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魔闘隊

 翌日、私はいつも通りに便利屋さんに出勤し、シャーリーさんの机の上に温かいお茶を入れ、向かいのソファーに座り一休み。

 シャーリーさんは昨夜からずっと悩んでいたのか、寝不足気味に欠伸をかましている。それを見たホッシーが彼女に駆け寄り子守唄を歌うのだが、音痴なので効果無しだ。


 というか、ねんねんころりやわっしょいわっしょいって、寝かせるきゼロでしょう。


「悪意があるのは理解したよホッシー。どんな罪に着せられたいのかな?」


「違うんだよシャーリー、あれは昨夜エーフィーが私に指示したのさ。とんでもない子だよねあいたたたーーー痛いよ離して許してええええええ」


 嘘を吐く星の口を黙らせたいが、どこが口なのか未だによく分からないのでとりあえず全身を布で覆う。そのまま紐で縛って海底に置き去りにし、今度こそヒトデとして生きる道を提示してやろうか。


「全く、乱暴な女の子だぜ! それはそうとエーフィー、昨日の似顔絵をシャーリーさんに早く見せなよ」


「わーかってるってば。ったく、今それをしようとしていた所なのー!」


 そう言いながら、バッグの中の紙切れをシャーリーさんの机の上に置く。

 シャーリーさんは何事かという顔でその紙を見続けている。


「えっとですね、先日、マナーカ王国の人と話す機会がありまして」


「え……? それは本当なの?」


「はい、破壊神についても知ってるみたいですので、似顔絵を描いてもらったんですよ! それがこれです。なんて悪そうな顔なのでしょうね。だから髪の毛が一本も生えないのですよ!」


 シャーリーさんが何かを唸りながら考え事をした後、横に置いてあった煙草に火を付けた。

 珍しい、今日は葉巻じゃないんだね。


「うーんっと……えっとねエーフィー。基本的にね、マナーカ国の人は大陸を離れる事が出来ないの。出来ないと言うよりは、よっぽどの事が無い限りしないって言った方が正しいかな」


 へ? でもテシンさんはマナーカ出身だって言ってたし、シーカイで育ったとも言っていた。


「エーレってね、あまり外国と関係を持たない国なのよ。理由は貴女みたいな魔術師が漏れるのを防ぐ為でもあるの。外からすれば私達は世界の異端児」


「へ〜、そうなのですね。でも魔法使いって結構外の国に行ってますけど」


「魔法使いと呼ばれる人はね、自分で自分の身を守れるから許可が出ているのよ。これって案外エーレ生まれは気づいてないけど、魔力を持つ人間は普通の人よりも遥かに高い美貌を持ち合わせているの。で、その宝石が欲しいって言ってる輩も居る訳」


「ふーん、それはあまり考えた事無かったですね。リンドでは何もありませんでしたけど、そう言う物なのですか」


「そうなの。で、エーレは旅行は別として、移住は許可していないわ。だからそのテシンさんってのは、違法移民という事になるわね。それがよりによってマナーカ王国。あの保守中の保守的な国が、移住の許可を出すわけでもなさそうだし」


 そう言うと、シャーリーさんは引き出しから一冊のノートを取り出し、指で何かをなぞりながらぶつぶつ言葉を吐く。


「うーん、でもさエーフィー、あのテシンさんからは仄かに魔力を感じたよね? 決して強くはなさそうだけどさ」


「うん? そう? 私は何も感じなかったけど」


 ホッシーは感知が敏感だから、過剰になってるだけかもしれない。


 シャーリーさんはノートを机の上に広げると、別の紙に内容を写す。

 そこには緊急機動部隊「魔闘隊」と書かれた文字があった。初めて見る単語だ。


「ふー……エーフィー、今から一緒にそこの施設に行くわよ。そしてコリーとエラッソ嬢も呼んで作戦を立てなきゃね」


 いきなりなんのこっちゃ。

 皆を呼んで? 


「噂に聞いた事があるの。ある大陸に化け物じみた強さの騎士がいるって。私は冒険者だったから世界を周る事が多くてね、当然マナーカ周辺の国々にも仕事をしに行った事があるわ。で、2年前久しぶりに「アツーイ国」でバカンス目的で旅行に行った訳」


 当時にマナーカにも行こうとしていたのだが、戦争の影響で入国が出来なかったらしい。

 とある夜、ふらりと夜の街に飲みに出かけ色々な飲み屋を梯子していると、そこらかしこで同じ噂がずっと流れていたらしく、興味を抱いた覚えがあるとのことであった。

 終戦直後だったからか、勇ましい戦士の話で盛り上がるのは庶民の娯楽の一つである。

 が、その人物の話題が出る度、明らかに店主はおっかないという表情になり、周りの客や話をしている本人でさえ冷え切った声で語りを続けるのだ。


 破壊神。


 まるで、名前を呼んでしまったらその場に現れて殺されてしまうような異質さ。

 彼らは誰1人としてその破壊神の名前を口に出さず、淡々と言葉を出し続けているだけなのである。

 

 奴の髪の毛は返り血で赤く変色しており、生き血を啜り続けた唇は必要以上に真っ赤に染まっている。

 天使の様に頭上から舞い降りたかと思えば、下にいる人間を踏み潰し、歓声の産声をあげるのだ。


「国中にそいつの噂は広がっていたわ。ま、酒のせいで記憶の彼方に消えてたんだけど、先日のコリーの話しを聞いた感じ、かなりやばそうな奴みたいね。だって5千人よ? 異次元よ」


 シャーリーさんは上着を羽織り、外に行く準備を始める。


「エーフィーも準備なさい。魔法瓶も持って行こうね、いつ戦闘になるか分からないから」


来年もよろしくお願いします。

もっとモーっと面白い話にしますので、是非温かい目で見守ってくださいね。

良いお年を!

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