいの衝撃。

 思わず涙が出てしまった。


 しかし、麻那は意味も無く私に手を出す人ではないと知っている。


 だからこそ───

「アンタのおバカな頭に私の言葉を響かせる為よ」

「……へ?」

「全面的にアンタが悪い。煽りすぎ、男心を学べ! いつか、城廻に犯されても文句言えないことしてるよ!?」

 だからこそ、麻那の怒った表情は私の頭にはあまりにも鮮烈なものだった。



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